本を読まないテックリードと、本を読むジュニアの逆転劇
この記事は約 5 分で読めます。
経験 10 年 vs 読書 2 年
テックリードの A さん。経験 10 年。現場で叩き上げたスキルで、どんな問題も力技で解決する。本は読まない。「現場で学ぶのが一番」が口癖。
ジュニアの B さん。経験 2 年。毎月 2 冊の技術書を読み、学んだことをコードに反映している。設計の語彙が豊富で、コードレビューでの指摘が的確。
2 年後、B さんの設計力が A さんを上回る場面が出てきます。これは珍しい話ではありません。
なぜ逆転が起きるのか
経験の限界
A さんの 10 年の経験は、A さんが所属したチーム、A さんが担当したプロジェクトの範囲に限定されています。見たことのないパターンには対応できません。
B さんは本を通じて、数十人の著者の経験を追体験しています。2 年間で 48 冊。各著者が 10〜20 年の経験を凝縮して書いた本を読むことで、B さんは自分の 2 年の経験をはるかに超える知見を持っています。
言語化の差
A さんは「なんとなくこの方がいい」と感じる直感はあるが、それを言葉にできない。B さんは「単一責任の原則に基づいて、この関数を分割すべきです」と原則を引用して説明できる。
設計会議では、言語化できる人の意見が通ります。直感が正しくても、説明できなければチームを動かせません。
設計の本を読むことで得られる最大の武器は、知識そのものではなく「言語化する力」です。
体系的な知識 vs 断片的な経験
A さんの知識は、経験から帰納的に得たものです。「前にこうしたらうまくいった」。しかし、なぜうまくいったのかの原則を知らないため、状況が変わると応用できません。
B さんの知識は、本から演繹的に得たものです。「この原則に基づけば、この状況ではこうすべき」。原則を知っているため、未知の状況にも応用できます。
A さんが巻き返す方法
逆転された A さんに希望がないわけではありません。むしろ、A さんが本を読み始めたら、B さんより速く成長します。
なぜなら、A さんには 10 年分の経験があるからです。本で学んだ原則が、過去の経験と結びつく。「ああ、あのプロジェクトで苦労したのは、この原則に違反していたからか」。経験と原則が接続された瞬間、理解の深さは B さんを超えます。
経験 × 読書。この掛け算が最も強力です。経験だけでも読書だけでも、片方だけでは限界があります。
B さんに足りないもの
一方、B さんにも弱点があります。本で学んだ原則を、実務で適用した経験がまだ少ない。
「教科書どおりの設計」は、現実のプロジェクトでは制約 (納期、チームのスキル、既存コードとの整合性) によって修正が必要です。この修正の勘は、経験からしか得られません。
B さんが次のレベルに進むには、本で学んだ原則を実務で試し、「原則どおりにいかない場面」を経験する必要があります。
教訓: 経験と読書は補完関係
この逆転劇から学べる教訓は明確です。
- 経験だけに頼ると、自分の経験の範囲でしか成長できない
- 読書だけに頼ると、理論と実践のギャップに苦しむ
- 経験と読書を掛け合わせた人が、最も速く、最も深く成長する
テックリードであれジュニアであれ、読書を習慣に加えることで、成長の天井を突破できます。
関連記事
まとめ
経験 10 年のテックリードを、読書習慣のあるジュニアが設計力で追い抜くことがあります。原因は、経験の範囲の限界、言語化の差、体系的知識と断片的経験の差。しかし、経験者が読書を始めれば、経験と原則の掛け算で最も強力な成長が起きます。経験と読書は競合ではなく補完関係。どちらか一方ではなく、両方を持つことが最強の戦略です。
この記事は役に立ちましたか?
関連用語
関連記事
なぜ同じ本を読んだのに、あの人と理解が違うのか
読書会で同じ本を読んだはずなのに、メンバーごとに理解が異なる。この現象は欠陥ではなく、読書の本質的な特性です。理解の差が生まれる仕組みと、その差を学びに変える方法を解説します。
30 代エンジニアが読書で取り戻す「設計の言語化力」
経験年数は十分なのに設計意図を言葉にできない。30 代エンジニアが直面する「暗黙知の壁」を、技術書の読書で突破する方法を解説します。
1 万行のコードより 1 冊の設計書が勝つ場面
大量のコードを書く力と、適切な設計を選ぶ力は別物です。コード量では解決できない問題に直面したとき、設計の知識がどう効くのかを具体例で解説します。
読書量ゼロの月があっても、年間計画は崩れない
忙しくて 1 冊も読めない月があると、読書計画が崩壊したように感じます。しかし、年間で見れば 1 ヶ月の空白は誤差です。読書の波を受け入れ、長期的に続けるための考え方を紹介します。
設計・アーキテクチャ本ガイド - 設計力を上げる技術書の選び方
ソフトウェア設計を学べる技術書をコード・モジュール・システムの 3 レイヤーに分類し、レベルに応じた読む順番の指針を紹介します。
読書は才能じゃなくて慣れ
「自分は本を読むのが苦手」と思っている人へ。読書は才能ではなく、慣れで上達するスキルです。苦手意識を克服する具体的な方法を紹介します。