技術書の厚さ伝説 - 鈍器本の世界と分厚い本の楽しみ方

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技術書の厚さは正義か

技術書を選ぶとき、厚さは気になるポイントの 1 つです。分厚い本を見ると「これだけの情報量がある」と期待する一方で、「読み切れるだろうか」という不安も湧いてきます。

技術書の世界には 1,000 ページを超える巨大な本が存在し、エンジニアの間では親しみを込めて「鈍器本」と呼ばれています。今回は、そんな分厚い本の世界を覗いてみましょう。

伝説の鈍器本たち

技術書の厚さを語るうえで外せない本がいくつかあります。

Donald Knuth の「The Art of Computer Programming」(TAOCP) は、全巻揃えると合計 3,000 ページを超えます。1 巻だけでも 600 ページ以上。コンピュータサイエンスの古典であり、読破した人は業界でも少数派です。

Bjarne Stroustrup の「プログラミング言語 C++」は約 1,300 ページ。C++ という言語の複雑さがそのままページ数に反映されています。持ち運ぶには覚悟が必要です。

Andrew S. Tanenbaum の「コンピュータネットワーク」は約 900 ページ。大学の教科書として使われることが多く、学生のカバンを重くする元凶として知られています。

Martin Fowler の「リファクタリング」や Gang of Four の「デザインパターン」は 400 ページ前後で、鈍器本とは呼ばれません。しかし内容の密度が高いため、体感的な厚さは物理的な厚さを上回ります。

鈍器本の物理的な存在感

1,000 ページを超える技術書は、重さが 1kg を超えることも珍しくありません。通勤カバンに入れると肩が凝り、机の上に置くと場所を取り、本棚では隣の本を圧迫します。

電車の中で鈍器本を広げている人を見かけると、思わず尊敬の念を抱きます。あの重さを片手で支えながら読むのは、もはや筋トレです。

鈍器本を読み切った人には独特の達成感があります。「あの本を読破した」という事実は、エンジニアとしての自信につながります。読書会で「TAOCP 読みました」と言えば、一目置かれること間違いなしです。

薄い本の魅力

一方で、100 ページ以下の薄い技術書にも大きな魅力があります。

技術書典で頒布される同人技術書は、50 ページから 100 ページ程度のものが多い。特定のテーマに絞って深掘りしているため、短時間で実践的な知識が得られます。

商業出版でも薄い本は存在します。「プログラマの数学」(結城浩) は約 250 ページで、数学が苦手なプログラマにも読みやすい。薄さは「読み切れる」という安心感を与えてくれます。

薄い本の利点は、通読のハードルが低いこと。分厚い本は途中で挫折しがちですが、薄い本なら週末 1 日で読み切れます。「読了」の体験を積み重ねることで、読書の習慣が身につきます。

厚さとページ数の意外な関係

同じページ数でも、本の厚さは紙の種類によって大きく変わります。

上質紙を使った本は厚くなり、薄い紙を使えば同じページ数でもコンパクトになります。オライリーの本が比較的薄く感じるのは、紙が薄いからです。逆に、入門書系の出版社は読みやすさを重視して厚めの紙を使う傾向があります。

フォントサイズや余白の取り方でもページ数は変わります。同じ内容量でも、レイアウト次第で 300 ページにも 500 ページにもなり得ます。ページ数だけで本の情報量を判断するのは危険です。

電子書籍なら厚さゼロ

電子書籍なら物理的な厚さはゼロ。1,000 ページの鈍器本も、50 ページの薄い本も、タブレット 1 台に収まります。

ただし、電子書籍には「あと何ページ」の感覚がつかみにくいという欠点があります。紙の本なら残りのページ数が手の感触で分かりますが、電子書籍ではプログレスバーの数字を見るしかありません。「あと 3 割」と「あと 120 ページ」では、後者のほうが具体的で励みになります。

また、分厚い本を読み切ったときの達成感は、物理的な厚さがあってこそ。電子書籍で TAOCP を読破しても、あの分厚い本を征服した実感は薄いかもしれません。

プログラミングの大著に興味があるなら、プログラミングの名著を手に取ってみてください。

分厚い本の攻略法

鈍器本を前にして尻込みする必要はありません。攻略法はあります。

最も重要なのは「全部読まなくていい」という割り切りです。技術書、特に分厚い本はリファレンスとして使うことを前提に書かれていることが多い。必要な章だけ読めば十分です。

目次と索引を活用しましょう。分厚い本ほど目次と索引が充実しています。まず目次で全体像を把握し、興味のある章から読み始める。辞書のように使えば、1,000 ページの本も怖くありません。

もう 1 つのコツは、期限を決めないこと。「1 ヶ月で読み切る」と決めると、分厚い本はプレッシャーになります。「半年かけてゆっくり読む」くらいの気持ちで取り組むと、挫折しにくくなります。

本棚での存在感

分厚い技術書は、本棚の主役です。背表紙の幅が広いため、遠くからでもタイトルが読めます。来客が本棚を見たとき、最初に目に入るのは分厚い本です。

エンジニアの本棚に鈍器本が並んでいると、それだけで「この人は本格的に勉強している」という印象を与えます。読んでいなくても。

本棚のスペースは有限です。分厚い本を 1 冊置くと、薄い本 3 冊分のスペースを消費します。本棚の容量と相談しながら、どの鈍器本を手元に置くか選ぶのも、エンジニアの楽しみの 1 つです。

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まとめ

技術書の厚さは、その本の情報量と著者の野心を反映しています。1,000 ページ超の鈍器本には独特の存在感と達成感があり、100 ページ以下の薄い本には手軽さと集中力があります。大切なのは厚さに怯まないこと。分厚い本は全部読む必要はなく、辞書的に使えばいい。薄い本は通読して「読了」の体験を積む。厚さに関係なく、自分に合った付き合い方を見つけることが、技術書との長い関係を築く秘訣です。

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