QRコードの奇跡の表紙

QR コードの奇跡(キューアールコードノキセキ)

モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ

デザイン・グラフィックス
著者:
小川 進(オガワ ススム)
出版社:
東洋経済新報社
出版日:
2020年02月14日頃
ISBN:
9784492534199
在庫:
在庫あり
3.82(15 件 / 楽天ブックス)
初級者向け
QRコードバーコード電子決済トヨタ生産方式標準化オープンソースモバイル技術セキュリティイノベーション歴史

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書籍紹介

誕生 25 周年。トヨタの工場から世界中のスマートフォンへ。
日本発で国際標準になった稀有なイノベーション、 50 年の記録。

QR コードは 1970 年代初頭、トヨタの生産現場での「かんばん」の電子化をめざしてデンソーで研究・開発がスタートした。さまざまな技術的障壁や現場からの反発を乗り越え、 1994 年に完成する。その後の周辺技術、国際標準化への取り組み、オープンソース化、利用現場の開拓など、次々に主導する人物が交代しては進めていった。その後、セブンーイレブンや携帯電話、全日空、銀行 ATM 、駅のホームドアでの導入など、 2000 年代に入って利用者が用途を開発し、爆発的に普及していく。圧倒的な情報量 (バーコードの 350 倍) 、読み取り速度 (Quick Response) とエラー回避、セキュリティ、小さい面積とデザインの自由度などもあって、他のコードを凌駕している。今や中国をはじめ、世界中の主要な電子決済手段にもなっている。 2014 年には、欧州特許庁が主催する「欧州発明家賞」を日本で初めて受賞した。本書は、関係者への取材を丹念なもとに QR コードの今日に至るストーリーと読み解きながら、トヨタ生産方式、スクラム型開発、両利きの経営、ユーザーイノベーションなどを同時に行った、日本発のイノベーションの稀有な事例として描き出すものである。
第 1 章 源流ーーアナログかんばんから電子かんばんへ

第 2 章 開発ーー思索から実践へ

第 3 章 標準化ーー国内単一業界から国際多業界へ

第 4 章 進化ーー企業ユーザーだけでなく消費者も

結章 QR コードを通じて経営を考えるーー革新の神の宿るところ

技書の森解説

『 QR コードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』は、日本の自動車部品メーカーであるデンソーで生まれた QR コードが、トヨタの生産現場の道具から世界中のスマートフォンで使われる国際標準へ育つまでを追ったノンフィクションです。著者はユーザーイノベーション研究で知られる経営学者の小川進氏で、 2020 年 2 月に東洋経済新報社から刊行されました。プログラミングの解説書ではなく、関係者への丹念な取材をもとに「優れた技術はなぜ広まるのか」を解き明かす、経営書と技術史の中間に立つ一冊です。

かんばんの電子化から国際標準まで約 50 年

物語の源流は 1970 年代初頭、トヨタ生産方式の「かんばん」を電子化しようとするデンソーの研究にさかのぼります。バーコードの容量の限界に突き当たった開発チームは 1994 年に QR コードを完成させ、その後は読み取り機など周辺技術の整備、国際標準化への働きかけ、規格のオープン化と、主導する人物が入れ替わりながら普及の布石を打っていきます。転機は 2000 年代で、コンビニエンスストアや携帯電話、航空会社の搭乗手続き、銀行 ATM など、利用者の側が次々と用途を開拓して爆発的に広がりました。 2014 年に欧州特許庁が主催する欧州発明家賞を日本で初めて受賞した発明という到達点まで、約 50 年の記録が一本の物語として描かれます。

読みどころは切り出しシンボルの設計判断

技術面の読みどころは、 QR コードの設計判断がどれも「現場で速く確実に読めること」に収斂している点です。名称の由来は Quick Response で、開発担当者の原昌宏氏らは、コードの三隅に置く切り出しシンボルの白黒比率を決めるために大量の印刷物を白黒に直して調べ上げ、印刷物に最も現れない 1:1:3:1:1 という比率を突き止めました。どの角度から走査してもコードの位置を即座に特定できるのはこの比率のおかげです。加えて誤り訂正の仕組みによって汚れや欠けがあっても読み取れる頑健さを持ち、バーコードの約 350 倍という情報量と小さな印字面積を両立させています。工場という過酷な現場の要件を突き詰めた設計が、結果として決済やチケットといった異分野の要件まで満たしていた。この筋の通り方が、本書が取材で描く開発史の面白さの核です。

経営学の視点で読む標準化とオープン化

もう一つの柱は経営学の視点です。本書はこの開発史を、ユーザーイノベーションや両利きの経営、トヨタ生産方式、 スクラム型開発 といった概念で読み解いていきます。とりわけ、規格を公開して誰でも使える状態にしたオープン化の判断と、その後に利用者自身が用途を発明していった過程は、著者が長年研究してきたユーザーイノベーションの生きた実例です。 QR コードは 2000 年に ISO/IEC 18004 として国際規格になっていますが、「良い技術を作ること」と「技術を標準に育てること」がまったく別の営みであることを、ここまで具体的に示す日本発の事例は多くありません。自社の技術やサービスをどう広げるか、特許や規格をどう扱うかという意思決定に、実例ベースの判断材料を持ち帰れる内容です。

前提知識と買って元が取れる読者

前提知識は不要で、エンジニアにも企画職や経営層にも開かれています。一方、 QR コードの仕様の実装詳細や生成ライブラリの使い方を知りたい人向けの技術解説書ではないので、手を動かす目的なら別の本を選ぶべきです。買って元が取れるのは、自社技術の普及や標準化・知財戦略に関わる人、「良いものを作ったのに広まらない」という壁に直面している企画職や開発者、そして毎日かざしているあの四角いコードの裏側を知りたい人です。読み終えたとき、決済画面や搭乗券に印字された QR コードが、モノづくり集団の発想転換の成果として違って見えるようになる一冊です。

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