デジタルアーカイブの新展開
デジタルアーカイブノシンテンカイ
なぜ注目されているか
書籍紹介
デジタルアーカイブを取り巻く環境や技術は日進月歩で変化・進化を遂げている。
本書は文化財のデジタル化や、映画・新聞・テレビ・ウェブなどメディアのデジタルアーカイブ、3D や AI を始めとする革新的技術の動向など、具体的な事例を豊富な図とともに紹介することで、デジタルアーカイブの最新の現状をわかりやすく解説した入門的な一冊!
はじめに
第 1 章 災害とデジタルアーカイブ
1-1 新型コロナウィルス感染症をアーカイブする
1-2 東日本大震災を記録する
1-3 阪神淡路大震災を記録する
第 2 章 文化を保存するデジタルアーカイブ
2-1 文化財
2-2 デジタルアーカイブ・ポータル
2-3 書籍
2-4 写真・動画
第 3 章 メディアを保存するデジタルアーカイブ
3-1 新聞
3-2 テレビ
3-3 映画
3-4 コロナと演劇アーカイブ
3-5 マンガとゲーム
3-6 ウェブアーカイブ
第 4 章 3D と AI が記録する世界
4-1 戦争・災害と 3D
4-2 ドローンの活躍
4-3 VR / AR を活用する博物館・美術館
4-4 画像を自由にあやつる IIIF
4-5 OCR の進歩
4-6 カラー化でよみがえる白黒写真
4-7 みんなで翻刻
第 5 章 デジタルアーカイブは生きている
5-1 デジタルアーカイブの学術・教育での活用
5-2 ウィキペディアと市民アーカイブ
5-3 デジタル人文学
5-4 企業の知的資産をデジタルアーカイブに
5-5 学術論文のアーカイブ
5-6 公文書
第 6 章 おわりに デジタルアーカイブの周辺
6-1 記録と保存
6-2 オリジナルの保存
6-3 アーカイブとフェイク
6-4 改革される著作権法制
あとがき
技書の森解説
災害の記憶、文化財、新聞やテレビ番組、消えていくウェブページを、どうやってデジタルの形で残し、誰もが使える状態にするのか。『デジタルアーカイブの新展開』 (時実象一 著、勉誠社、2023 年 3 月刊) は、そうした取り組みを分野ごとの具体的な事例と豊富な図で紹介する、デジタルアーカイブの入門書です。版元は本書を「デジタルアーカイブの世界の鳥瞰図を示す」一冊と案内しており、重要な Web サイトには QR コードも添えられています。著者はデジタルアーカイブ学会の理事で、専門はデジタルアーカイブ、学術情報、ウェブ検索、ウィキペディアと紹介されています (刊行時点のプロフィール)。
全 6 章の構成、災害の記録から著作権法制まで
本文は、はじめにと全 6 章、あとがきで構成されます。第 1 章「災害とデジタルアーカイブ」は新型コロナウィルス感染症、東日本大震災、阪神淡路大震災の記録を取り上げ、第 2 章は文化財、デジタルアーカイブ・ポータル、書籍、写真と動画という文化資源の保存を扱います。第 3 章はメディアの側に移り、新聞、テレビ、映画、演劇、マンガとゲーム、ウェブアーカイブまでを一つの章で見渡します。第 5 章「デジタルアーカイブは生きている」では、学術と教育での活用、ウィキペディアと市民アーカイブ、デジタル人文学、企業の知的資産、学術論文、公文書と、作ったアーカイブがどう使われるかに視点が移ります。終章にあたる第 6 章は、記録と保存、オリジナルの保存、アーカイブとフェイク、改革される著作権法制を、デジタルアーカイブの周辺の話題としてまとめています。
3D、IIIF、OCR が変えた記録と公開の技術
技術の話題がまとまっているのは第 4 章「3D と AI が記録する世界」です。戦争や災害の現場の 3D 記録、ドローンによる撮影、VR や AR を使う博物館と美術館、IIIF、OCR の進歩、白黒写真のカラー化、市民参加の翻刻が節として並びます。背景を補うと、IIIF (International Image Interoperability Framework) は、所蔵機関ごとにばらばらだった高精細画像の配信方法を共通の API の仕様にそろえる国際的な枠組みで、別々の館が持つ資料を同じビューアーで並べて拡大し、比べられるようにします。OCR は活字の文字起こしでは古くから使われてきましたが、くずし字や古い活字、傷んだ紙面は誤認識が多く、ディープラーニング による手法が入ってから精度が大きく伸びた分野です。白黒写真のカラー化も同じ系統の技術に支えられています。一方で、自動処理の結果には誤りが残るため、多くの人の目で読み直す市民参加の翻刻が並行して営まれています。本書はこうした技術を実装の手順としてではなく、記録と公開の現場で何を可能にしたかという事例の側から紹介しています。
実装書ではなく、分野の地図として読む一冊
本書は、メタデータの設計方法やシステムの構築手順を順を追って学ぶ実装書ではありません。目次を見るかぎり、扱いの中心は事例の紹介であり、保存形式の選び方や権利処理の実務を手順として求める人には別の専門書が必要です。また、取り上げられている事例と技術は 2023 年 3 月の刊行時点のものです。その範囲を理解したうえで読むなら、図書館や博物館、自治体、報道機関、企業の資料部門などで、これからアーカイブ事業に関わる人が分野の全体像と用語を短い時間で押さえる用途によく合います。
情報系のエンジニアにとっても、自分の技術がどの現場でどう使われているかを知る入口になります。画像配信、文字認識、ウェブの収集保存といった技術が、災害の記録や公文書の公開という社会的な目的とどう結び付くのかを事例で確かめたい人、アーカイブ事業の企画や提案に先立って分野ごとの取り組みを一通り見ておきたい人にとって、本書は見取り図として手元に置く価値のある一冊です。
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