先輩が「あれ読んだ?」と聞いてくる本には理由がある
この記事は約 4 分で読めます。
繰り返し薦められる本には組織の文脈がある
「あの本、もう読んだ?」。先輩やテックリードから、同じ本を何度も薦められた経験はないでしょうか。最初は「また言ってる」と流してしまいがちですが、繰り返し薦められる本には、個人の好みを超えた理由があります。
その本は、チームの設計判断の共通基盤になっていることが多いのです。
推薦図書が組織で果たす役割
共通言語の形成
チーム全員が同じ本を読んでいると、設計の議論が格段にスムーズになります。「この部分、あの本の第 7 章で言っていたパターンですよね」と言えば、全員が同じ概念を共有できます。
先輩が本を薦めるのは、あなたにこの共通言語を身につけてほしいからです。その本を読んでいないと、チームの設計議論についていけない場面が出てきます。
暗黙の設計基準
多くのチームには、明文化されていない設計基準があります。「なぜうちのチームはこの設計パターンを好むのか」「なぜこのアプローチを避けるのか」。その答えが、先輩が薦める本に書かれています。
コーディング規約やアーキテクチャドキュメントには書かれていない、チームの設計哲学。それを最も効率的に伝える手段が、1 冊の本を共有することなのです。
過去の失敗の教訓
先輩が特定の本を強く薦める場合、その本の内容に関連する失敗をチームが過去に経験している可能性があります。「テストの本を読んでほしい」と言われたら、過去にテスト不足で障害を起こした経験があるのかもしれません。
本を読むことで、チームが過去に学んだ教訓を追体験できます。同じ失敗を繰り返さないための、最も効率的な知識伝達です。
薦められた本の読み方
優先度を上げて読む
先輩が薦める本は、自分で選んだ本より優先度を上げてください。自分で選ぶ本は自分の関心に基づいていますが、先輩が薦める本はチームの文脈に基づいています。チームで成果を出すには、後者の方が即効性があります。
読んだ後に感想を伝える
本を読んだら、薦めてくれた先輩に感想を伝えてください。「第 5 章の依存性逆転の話が、今のプロジェクトのあの部分に当てはまると思いました」のように、具体的な感想を伝えると、そこから設計の議論が始まります。
設計の本を読んだ感想を先輩と共有することで、本の内容がチームの実務に結びつきます。
わからなかった箇所を質問する
本の中でわからなかった箇所を先輩に質問すると、先輩はその箇所をチームの実務に即して説明してくれます。本の抽象的な説明が、チームの具体的なコードベースと結びつく瞬間です。
自分が先輩になったとき
いつか自分が後輩に本を薦める立場になります。そのとき、「とりあえずこれ読んで」ではなく、「この本のこの章が、今のプロジェクトのこの課題に直結するから読んでほしい」と伝えてください。
なぜその本を薦めるのかの文脈を添えることで、後輩の読書の動機と理解の深さが変わります。
関連記事
まとめ
先輩が繰り返し薦める本は、チームの共通言語、暗黙の設計基準、過去の失敗の教訓を凝縮した 1 冊です。薦められたら優先的に読み、感想を伝え、わからない箇所を質問する。この一連の流れが、チームへの最速のオンボーディングになります。
この記事は役に立ちましたか?
関連用語
関連記事
技術書を人に薦める技術 - 相手のレベルに合った本を選ぶ方法
技術書を人に薦めるとき、自分が良いと思った本をそのまま渡していませんか。相手のレベルと目的に合った本を選ぶための具体的な方法を解説します。
「それ、本に書いてあったよ」が最高の褒め言葉になる職場
チーム全員が技術書を読む文化がある職場では、議論の質とコードの質が変わります。読書文化を持つチームの特徴と、その文化を育てるための具体的な方法を紹介します。
あなたが今読んでいる本は、10 年後の誰かの古典になる
今は「最新の技術書」として読んでいる本が、10 年後には「古典」と呼ばれているかもしれません。技術書が古典になる条件と、古典を生み出す読者の役割について考えます。
30 代エンジニアが読書で取り戻す「設計の言語化力」
経験年数は十分なのに設計意図を言葉にできない。30 代エンジニアが直面する「暗黙知の壁」を、技術書の読書で突破する方法を解説します。
エンジニアの本棚に必ずある本 - 定番技術書が並ぶ理由
エンジニアの本棚を覗くと、なぜか同じ本が並んでいます。リーダブルコード、Clean Code、デザインパターンなど、定番技術書が選ばれ続ける理由を探ります。
1 万行のコードより 1 冊の設計書が勝つ場面
大量のコードを書く力と、適切な設計を選ぶ力は別物です。コード量では解決できない問題に直面したとき、設計の知識がどう効くのかを具体例で解説します。