R

統計解析とデータ可視化に特化したプログラミング言語。研究 / 分析分野で広く使われる

データ分析統計
R」の技術書を見る →

R とは

R は、統計解析とデータの可視化に特化したプログラミング言語だ。ニュージーランドのオークランド大学統計学科にいた Ross Ihaka と Robert Gentleman が 1990 年代に書き始めたもので、設計と実装の経緯は 1996 年の論文「R: A Language for Data Analysis and Graphics」(Journal of Computational and Graphical Statistics 誌) にまとめられている。出発点はベル研究所の John Chambers らが設計した統計計算向けの言語 S で、R はその実装のひとつという位置づけだ。1997 年半ばからは R Core Team が開発を担っており、S を設計した Chambers 自身もこのチームに加わっている。統計学の側から生まれた言語であるため、高度な統計手法を簡潔に実行でき、グラフ作成の機能も豊富に備える。学術研究、医療統計、社会科学、データ分析の現場で長年使われ続けている、データを扱う専門言語の代表格になる。

公式の配布元は R プロジェクト (r-project.org) とパッケージ配布網の CRAN で、2026 年 8 月時点の版は 4.6 系 (4.6.1 が 2026 年 6 月 24 日公開) だ。大きな機能追加を伴う更新は年 1 回程度、その間に修正版が出る周期で開発が続いているため、使う版は公式サイトで確認するのが確実になる。

得意とすること

領域内容
統計解析回帰分析、検定、多変量解析
可視化作図の文法に沿って要素を重ねて記述
データ操作表形式データの加工・集計
再現可能な分析分析手順をコードで残す

特に統計手法の豊富さと、論文に載せられる品質のグラフを作れる点が、研究分野で重宝される理由になる。S 系の言語からの改良点として、関数を入れ子にしたときに変数をその場の定義に従って解決する仕組み (レキシカルスコープ) が採り入れられており、関数を組み立てて分析手順を部品化しやすい。

素の R と tidyverse

R は言語本体よりも、どのパッケージ群の流儀で書くかが読み書きの負荷を左右する。代表的なのが tidyverse で、データ加工の dplyr、整形の tidyr、作図の ggplot2 などを共通の設計方針でそろえたパッケージの集合体だ。CRAN では tidyverse という 1 つのパッケージ (2026 年 8 月時点で 2.0.0) を入れるだけでまとめて導入できる。素の R (base R) は角括弧による添字指定や apply 系の関数で書き、tidyverse は処理をパイプでつないだ動詞の連なりで書く。どちらが正解ということはないが、同じ集計を書いてもコードの見た目がまるで違うため、既存コードやチームがどちらの流儀かを先に確認しておくと学習の遠回りを避けられる。速度と省メモリを重視する data.table 系という第 3 の流儀もあり、扱うデータ量が大きい現場ではこちらが選ばれることもある。

Python との比較

観点RPython
強み統計解析・可視化に特化汎用性、機械学習、システム連携
主な利用者統計家・研究者エンジニア・データサイエンティスト
守備範囲データ分析中心分析からアプリ開発まで幅広い

どちらもデータ分析で広く使われる。統計解析に深く踏み込むなら R、システムへの組み込みや幅広い用途なら Python が選ばれる傾向がある。

採用時の指針

R は統計とデータ分析に最適化されている反面、汎用的なソフトウェア開発やシステムへの組み込みには向かない。ただし Web 画面が一切作れないわけではない。shiny のように R のコードから対話的な Web アプリを組み立てるパッケージがあり、分析結果を関係者に配る手段として実際に使われている。向かないのは、分析から切り離された一般的な業務アプリやスマートフォンアプリを R 単体で作ろうとする使い方だと理解しておくとよい。また、R を使いこなすには統計学の基礎知識が前提になる。手法の意味を理解せずに関数を呼ぶだけでは、誤った分析や解釈に陥りやすい。言語の習得と並行して、統計の素養を養うことが、確かなデータ分析につながる。

最初の一歩としては、手元の表データを 1 つ読み込み、集計と作図までを 1 本のスクリプトに書き切ってみるのがよい。同じスクリプトを再実行すれば同じ結果が出る状態を作れたなら、R でデータ分析を残す作法の要点はつかめている。

この記事は役に立ちましたか?

関連用語

関連する記事