技術書の「わからない」を分解する技術 - 挫折の正体を見極める

3 分で読めます
読書術学習法技術書

この記事は約 5 分で読めます。

「わからない」は 1 種類ではない

技術書を読んでいて手が止まる瞬間。多くの人はそれを「自分には難しすぎる」と一括りにして、本を閉じてしまいます。しかし、手が止まった理由を切り分けてみると、少なくとも 5 つの型に分かれます。型ごとに対処法はまったく違います。

原因を特定せずに「わからない」と感じたまま読み進めても、同じ箇所で何度もつまずきます。逆に、どの型なのかを言えれば、次にやることが 1 つに決まります。解消までにかかる手間は型によってまったく違いますが、少なくとも「自分には難しすぎる」の一言で本を閉じる必要はなくなります。

5 種類の「わからない」と対処法

1. 前提知識が足りない

手が止まったときにまず疑ってよいパターンです。本が想定する前提知識を読者が持っていない場合に起こります。

典型例は、デザインパターンの本を読んでいるのにオブジェクト指向の基礎が曖昧なケース。本の説明自体は正しいのに、土台がないため理解できません。

対処法は、その本を一旦置いて、前提となる知識を先に学ぶことです。遠回りに見えますが、前提を固めてから戻ると、同じページで止まらなくなります。本の「はじめに」や「対象読者」に必要な前提知識が書かれていることが多いので、まずそこを確認してください。

2. 用語がわからない

内容自体は理解できるはずなのに、見慣れない用語が壁になっているケースです。特に翻訳書で頻発します。原著の英語用語と日本語訳が頭の中で結びつかず、文章が頭に入ってきません。

対処法は、わからない用語をその場で調べて、本の余白やノートに書き留めることです。用語集を自作するつもりで読むと、2 周目では用語で立ち止まる回数が減り、内容そのものに集中できます。

3. 抽象度が高すぎる

アーキテクチャや設計原則の本でよく起こります。「疎結合にすべき」「関心の分離を意識する」と書かれていても、具体的にコードのどこをどう変えればよいのかがわからない状態です。

対処法は、自分で具体例を作ることです。本の抽象的な説明を読んだら、自分が過去に書いたコードや、今取り組んでいるプロジェクトに当てはめてみます。「このクラスとあのクラスが密結合だから、ここにインターフェースを挟むのか」と具体化できた瞬間に、抽象的な概念が腹落ちします。

4. 説明の順序が合わない

著者の説明順序と、自分の思考順序が噛み合わないケースです。本は「なぜ → 何を → どうやって」の順で説明しているのに、自分は「どうやって → 何を → なぜ」の順で理解したいタイプだった、という状況です。

対処法は、章の構成を先に把握してから読むことです。見出しだけを先に全部読み、全体像を掴んでから本文に入ります。また、同じテーマの別の本を併読するのも有効です。同じテーマの別の本が、自分に合った説明順序で書かれていることがあります。

5. 実は理解できているのに不安なだけ

意外と多いのがこのパターンです。本の内容は理解できているのに、「本当にこの理解で合っているのか」という不安から「わからない」と感じてしまう状態です。

対処法は、理解した内容を誰かに説明してみることです。同僚に 3 分で説明する、ブログに書く、読書会で話す。説明の途中で詰まった箇所が、理解できていなかった箇所です。最後まで話せたなら、その理解で読み進めて構いません。ただし相手が同じ分野に詳しくない場合、伝わったことは正しさの保証にはなりません。確実に確かめたいなら、本文の該当箇所を見せて、自分の説明と食い違っていないかを一緒に確認してもらいます。

5 種類の切り分け表

手が止まったときに見返せるよう、5 種類を症状と対処法で並べます。

種類こう感じているときよく起こる場面最初にやること
1. 前提知識が足りない本の説明自体は正しそうなのに、土台がなくて理解できないデザインパターンの本を読んでいるが、オブジェクト指向の基礎が曖昧本を一旦置き、前提となる知識を先に学ぶ。必要な前提は「はじめに」「対象読者」に書かれていることが多い
2. 用語がわからない内容自体は理解できるはずなのに、見慣れない用語が壁になって文章が頭に入らない翻訳書。原著の英語用語と日本語訳が頭の中で結びつかないわからない用語をその場で調べ、本の余白やノートに書き留める (用語集を自作するつもりで読む)
3. 抽象度が高すぎる主張は読めるが、具体的にコードのどこをどう変えればよいのかがわからないアーキテクチャや設計原則の本で「疎結合にすべき」「関心の分離を意識する」と書かれている箇所自分で具体例を作る。過去に書いたコードや今のプロジェクトに当てはめて言い直す
4. 説明の順序が合わない説明は理解できるはずなのに、読む流れが噛み合わず頭に残らない本が「なぜ → 何を → どうやって」の順なのに、自分は「どうやって」から理解したいタイプ見出しだけを先に全部読んで全体像を掴む。同じテーマの別の本を併読して自分に合う順序を探す
5. 実は理解できているのに不安なだけ内容は追えているのに「本当にこの理解で合っているのか」が不安読み終えたあと、確認できる相手がいない状態理解した内容を誰かに説明する。同僚に 3 分で話す、ブログに書く、読書会で話す

自分がどの行にいるかを言えた時点で、対処法はもう決まっています。

「わからない」を特定する 3 ステップ

技術書を読んでいて手が止まったら、以下の順序で原因を切り分けます。

まず、わからない箇所の前後 2 ページを読み返します。文脈を見失っているだけなら、これで解消します。

次に、わからない箇所に出てくる用語をすべてリストアップします。意味が曖昧な用語が 1 つでもあれば、まずそれを潰します。用語が原因ではなかったとしても、曖昧なまま先へ進むとこの後の切り分けができません。

最後に、わからない箇所を自分の言葉で言い換えてみます。言い換えられないなら、前提知識か抽象度のどちらかが引っかかっています。言い換えられた場合は、その言い換えを本文と突き合わせて、著者の主張とずれていないかを確かめます。言い換えられること自体は理解の証明にはならず、都合よく単純化しているだけのこともあります。

関連記事

まとめ

技術書の「わからない」は、原因を特定すれば対処できます。前提知識、用語、抽象度、説明順序、理解の不安。この 5 つのどれに該当するかを見極めれば、「自分には難しすぎる」という一括りの判断で本を閉じることはなくなります。「わからない」と感じたら、本を閉じる前に 30 秒だけ立ち止まって、原因を分類してみてください。

共有:Xはてブ

この記事は役に立ちましたか?

関連用語

関連記事

技術書を読む前に知っておきたい前提知識の調べ方

技術書を開いて「何が書いてあるかわからない」と感じたとき、足りない前提知識を効率的に補う方法を解説します。挫折を防ぐ事前準備のコツ。

技術書の挫折ポイント別攻略法 - 数式 / 抽象概念 / 分厚さを乗り越える

技術書で挫折する原因を「数式」「抽象概念」「分量」「前提知識不足」の 4 タイプに分類し、それぞれの具体的な攻略法を解説します。

「技術的負債」という言葉を覚えた日から、本の読み方が変わった

技術用語を 1 つ覚えるだけで、コードの見え方が変わることがあります。「技術的負債」という概念との出会いを起点に、用語が思考を変える仕組みと、語彙を増やす読書法を考えます。

「第 3 章の壁」を越える方法 - 途中で止まる理由と 4 つの対処

技術書が第 3 章あたりで止まったまま本棚に戻る。この「第 3 章の壁」が起きる理由を本の構成の側から整理し、越えるための戦略を 4 つ紹介します。

技術書が進まない人へ - 「全部理解してから次へ」をやめる読書法

1 行ずつ完璧に理解しようとして技術書が進まない。わからないまま先に進む読書法が、結果的に理解を深める理由と実践ステップを解説します。

難しい技術書を途中でやめるのは正しい判断 - 戦略的撤退のすすめ

難しくて読めなかった技術書を「挫折」と呼ぶ必要はない。撤退は自分のレベルを正確に把握した証拠。戦略的な撤退の判断基準と、再挑戦のタイミングの見極め方を解説します。