ベクトル検索実践入門

ベクトルケンサクジッセンニュウモン

ベクトル検索実践入門の表紙
AI / 機械学習
著者:
真鍋 知博(マナベ トモヒロ)
出版社:
技術評論社
出版日:
2026年01月07日
ISBN:
9784297153373
在庫:
在庫あり
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579位

書籍紹介

ベクトル検索は従来の重要技術キーワード検索を補完する技術であり、かつ Web 検索など、検索そのもののサービスにはもちろん、E コマースなど各種サービスの検索機能にも採用されつつある注目度の高い技術です。従来のキーワード検索は、ユーザが入力したキーワードを含むドキュメントを抽出し、キーワードの出現頻度にもとづいてドキュメントをソート (ランキング) するというものでした。キーワード検索が表面的な情報を扱っていたのに対して、ベクトル検索はキーワードやドキュメントの「意味」を扱います。ベクトルの類似度によってキーワードとドキュメントそれぞれの意味の類似度を測れるよう、これらのテキストをベクトル化する技術です。
このように、ベクトル検索は抽象的な意味を扱える点で優れた技術ですが、一方でしくみがわかりにくいところがあります。また、新しい技術でもあるため、日本語の専門書や資料が少ない状況です。

本書はベクトル検索による検索エンジンの高速化を解説します。対象読者は検索サービスまたは検索機能を扱うエンジニア、手法の実装と評価が必要な研究者、およびそれらを志望する学生で、実用的なベクトル検索が実装できるようになることを目指します。

前半でデータの準備から検索結果の評価までを一通り解説し、後半では各ステップの高度化・高速化について解説します。また、付録として画像のベクトル化と検索についても解説します。

技書の森解説

『ベクトル検索実践入門』 (真鍋知博 著、技術評論社、2026 年 1 月刊) は、文書や問い合わせの「意味」をベクトルで表して検索するベクトル検索を、データの準備から検索結果の評価、そして高速化まで一続きで解説する実践書です。版元は対象読者を、検索サービスや検索機能を扱うエンジニア、手法の実装と評価が必要な研究者、それらを志望する学生と案内し、実用的なベクトル検索を実装できるようになることを目標に掲げています。前半でデータの準備から評価までを一通りたどり、後半で各ステップの高度化と高速化を扱い、付録で画像のベクトル化と検索も取り上げる構成です。

全 12 章と付録の構成、ランキングから HNSW まで

第 1 章「データの準備」は、ベクトル検索の流れと最重要のステップとしてのランキング、ランキングの機械学習、ランク学習データセットの現状から入り、Shopping Queries Dataset の紹介と前処理のサンプルコードへ進みます。第 2 章「基本的なベクトル化」で Sentence Transformers の MiniLM-L6 を動かし、第 3 章「専用エンジンの紹介」で ANN 検索の基本と、専用エンジンの例としての Faiss、キーワード検索エンジンの例としての OpenSearch を紹介し、第 4 章「検索結果の評価」で nDCG とレイテンシなどの評価尺度を扱います。後半は第 5 章「高度なベクトル化」の BERT とファインチューニング、SimCSE、第 6 章「高速なベクトル化」の GPU での推論と量子化、第 7 章「ベクトルの圧縮と高速な計算」のスカラ量子化と続きます。第 8 章から第 10 章は次元削減やハッシュ、クラスター、グラフによる高速化で、直積量子化や Learning to Hash にも触れつつ、LSH、IVF、HNSW をそれぞれ Faiss と OpenSearch の実装で確かめます。第 11 章は GBDT や RRF を例に既存のモデルへベクトル検索を統合する方法を、第 12 章は既存の特徴量をベクトル検索へ取り込む方法を扱います。付録 A は Fashion-MNIST と CLIP を使った画像のベクトル検索です。

キーワード検索との違いと、近似近傍探索が要る理由

キーワード検索は、入力された語を含む文書を集め、語の出現頻度などで並べ替える仕組みです。表記が一致しない言い換えや、意味は近いが語が違う文書は拾いにくく、ここを補うのがベクトル検索です。文章をモデルで 埋め込みベクトル に変換すると、意味の近さをベクトル同士の距離や類似度として計算できます。ただし、問い合わせのたびに全文書のベクトルと総当たりで距離を計算すると、件数と次元数に比例して計算量が膨らみます。そこで、わずかな取りこぼしを許す代わりに速く近傍を見つける近似近傍探索 (ANN) が使われ、空間をハッシュで分ける LSH、クラスターで候補を絞る IVF、近傍関係のグラフをたどる HNSW、ベクトルを圧縮する量子化といった手法が組み合わされます。本書の後半の章立てはこの手法の系統にほぼ沿っており、Faiss のようなライブラリと OpenSearch のような検索エンジンの両方で実装を比べられる点が、仕組みを理解したうえで ベクトルデータベース や検索基盤を選ぶ判断に効いてきます。

前提知識と、評価を軸に読む人に向く理由

本書の特徴は、高速化の前にランキングと評価を置いている点にあります。第 1 章でランキングを最重要のステップと位置づけ、第 4 章で nDCG の計算やラベルの無い文書を含む場合の扱いまで説明してから高速化へ進むため、速くしたことで検索の質がどれだけ落ちたかを数値で確かめながら読み進められます。サンプルコードは Sentence Transformers や Faiss を使うので、Python でコードを読み書きできることが実質的な前提になると考えられ、第 6 章では BERT を GPU で動かす内容も含まれます。一方、目次には生成 AI と組み合わせた検索拡張の構築手順や、特定のベクトルデータベース製品の運用の項目は無く、そうした手順書を求める人には目的が合いません。版元の著者紹介によると、著者は検索エンジンの高速化と高機能化の研究と開発に従事し、共著に『機械学習による検索ランキング改善ガイド』 (オライリー・ジャパン、2023 年) があります。

EC サイトや社内文書の検索で、キーワード検索の取りこぼしをベクトル検索で補いたいが、どのモデルとどの索引方式を選び、どう評価すればよいかを自分で決められずにいる人には、本書は判断の根拠を一通り手元に揃えられる一冊です。OpenSearch などの既存の検索基盤にベクトル検索を加えたい技術者や、手法を実装して比較する研究者なら、ランキングの評価から高速化までを同じデータで追える構成の効き目は大きいはずです。

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