社会関係資本主義
シャカイカンケイシホンシュギ
これからの経営のかたち
なぜ注目されているか
書籍紹介
「教える」も「働く」もなめらかに
コンテンツより人、成果より関係性を大事にしたら、
フルリモートで外国人とともに働く上場企業になりました。
EdTech ベンチャー、株式会社 POPER の理念と実践
最初の起業に失敗した著者が、失意の中で勤めた学習塾で感じた課題を解決すべく設立した EdTech 企業・株式会社 POPER。
メンバーの 44%が外国籍で、新卒一括採用は NG。フルリモート勤務で働きやすさを確保しつつ、社内ラジオで人間関係を育むーー IT 企業らしからぬ試みを実践しながら、設立 7 年で上場を果たした POPER が提示するのは、サービスの提供はもちろん組織体の健全化を通しても社会に貢献する「社会関係資本主義」という新たな発想です。
「三国志」が大好きで涙もろい著者と、青木真兵、勅使川原真衣、平川克美、坂本祐介らとの対話からは、「経営」のあるべき姿が浮かび上がります。
アメリカ式の経済至上主義に行き詰まりを感じているすべての人に贈りたい、「つながり」と「場」の再生物語です。
[本文より]
POPER には、そこにいる人が健全に働き、健全なコミュニティが生まれていけば、自ずとコンテンツも場もよくなっていくはずだ、という理念があるよね。--青木真兵 (思想家、人文系私設図書館ルチャ・リブロ)
インビジブルなものに価値を置くというのは、商品経済に対するアンチテーゼなんだ。--平川克美 (作家、元起業家)
居場所を作ることのほうが本当の意味での社会貢献なのかもしれない。(…) 慎吾さんはそこをちゃんとやられているのだと思います。--勅使川原真衣 (組織開発コンサルタント)
1 IT 企業を対話でつくる
「経営者になりたい!」--親への反抗心からの起業 青木真兵×栗原慎吾
関係性を豊かにするためのデジタル化
不適切ゼミという居場所 寺畑正英×栗原慎吾
POPER 式 M&A--本質を受け継ぐ
2 場、コミュニティ、人
場の回復とコンテンツから人へ 青木真兵×栗原慎吾
フルリモートでもみんな仲良し 女性社員座談会 力丸玲嘉×畑山円×湯田幸子×槻山美沙子
社会貢献を軸にーー POPER 式組織論 青木真兵×栗原慎吾
「能力」と「評価」に代わることばを探す 勅使川原真衣×青木真兵×栗原慎吾
大人の青春企業 取締役座談会 繆仁軍×林圭介×姚志鵬
3 株式資本主義を越えるには
起業は自己実現、でも経営は修行 平川克美×青木真兵×栗原慎吾
仕事と暮らしの共通点ーー地方移住で見えたもの
僕たちやっぱりアジア人 坂本大祐×青木真兵×栗原慎吾
技書の森解説
『社会関係資本主義』は、EdTech 企業の株式会社 POPER を率いる栗原慎吾が、自社の経営の考え方と実践を、思想家や組織開発コンサルタント、社員や取締役との対話を通じて示す経営の本です。副題は「これからの経営のかたち」で、夕書房から 2026 年 2 月に刊行されました。版元の紹介文は本書を「EdTech ベンチャー、株式会社 POPER の理念と実践」と紹介し、サービスの提供に加えて組織体の健全化を通しても社会に貢献するという考え方を、題名の「社会関係資本主義」という新たな発想として説明しています。刊行時の著者プロフィールによれば、栗原慎吾は学習塾の共同経営者を経て、学習塾時代に感じた課題の解決を目指して 2015 年に POPER を設立しました。
3 つのまとまりで読む、対話でつくる IT 企業の組織論
目次は「IT 企業を対話でつくる」「場、コミュニティ、人」「株式資本主義を越えるには」の 3 つのまとまりに分かれ、対談や座談会と、対談者の名前が添えられていない項目が混ざって並びます。最初のまとまりは、親への反抗心からの起業を青木真兵と語る対談に始まり、関係性を豊かにするためのデジタル化、不適切ゼミという居場所をめぐる寺畑正英との対談を経て、本質を受け継ぐという同社の M&A の考え方へ進みます。次のまとまりには、場の回復とコンテンツから人への転換を語る対談、フルリモートで働く女性社員の座談会、社会貢献を軸にした組織論、能力と評価に代わることばを勅使川原真衣と探す鼎談、取締役の座談会が入ります。最後のまとまりは、平川克美を交えた「起業は自己実現、でも経営は修行」、地方移住で見えた仕事と暮らしの共通点、坂本大祐を交えた「僕たちやっぱりアジア人」で締めくくられます。
社会関係資本という考え方と、経営の言葉への置き換え
社会関係資本 (ソーシャルキャピタル) は社会学や政治学で使われてきた概念で、人と人のつながり、信頼、互いに助け合う規範といった関係の蓄積を、個人や集団が活用できる資源とみなす考え方です。金銭や設備のように帳簿に載る資本と違って測りにくく、短期の成果指標からは抜け落ちやすいところに特徴があります。本書の目次は最後のまとまりを「株式資本主義を越えるには」と題し、版元の紹介文が引く平川克美の言葉は「インビジブルなものに価値を置くというのは、商品経済に対するアンチテーゼなんだ」です。とはいえ目次に並ぶのは対談と座談会、自社の取り組みの項目で、NDL の件名は経営組織、版元の分類も一般向けの経営書です。概念の学説史や実証研究を知るための本ではなく、ある会社がこの考え方をどう経営の言葉に置き換えたかを読む本として手に取るのが合っています。
IT 企業の読者にとって具体的な接点になるのは、フルリモートの組織で関係をどう育てるかという論点です。オフィスがあれば自然に生まれていた雑談や偶然の出会いは、全員が離れて働くと意図して場を設けない限り生まれず、チャットやビデオ会議を入れるだけでは補えません。版元の紹介文は、同社がフルリモート勤務で働きやすさを確保しつつ社内ラジオで人間関係を育んでいると説明し、メンバーの 44% が外国籍で新卒一括採用を行わないとも述べています。目次にも「関係性を豊かにするためのデジタル化」と「フルリモートでもみんな仲良し」の項目があり、道具の導入を目的にせず、関係を育てる手段として位置づける考え方を、当事者の言葉で確かめられます。
組織の在り方を考え直したい IT 企業の経営者とマネージャーへ
版元の紹介文は本書を「アメリカ式の経済至上主義に行き詰まりを感じているすべての人に贈りたい」と結んでいます。成果や数値だけで組織を回すことに違和感を持つ経営者やマネージャー、リモートでの働き方と社員どうしの関係づくりを両立させたいスタートアップの創業メンバーにとって、ひとつの会社の実践と、それを外の視点から問い直す対話を並べて読める点が本書を選ぶ理由になります。反対に、評価制度やチーム運営の手法を体系立てて学びたい場合は、エンジニア組織のマネジメントを扱う技術書 から選ぶほうが目的に近づきます。
関係性を大事にする経営がどんな判断や制度につながるのかを、当事者たちのやりとりから読み取れる本です。自分の組織で何を大事にするかを言葉にし直したい人にとって、考えるための材料を多く持ち帰れる一冊です。
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