技術書を人に薦める技術 - 相手のレベルに合った本を選ぶ方法
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良い本を薦めても読まれない理由
「この本すごく良かったから読んでみて」と渡した本が、相手の本棚で積ん読になった経験はないでしょうか。自分にとって良い本が、相手にとっても良い本とは限りません。
技術書の「良さ」は、読者のレベルと目的によって変わります。経験 10 年のエンジニアが感動した設計の本は、入社 1 年目のエンジニアにとっては難解すぎて挫折の原因になります。逆に、入門書を中堅エンジニアに渡せば「知っていることばかりだった」と落胆させます。
本を薦める技術とは、相手のレベルと目的を正確に見極め、その人にとっての「ちょうどよい本」を選ぶ技術です。
相手のレベルを見極める 3 つの質問
本を薦める前に、相手に 3 つの質問をします。
1. 「そのテーマで最後に読んだ本は何ですか」
この質問で、相手の現在地がわかります。何も読んでいなければ入門レベル、入門書を読んでいれば中級レベル、中級書を読んでいれば上級レベルです。相手が最後に読んだ本の「次の 1 冊」を薦めるのが最も効果的です。
2. 「今の仕事で困っていることは何ですか」
技術書を読む動機は「困っていること」から生まれます。テストの書き方がわからない、パフォーマンスが出ない、設計がぐちゃぐちゃになる。具体的な困りごとに直結する本は、読む動機が強いため最後まで読まれる確率が高くなります。
3. 「1 日にどれくらい読書の時間が取れますか」
読書に使える時間によって、薦める本の厚さが変わります。通勤時間に 15 分しか読めない人に 800 ページの本を渡しても、完読までに半年かかります。薄い本や、章ごとに独立して読める本を選ぶ配慮が必要です。
レベル別の薦め方
入門者に薦める場合
入門者には「薄くて、コード例が多くて、1 つのテーマに絞った本」を選びます。網羅的な大著は入門者を圧倒します。まず 1 つのテーマで成功体験を積ませることが重要です。
薦めるときは「最初の 3 章だけ読めば十分」と伝えます。全部読まなくてよいという安心感が、読み始めるハードルを下げます。
中級者に薦める場合
中級者には「なぜそうするのか」を説明している本を選びます。入門者向けの「こうすればよい」ではなく、「なぜこうするのか」「他の方法と比べて何が優れているのか」を論じている本です。
中級者は自分で本を選ぶ力があるため、「この本のここが面白い」と具体的な章やセクションを指定して薦めると効果的です。
上級者に薦める場合
上級者には、自分が読んで「考え方が変わった」本を薦めます。上級者は知識量では困っていません。新しい視点や、既存の知識を再構成するきっかけを求めています。
設計やアーキテクチャの本の中でも、著者の哲学や思想が色濃く出ている本は、上級者の思考を刺激します。
薦めた後のフォロー
本を渡して終わりにしない。1〜2 週間後に「読み始めた?」と聞くだけで、相手の読書確率は大幅に上がります。人は「誰かが気にかけている」と感じると、行動を起こしやすくなります。
相手が「難しくて止まっている」と言ったら、自分がその本をどう読んだかを共有します。「自分も最初は 3 章で詰まったけど、5 章から急に面白くなった」という体験談は、相手の背中を押します。
やってはいけない薦め方
「エンジニアなら絶対読むべき」「読んでないのはまずい」という圧力をかける薦め方は逆効果です。義務感で読む技術書ほどつまらないものはありません。
また、一度に複数冊を薦めるのも避けてください。選択肢が多すぎると人は選べなくなります。1 冊だけ、確信を持って薦める。その 1 冊が相手の血肉になれば、次は相手から「次に何を読めばいい?」と聞いてきます。
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まとめ
技術書を人に薦める技術は、相手のレベルと目的を見極めることに尽きます。3 つの質問で相手の現在地を把握し、その人にとっての「次の 1 冊」を選ぶ。薦めた後も気にかける。この一連の流れが、チーム全体の技術力を底上げします。
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