操られる民主主義
アヤツラレルミンシュシュギ
デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか
- 著者:
- ジェイミー・バートレット / 秋山 勝(ジェイミーバートレット / アキヤマ マサル)
- 注目:
- 総合 1090 位
- 出版社:
- 草思社
- 出版日:
- 2018年09月20日頃
- 一覧:
- 2018 年に出た技術書
- ISBN:
- 9784794223524
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
いつのまにか「私の考え」が誘導されていた?
トランプを大統領にしたのは「データ」の力だった?
民主主義社会の基盤がいま崩れはじめている!
デジタル・テクノロジーが、国境や民族を超えてつながる自由で民主的な世界を産み出しているーー
だがその一方で、誰にも予想できなかった事態が起こりはじめている。
SNS やビッグデータ、AI などの進化は、高速で精緻な情報交換を可能にし、社会システムの基層を大きく変化させている。その変化が「人間」そのものを変えつつあるのだ。
ネットは人びとの抑えられてきた感情を増幅させ、共有される匿名の怒りが世界を「部族社会」に細分化し、
データ分析に頼りすぎる判断は選挙や政策決定にも影響を与えはじめた。
プラットフォームを押さえた一部企業が市場を独占し、AI が生みだす新たな労働環境は所得の格差を拡大して、
社会の分断はいよいよ広がっていくーー。
テクノロジーが拓く新たな社会状況が直面せざるをえない難問の数々を、データ・テクノロジーの専門家が詳細に分析し処方箋を示す。
トランプ大統領選を陰で支えた「ケンブリッジ・アナリティカ」社のスタッフ等、各方面の現場当事者の肉声を収載。
本書内容より
・アンケート回答がビッグデータに吸い込まれていく
・自分が知っている以上に自分のことが知られている
・トランプの大統領選とケンブリッジ・アナリティカ
・イギリスの EU 離脱、プーチンのサイバー戦の正体
・ネットは人びとの抑えられた感情を増幅していく
・怒りの共有が細分化された「部族」を生みだす
・プラットフォームを持つ企業が市場を独占する
・AI は仕事の格差を産み、社会の分断が加速する
・仮想通貨とブロックチェーンが揺るがす社会基盤
◎本書もくじより
イントロダクション テクノロジーが社会を破壊する?
第 1 章 新しき監視社会ーーデータの力は自由意志をどのように操作しているのか
第 2 章 「部族」化する世界ーーつながればつながるほど、分断されていく
第 3 章 ビッグデータと大統領選ーーデジタル分析が政治のありかたを揺るがす
第 4 章 加速する断絶社会ーー AI によって社会はどうなるのか
第 5 章 独占される世界ーーハイテク巨大企業が世界をわがものとする
第 6 章 暗号が自由を守る?--国家を否定する自由主義者たち
結論 ユートピアか、ディストピアか
エピローグ 民主主義を救う 20 のアイデア
技書の森解説
『操られる民主主義』 (ジェイミー・バートレット 著、秋山 勝 訳、草思社、2018 年 9 月刊) は、SNS やビッグデータ、AI の進化が民主主義の基盤をどう揺るがしているのかを、一般の読者に向けて論じた社会書です。原書は The People vs Tech で、副題は「デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか」です。版元の紹介では、テクノロジーが拓く新たな社会状況が直面する難問を、データ・テクノロジーの専門家が分析して処方箋を示す本と説明されています。ケンブリッジ・アナリティカ社のスタッフをはじめ、各方面の現場当事者の肉声を収めていることも案内されています。刊行時の著者紹介によれば、著者はイギリスのシンクタンク、デモス (Demos) のソーシャルメディア分析センターのディレクターを務めるジャーナリストで、専門はオンライン上の社会運動やテクノロジー、ビッグデータの調査手法の研究です。
監視と部族化から暗号まで、6 つの章と 20 のアイデア
版元の紹介に載る目次は、イントロダクション「テクノロジーが社会を破壊する?」から始まります。第 1 章「新しき監視社会」は、データの力が自由意志をどのように操作しているのかを副題に掲げ、第 2 章は世界の「部族」化を題に取り、つながればつながるほど分断されていくという逆説を扱います。第 3 章「ビッグデータと大統領選」はデジタル分析が政治のありかたを揺るがす過程を、第 4 章「加速する断絶社会」は AI によって社会がどうなるのかを、第 5 章「独占される世界」はハイテク巨大企業が世界をわがものとする構図を副題で示します。第 6 章「暗号が自由を守る?」の副題は「国家を否定する自由主義者たち」です。そのあとに結論「ユートピアか、ディストピアか」が置かれ、本書はエピローグ「民主主義を救う 20 のアイデア」で閉じます。版元が本書内容として挙げる項目には、「トランプの大統領選とケンブリッジ・アナリティカ」や「イギリスの EU 離脱、プーチンのサイバー戦の正体」のように、具体的な出来事を名指しするものも並びます。
行動データから一人ひとりを推定するターゲティングの仕組み
版元が挙げる項目には「アンケート回答がビッグデータに吸い込まれていく」「自分が知っている以上に自分のことが知られている」もあります。この背後にある技術の流れは、技術者にとってなじみのあるものです。閲覧の履歴や投稿への反応、診断形式のアンケートの回答といった行動の記録を大量に集め、統計モデルや 機械学習 で年齢や関心、性格の傾向を推定し、推定した集団ごとに文面や画像を変えた広告を配信します。広告が届くのは狙われた人だけなので、同じ選挙について有権者が見ている情報が人によって違い、公開の場で主張を突き合わせて検証する機会が減ります。表示の順を反応の多さで決める仕組みは、怒りや不安のように強い感情を呼ぶ投稿ほど広がりやすいという性質も持っています。版元の紹介は「ネットは人びとの抑えられてきた感情を増幅させ」と述べ、共有される匿名の怒りが世界を「部族社会」に細分化すると書いており、この性質と重なる問題を社会の側から捉えています。
暗号と仮想通貨の章が示すもう一つの緊張
目次は監視と操作の話だけで終わりません。第 6 章は国家を否定する自由主義者たちを取り上げ、版元の項目にも「仮想通貨とブロックチェーンが揺るがす社会基盤」が挙がっています。通信の内容を 暗号化 して第三者に読めなくする技術は、個人を監視から守る道具であると同時に、国家が法の執行のために情報を得ることを難しくします。中央の管理者を置かずに取引の記録を確定させる ブロックチェーン も、銀行や国家が担ってきた信用の仕組みを迂回し得る点で、同じ緊張を抱えています。目次の上では、データによる監視や操作を論じる章と並んで、国家の管理から離れようとする技術と人びとの側も 1 つの章として扱われています。
2018 年刊の見取り図として読む人、合う技術者
本書は 2018 年 9 月の刊行で、題材になっているのはトランプの大統領選やイギリスの EU 離脱といった刊行前の出来事です。個々の事例は 2018 年時点の見取り図として読み、刊行後の展開は別の資料で補う必要があります。また一般向けの社会書であり、推薦や広告配信の仕組みを実装の水準で学ぶための本ではありません。一方で、推薦の仕組みや広告配信、データ分析の製品を作る側にいて、自分の書くコードが選挙や世論のような社会の意思決定にどう効いていくのかを一度まとまった議論で考えたい人にとって、本書は監視、分断、格差、独占、暗号までを 1 冊で見渡せる本です。
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