情報パンデミック
ジョウホウパンデミック
あなたを惑わすものの正体
- 著者:
- 読売新聞大阪本社社会部(ヨミウリシンブンオオサカホンシャシャカイブ)
- 出版社:
- 中央公論新社
- 出版日:
- 2022年11月08日頃
- ISBN:
- 9784120055928
- シリーズ:
- 単行本
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
米大統領選→コロナワクチン→ウクライナ侵攻、次々に連鎖する陰謀論。誤情報をネットで流布する匿名の発信者を追い、デマに翻弄される人々の声を聞くーー。高度化する“嘘”の裏側に迫るドキュメント。『読売新聞』長期連載「虚実のはざま」、待望の書籍化。
コロナ禍でデマや陰謀論がかつてない広がりを見せ、社会に混乱と不信、そして分断をもたらした。そうした現象を傍から見ていて、疑問を抱いていた人は少なくないだろう。
いったいどんな人が? 流布する真意は何なのか? なぜ信じてしまうのか?・・・・・・
本書は、その答えと背景にあるものを解き明かそうと、記者が様々な立場の当事者に取材を重ね、実相に肉薄したドキュメントである。
私たちが、読売新聞の長期連載「虚実のはざま」の取材を始めたのは今から 2 年近く前の 2020 年 11 月。この問題への関心は日本では高くなかった時期だ。
だが、今までとは違う何かが起きているのではないか。でも言葉ではうまく言い表せない・・・・・・。そんな、つかみどころのない不気味さを覚えたのが出発点だった。
SNS の投稿を観察すると、コロナを巡る真偽不明の情報がウイルスのごとく増殖していた。得体の知れない異変は、身近なところでも感じられた。仕事の関係者やプライベートの知人などから「新聞は操られているから、本当のことを書けないんでしょ」「フェイスブックとユーチューブさえ見ていたら、真実がわかりますから」と面と向かって言われ、当惑することがしばしばあった。
同じ事柄について話しているのに、「何が事実なのか」という根本的な認識すらも全く異なる人が増えている。虚と実の境界がどんどん曖昧になり、社会で共有されるべき大切な土台が少しずつ浸食されているのではないか。そんな違和感が膨らんでいた。コロナ禍がもたらす負の作用が、それを顕在化させつつあるようにも感じていた。
ネットで起きている問題を取り上げようと思えば、取材の「壁」になるのが当事者の匿名性である。仮に発信者が分かったとしても事案の性質上、話をしてくれる人は少ない。確かに SNS をずっと観察していれば、どんな現象が起きているか把握することはできる。真偽不明の情報を検証し、「誤りだ」と指摘することも重要だ。だが、画面の前で顔の見えない相手に眉をひそめているだけでは、「なぜ」という本質的な問いに対し、根拠をもって答えるのは難しい。それが、取材に時間と労力を要することになったとしても、このテーマに向き合おうと思った理由である。 (「はじめに」より)
技書の森解説
『情報パンデミック』 (読売新聞大阪本社社会部 著、中央公論新社、2022 年 11 月刊) は、コロナ禍を境に広がったデマや陰謀論について、記者が様々な立場の当事者に取材を重ねたドキュメントです。副題は「あなたを惑わすものの正体」で、版元は本書を『読売新聞』の長期連載「虚実のはざま」の書籍化と案内しています。米大統領選からコロナワクチン、ウクライナ侵攻へと連鎖する陰謀論を題材に、誤情報をネットで流布する匿名の発信者を追い、デマに翻弄される人々の声を聞く構成が紹介文に示されています。
陰謀論の発信者と信じた人を取材で追う構成
紹介文に引かれた「はじめに」によると、取材班が連載の取材を始めたのは 2020 年 11 月です。取材の出発点として挙げられているのは、いったいどんな人が流布しているのか、その真意は何か、なぜ信じてしまうのかという問いです。一方で、ネットの問題を取り上げるときに取材の「壁」になるのが当事者の匿名性であり、SNS を観察して真偽不明の情報を検証し「誤りだ」と指摘するだけでは、なぜという問いに根拠をもって答えるのは難しい、という立場も書かれています。取材班は、時間と労力を要しても当事者への取材でこの問いに向き合うと述べており、投稿の真偽の検証よりも、発信する側と信じる側の事情に重心を置いた記録です。
誤情報が SNS で広がる仕組みと技術の側の論点
誤情報の拡散を情報システムの側から見ると、論点は大きく 3 つに分かれます。1 つ目は、反応の多い投稿ほど多くの人に表示されやすい推薦の仕組みです。驚きや怒りを呼ぶ投稿は共有されやすく、真偽とは別の基準で露出が増えていきます。2 つ目は匿名性とアカウントの作りやすさで、発信者の特定が難しいことは、責任の所在をあいまいにすると同時に、同じ主張を複数のアカウントから流す余地を生みます。3 つ目は訂正の届きにくさで、一度広がった投稿を後から検証しても、最初の投稿を見た人と訂正を見る人が同じとは限りません。プラットフォームの設計やコンテンツの審査、検索や推薦の改善に関わるエンジニアにとって、こうした仕組みが実際の人の判断にどう作用したのかを当事者の言葉で知ることは、数値の指標だけでは見えない手がかりになります。
技術書ではなく取材記録として読む人に向く一冊
一般向けの社会の本で、誤情報を自動で判定する手法や、データ分析の手順を学ぶ技術書ではありません。そうした方法を求める人は、別の専門書を選ぶ必要があります。反対に、家族や知人が陰謀論に傾いていく様子に戸惑った経験がある人、SNS の運営やモデレーションの仕事に携わる人、報道や広報の立場から誤情報への向き合い方を考えたい人には、2020 年 11 月から始まった取材の記録として、議論の土台になる事例を手に入れられる本です。
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