ゼロトラストネットワーク

ゼロトラストネットワーク

境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計

ゼロトラストネットワークの表紙
ネットワーク
著者:
Evan Gilman / Doug Barth / 鈴木研吾 / 株式会社クイープ(エヴァン ギルマン / ダグ バース / スズキ ケンゴ / クイープ)
出版社:
オライリー・ジャパン
出版日:
2019年10月27日頃
ISBN:
9784873118888
在庫:
在庫あり
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書籍紹介

ゼロトラストネットワークの原則と実装に必要な知識を 1 冊で学ぶ!
ゼロトラストネットワークとは、2010 年に Forester Research が提唱した考え方で、「社内 (ネットワーク内) は安全である」という前提に立って境界を守るやり方では守れなくなった現状を踏まえ、「信頼しないことを前提とし、全てのトラフィックを検査、ログ取得を行う」というアプローチです。本書は、そのゼロトラストネットワークの概念と、それを実装するために必要な知識を 1 冊で学べる解説書です。

技書の森解説

ファイアウォールの内側にいれば安全という前提をやめ、通信のたびに相手と端末を確かめる。この考え方を設計の原則から実装の構成要素まで掘り下げたのが『ゼロトラストネットワーク』 (Evan Gilman、Doug Barth 著、鈴木 研吾 監訳、クイープ 訳、オライリー・ジャパン、2019 年 10 月刊) です。原書は Zero Trust Networks、副題は「境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計」です。版元は、ファイアウォールや VPN に代表される境界防御モデルが通用しなくなった状況を踏まえ、すべてのトラフィックを信頼しないことを前提に検証するアプローチの概念と、実装に必要な知識を学べる解説書と紹介しています。社内ネットワークの設計やクラウドへの移行で、信頼の置き方を根本から見直したい技術者向けの一冊です。

全 10 章の構成、信頼の管理から攻撃者の視点まで

本文は全 10 章です。1 章「ゼロトラストの基礎」で考え方の全体像とコントロールプレーンの位置づけを示し、2 章「信頼と信用の管理」では、ゼロトラストにおける PKI の重要性やプライベート PKI とパブリック PKI の違い、コントロールプレーンとデータプレーンの分離を扱います。3 章「ネットワークエージェント」でエージェントを、4 章「認可の判断」でアクセスの可否を決めるポリシーエンジンの仕組みや、よいポリシーの特徴、ポリシーを誰が定義するのかを論じます。5 章から 8 章は、デバイス、ユーザー、アプリケーション、トラフィックという 4 つの対象ごとに信頼と信用をどう確立するかを章を分けて掘り下げる構成で、デバイスの章には TPM、トラフィックの章には IKE/IPsec や相互認証 TLS の節があります。9 章「ゼロトラストネットワークの実現」はポリシーの定義と導入に加え、Google BeyondCorp と PagerDuty のケーススタディを収め、10 章「攻撃者の視点」で全体を締めくくります。

境界防御が破られた後に何が起きるか

境界防御の弱点は、外周を一度でも突破されると、内側の通信がほとんど検証されないまま信頼されてしまう点にあります。フィッシングで乗っ取られた 1 台の端末や、脆弱性を突かれた公開サーバーを足がかりに、攻撃者は社内のほかのシステムへ横移動できます。加えて、クラウドサービスや社外からの接続が当たり前になると、守るべき境界の線そのものが引けなくなります。ゼロトラストの設計は、この問題をネットワークの位置ではなく、通信ごとの認証と認可で解こうとします。その際に要となるのが、誰がどの端末からどの資源に触れてよいかを判断するポリシーと、それを各所に配るコントロールプレーン、そして端末やサービスの身元を証明書で示すための PKI です。本書が PKI に早い章を割き、デバイスとユーザーを別々の章で扱っているのは、利用者の身元と端末の健全性という 2 つの信頼を組み合わせて判断する構造を、部品から順に理解させるためと読めます。通信の暗号化と 相互認証を行う TLS や、権限を必要な範囲に絞る 最小権限 の考え方も、この構造の中で位置づけが明確になります。

製品の導入手順書ではない点と、2019 年刊の位置づけ

本書は特定の製品やクラウドサービスの設定手順を説明する本ではなく、設計の原則と構成要素を扱う本です。そのため、ネットワークの基礎、TCP/IP の階層、TLS と証明書の仕組み、認証と認可の違いといった知識を前提として読み進めることになり、これらに不安がある場合は先に基礎の本で補うと理解が早まります。また、刊行は 2019 年で、米国の NIST がゼロトラストアーキテクチャの指針 SP 800-207 を公表した 2020 年より前の内容です。後に広まった用語や各社の製品群との対応づけは本書の範囲外なので、導入する製品の比較には別の資料が必要です。セキュリティ分野で目的に合う本を選び直したい場合は、セキュリティ技術書の選び方 が手がかりになります。

ゼロトラストを設計の言葉で説明したい技術者へ

ゼロトラストという言葉を製品の宣伝文句として聞くことが増えたものの、自社の構成に当てはめると何を変えればよいのか分からない。そうした状態のネットワークエンジニア、セキュリティエンジニア、インフラの設計者にとって、本書は判断の軸を与えてくれる一冊です。信頼をどこで確立し、誰がポリシーを決め、どの通信をどう検証するのかを部品ごとに説明できるようになれば、製品の比較や移行計画の議論でも、何を求めるべきかを自分の言葉で示せます。BeyondCorp と PagerDuty の事例で、原則が実際の組織でどう形になったかを確かめられる点も、設計を任される立場の人にとって投資に見合う材料です。

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