成果を生み出すテクニカルライティング

セイカ オ ウミダス テクニカル ライティング

トップエンジニア・研究者が実践する思考整理法

成果を生み出すテクニカルライティングの表紙
エンジニアのキャリア / 思考
著者:
藤田肇(フジタ, ハジメ)
出版社:
技術評論社
出版日:
2019年03月
ISBN:
9784297104061
在庫:
在庫あり
4.6(5 件 / 楽天ブックス)

なぜ注目されているか

総合372位 ↑ 5 ランクアップ 言及 8 件・うち記事 6 件を掲載
言及数
428位
02320222023202420252026

技書の森解説

研究や開発の成果が評価されない原因を、技術力ではなく文書の側に探す本です。『成果を生み出すテクニカルライティング』 (藤田 肇 著、技術評論社) は、副題に「トップエンジニア・研究者が実践する思考整理法」と掲げ、日々の進捗報告からプレゼンテーション、研究企画書、論文までを一つの枠組みで書き分ける方法論を解説します。刊行は NDL の書誌で 2019 年 3 月、版元のページでは紙の書籍の発売日が 2019 年 2 月 19 日と案内されています。版元が挙げる対象読者は、理系の大学生 / 大学院生 / 若手研究者と、企業で R&D などを行うエンジニアです。

黄金フォーマットを軸に進む全 6 章の構成

本文は「はじめに」と第 1 章から第 6 章、「おわりに」で構成されています。第 1 章は、成果創出の基盤がコミュニケーション能力にあるという前提を、課題を発見する能力と解決策を考える能力からなる実務能力と、相対化する能力と言語化する能力からなるコミュニケーション能力の関係として整理します。中心は第 2 章「テクニカルライティングの黄金フォーマット」で、背景、課題、手段、効果の 4 つの要素で文章を組み立てる枠組みを、関係性を満たさないダメな例と改善した例を並べて示し、ストーリー重視の「報告・相談型」と結論重視の「提案型」という 2 種類の構成パターン、チェックポイントへと進みます。

第 3 章以降は、この枠組みを文書の種類ごとに当てはめる実践編と読めます。第 3 章の進捗報告書、第 4 章の技術プレゼン、第 5 章の研究企画書には、いずれも自然言語処理の研究やプロジェクトを題材にした Before/After の節があり、ダメな例のどこが問題で、直した例と何が違うのかを対比で説明します。第 4 章では非技術者向けのプレゼンを例に、誰に、何のために、なぜ話すのかを資料作成の前に決める手順を扱い、第 5 章には「2 つ上の上司に提案するつもりで書く」という節が置かれています。第 6 章は論文 / 技術報告で、論文の各項目が黄金フォーマットの各ボックスに対応することを示したうえで、結果が出るまでに論文を書き上げるという進め方を説きます。

書く前に考えを組み立てるという技術文書の要点

テクニカルライティング の難しさは、文の巧拙よりも、何が既知で何が新しいのかの切り分けが書き手の頭の中で済んでいない点にあることが少なくありません。背景で前提をそろえ、課題で従来の手段では越えられない点を言い切り、手段で差分だけを示し、効果を課題の裏返しとして書くという流れは、読み手が判断に必要な情報を順に受け取れる形です。日本の特許明細書も背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、発明の効果という項目立てで書かれており、技術の新しさを他人に評価してもらう文書が似た骨格に行き着くことが分かります。版元のプロフィールによると、著者は弁理士で、大手特許事務所でテクニカルライティングを習得した経歴を持ちます。本書が第 2 章の手段の項で、差分「のみ」をオリジナリティとして抽出することや、英文を想像して言語化の精度をチェックすることを節として立てているのも、こうした文書の書き方と通じるものと読めます。

研究開発の報告と提案に悩む人に向く理由

目次に挙がっている文書の種類は、進捗報告書、技術プレゼン、研究企画書、論文 / 技術報告です。製品マニュアルや API リファレンスのような利用者向けのドキュメントは章として立っていないため、その書き方を直接学びたい人は別の本を選ぶほうが目的に近づきます。反対に、報告をしても上司に意図が伝わらない、企画書の予算が通らない、論文の筋が自分でも説明しきれないといった悩みには、本書の枠組みがそのまま当てはまります。技術の判断を相手に合わせて伝える練習の方向性は 非エンジニアの上司に技術を伝えるための読書 でも整理しています。

研究室やチームで後輩の文書を直す立場の人にも役立ちます。はじめにには「部下・学生の指導にも役立つ文書作成の方法論」という項目があり、第 3 章には報告書教育が組織を強くするという節が置かれています。直す側と直される側が同じ 4 つの枠で話せるようになれば、指摘が「分かりにくい」の一言で終わらなくなります。考えを 言語化する力 を仕事の成果につなげたい若手の研究者や R&D のエンジニアにとって、毎週の報告書から試せる本書は、読んだその週から元を取りやすい一冊です。

言及した記事 (6 件)

関連記事

関連用語

共有: