よくわかるパーソナルデータの教科書の表紙

よくわかるパーソナルデータの教科書(ヨクワカルパーソナルデータノキョウカショ)

セキュリティ
著者:
森下 壮一郎/高野 雅典/多根 悦子/鈴木 元也(モリシタ ソウイチロウ/タカノ マサノリ/タネ エツコ/スズキ モトヤ)
出版社:
オーム社
出版日:
2022年07月23日頃
ISBN:
9784274228650
在庫:
在庫あり
4(3 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
セキュリティプライバシーデータガバナンス倫理データマネジメントコンプライアンスデータセキュリティデータ戦略ユーザー体験技術倫理

なぜ注目されているか

総合1506 27 ランクダウン

書籍紹介

パーソナルデータの適切な活用のための教科書

パーソナルデータは世界中のさまざまなサービスで活用されています。パーソナルデータによって企業は利益を効率的に改善できるようになり、ユーザーは個々人にとって適切なサービスを受けられるようになりました。
一方で、パーソナルデータの活用は、利用目的や手段によって法的あるいは倫理的な課題にぶつかることが多々あります。場合によっては大きなニュースとなり、企業イメージを低下させ、ユーザーの生活に悪影響を与える恐れすらあります。

本書は、パーソナルデータを取り扱う企業を対象として、適正なデータの利活用に必要な基本事項を提示するものです。
リスクを回避し、「有用性」と「ユーザーのプライバシーや第三者の権利の保護」とを両立しながらデータを利活用するにはどうしたらよいのか、複数の側面から解説します。

▼本書の特徴
・法的な側面だけでなく、倫理やセキュリティや技術に関するものや、意図せずして社会に与える影響などを幅広く解説します。

・ Web 業界を例として、職種問わず共通認識として把握しておきたいことを網羅的に解説します。

・実際にサービスをつくるときに考慮すべき事項を、フローチャートを用いて解説します。

▼このような方におすすめ
◎ 個人データを取り扱うサービスを提供する企業に勤める社会人 (企画・開発・運用・広報・営業など)

◎ 個人データを含むデータビジネスの担当者 (マネージャー、ディレクター、エンジニアなど)

〇 個人データを取り扱うサービスを利用するユーザー

技書の森解説

ユーザーの行動履歴を活用すればサービスは良くなる。しかしその使い方が法的に許されるか、許されたとして世間の感覚に照らして受け入れられるかは、まったく別の問題です。パーソナルデータの利活用にはこの「合法だが不適切」という落とし穴が至る所にあり、判断を担当者個人の良識に委ねると事故が起きます。『よくわかるパーソナルデータの教科書』は、その判断に必要な基本事項を法・倫理・技術・社会影響の横断で整理した教科書で、森下壮一郎氏の編著、高野雅典氏・多根悦子氏・鈴木元也氏の著により、オーム社から 2022 年 7 月に刊行されました (A5 判 248 ページ) 。

全 10 章の構成: 事件簿から活用フローへ

全 10 章の構成は、判断力を段階的に組み立てる順序になっています。序盤はアイテム推薦やターゲティング広告、人流解析、接触確認アプリといった具体例からパーソナルデータの正体を定義し、実際に問題化した事例を集めた「事件簿」で失敗のパターンを先に見せます。中盤では、個人情報・個人データ・仮名化と匿名加工といった紛らわしい用語の関係を整理したうえで、個人情報保護法に限らず著作権、限定提供データ、通信の秘密、顔認証まで含めた権利の全体像と、 Cookieハッシュ関数ブルームフィルター など収集・処理を支える技術のしくみを解説します。終盤は倫理とリスクの考え方を経て、権利判断マトリックスや法務チェック、データ利用管理台帳を組み込んだ「正しい」活用のフローに落とし込み、自社データの外部利用など類型別の応用事例と、統計的差別や情報接触の偏りといった社会への副作用で締めくくります。

動き続ける制度と陳腐化しない骨格

この分野の背景には、制度が動き続けるという厄介さがあります。個人情報保護法は 2015 年改正でいわゆる 3 年ごと見直しの仕組みが入り、 2020 年改正 (2022 年 4 月全面施行) では仮名加工情報の新設や越境移転規制の強化など、データ利活用の枠組みが大きく整備されました。本書の刊行はその全面施行直後の 2022 年 7 月で、記述は当時の制度環境を前提としています。したがって条文の細部やその後の改正内容は個人情報保護委員会などの一次情報で確認する必要がありますが、本書の中心価値はそこにはありません。「誰が・なにから・なにを・なにに」という活用の分解、統計処理と機械学習の関係、匿名性を支える技術原理といった判断の骨格は制度改正で陳腐化しない部分であり、この骨格を持っているかどうかが、改正のたびに右往左往するか自力で追従できるかの分かれ目になります。

類書との違いと想定読者

類書との関係では、条文を逐条で読み込む法律実務書とも、差分プライバシーのような保護技術を数理から実装する技術書とも役割が異なります。本書が埋めるのはその中間、つまり企画・開発・運用・広報といった職種の違いを越えて「このデータをこう使って大丈夫か」を同じ物差しで議論できるようにする層です。レコメンドやログ分析を実装するエンジニア、データビジネスのマネージャー、リリース判断に関わる企画職が読めば、リリース前レビューで 共有できる共通言語 が手に入ります。難易度は Web サービスに関わる社会人なら前提知識なしで読める水準です。

向かない読者と本書の価値

一方、法務担当者が判例分析や逐条解釈の道具として使うには薄く、匿名化技術の理論を深く学びたい研究者・専門エンジニアにも物足りません。その場合は専門書へ進むべきです。しかし、パーソナルデータを扱うサービスの現場で「これはやってよいのか」と最初に問われる立場の人にとっては、法・倫理・技術・社会影響を一冊で見渡せる構成そのものが価値であり、チームの判断基準を揃える最初の一冊として投資に見合う教科書です。

この本に興味がある方におすすめ

この本に関連

関連記事

関連用語

共有:Xはてブ