エンジニアの本棚に必ずある本 - 定番技術書が並ぶ理由
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エンジニアの本棚には同じ本が並ぶ
エンジニアの自宅やオフィスの本棚を覗くと、不思議な現象に気づきます。誰の本棚にも同じ本が並んでいるのです。リーダブルコード、Clean Code、デザインパターン。まるで「エンジニアの本棚スターターキット」が存在するかのように、定番の顔ぶれが揃っています。
なぜこの現象が起きるのか。そして、定番技術書が何年も選ばれ続ける理由は何なのか。今回はエンジニアの本棚事情を掘り下げてみます。
定番技術書の顔ぶれ
エンジニアの本棚に高確率で並んでいる本を挙げてみましょう。
リーダブルコード (Dustin Boswell, Trevor Foucher): 「読みやすいコードを書く」というシンプルなテーマを扱った本。新人エンジニアへの推薦図書として圧倒的な支持を集めています。薄くて読みやすいのも人気の理由です。
Clean Code (Robert C. Martin): コードの品質に対する意識を変える 1 冊。リーダブルコードと並んで「まずこれを読め」と言われる定番です。
デザインパターン (Gang of Four): オブジェクト指向設計の古典。23 のパターンを網羅した本書は、出版から 30 年以上経った今でも参照されています。
リファクタリング (Martin Fowler): 既存コードを改善する技法の集大成。第 2 版では JavaScript ベースの例に刷新され、より現代的になりました。
プログラミング作法 (Brian Kernighan, Rob Pike): C 言語の教科書として知られる K&R の著者による、プログラミングの基本を説いた本。
SICP (計算機プログラムの構造と解釈): MIT の教科書として使われた伝説的な本。読破した人は少ないですが、本棚に置いている人は多い。
なぜ同じ本が選ばれるのか
定番技術書が広まるメカニズムには、いくつかのパターンがあります。
先輩の推薦: 新人エンジニアが「何を読めばいいですか」と聞くと、先輩は自分が読んで良かった本を薦めます。その新人が成長して後輩に薦める。こうして世代を超えて同じ本が伝播していきます。
ネットの書評: 技術ブログや SNS で「エンジニアが読むべき本」というリストが定期的に話題になります。そこに並ぶのは毎回ほぼ同じ顔ぶれ。露出が多いほど購入される確率が上がり、さらに書評が増えるという正のフィードバックが働きます。
読書会の課題図書: 社内読書会や勉強会の課題図書として選ばれやすいのも定番本です。参加者全員が購入するため、一度に複数の本棚に並ぶことになります。
「読んでないけど持っている」本の存在
正直に告白すると、本棚に並んでいる本をすべて読破しているエンジニアは少数派です。
SICP は典型的な「読んでないけど持っている」本。購入時は「いつか読もう」と思っていたのに、気づけば数年が経過している。でも本棚から外す気にはならない。いつか読む日が来ると信じているからです。
デザインパターンも同様です。23 パターンすべてを熟読した人は少なく、実務で使う数パターンだけ読んで残りは積読になっていることが多い。それでも「持っている」こと自体に意味があると感じるのがエンジニアの心理です。
この現象は書籍に限りません。技術書は「読む」だけでなく「所有する」ことにも価値がある。本棚に並んでいるだけで、自分がどんな技術に関心を持っているかを示すシンボルになります。
本棚はエンジニアのアイデンティティ
エンジニアの本棚は、その人の技術的なアイデンティティを映し出します。
フロントエンド寄りのエンジニアなら JavaScript 関連の本が多く、インフラエンジニアなら Linux やネットワークの本が並ぶ。機械学習に興味があれば統計学や線形代数の本が加わり、セキュリティに関心があれば暗号理論の本が目立つ。
本棚を見れば、その人がどんなキャリアを歩んできたか、今何に興味を持っているかが一目で分かります。ある意味、本棚はエンジニアの履歴書です。
オンライン会議で背景に本棚が映ると、つい並んでいる本のタイトルを読んでしまう。これはエンジニアあるあるの 1 つでしょう。
世代で変わる定番本
定番技術書は時代とともに入れ替わります。
10 年前の定番だった本が今は読まれなくなり、新しい定番が生まれる。例えば、jQuery の解説書はかつて多くのエンジニアの本棚にありましたが、今では見かけることが少なくなりました。代わりに React や TypeScript の本が並んでいます。
一方で、時代を超えて読まれ続ける本もあります。デザインパターンやリファクタリングは、特定の言語やフレームワークに依存しない普遍的な内容を扱っているため、10 年後も本棚に残っているでしょう。
技術の流行は移り変わりますが、ソフトウェア設計の原則は変わらない。定番本が長く読まれる理由はここにあります。
海外エンジニアの定番本
日本のエンジニアと海外のエンジニアでは、定番本に微妙な違いがあります。
海外では "Pragmatic Programmer" (達人プログラマー) や "Code Complete" が定番として挙がることが多い。日本では翻訳版が出ているものの、リーダブルコードほどの知名度はありません。
逆に、リーダブルコードは日本での人気が突出しています。原著 "The Art of Readable Code" は海外でも評価されていますが、日本ほど「必読書」として扱われてはいません。翻訳の質が高かったことと、日本のエンジニアコミュニティでの口コミが大きかったのでしょう。
定番技術書に興味があるなら、リーダブルコードから始めてみるのがおすすめです。
「あの本持ってる?」という会話
エンジニア同士の会話で「あの本持ってる?」は、単なる所有確認ではありません。
「あの本持ってる?」は「あの本の内容を知っている?」という意味であり、さらに言えば「あの本の内容について議論できる?」という暗黙の問いかけです。共通の本を読んでいることは、共通の語彙を持っていることを意味します。
「デザインパターンの Observer パターンみたいな感じで」と言えば、読んだ人には一発で伝わる。技術書は知識の共有だけでなく、コミュニケーションの共通基盤としても機能しています。
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まとめ
エンジニアの本棚に同じ本が並ぶのは、先輩からの推薦、ネットの書評、読書会の課題図書という 3 つの伝播経路があるからです。定番技術書は特定の言語に依存しない普遍的な内容を扱っているため、世代を超えて読まれ続けます。本棚はエンジニアのアイデンティティを映す鏡であり、「あの本持ってる?」という会話はコミュニケーションの共通基盤を確認する行為です。すべてを読破する必要はありません。まずは気になる 1 冊を手に取って、自分の本棚を育てていきましょう。
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