カンバン
作業の可視化と WIP 制限でフローを最適化するアジャイル手法
カンバンとは
カンバン (Kanban) は、作業をボード上で可視化し、WIP (Work In Progress) 制限でフローを最適化する手法である。源流はトヨタ生産方式のジャスト・イン・タイムで、後工程が必要な分だけ前工程から引き取り、前工程は引き取られた分だけ補充するという引き取り式の仕組みを、ソフトウェア開発の作業フローに移したものにあたる。ソフトウェア開発向けの方法論として体系化したのは David J. Anderson で、邦訳は『カンバン ソフトウェア開発の変革』(リックテレコム・2014 年) として出ている。スクラムと異なりスプリントの概念がなく、継続的にタスクを流す。
カンバンボード
カンバンボードを図で示す。
| Backlog | To Do | In Progress (WIP: 3) | Review (WIP: 2) | Done |
|---------|-------|----------------------|-----------------|------|
| Task F | Task D| Task A | Task B | Task E|
| Task G | | Task C | | |
| | | | | |
スクラムとの比較
スクラムとの主な違いを以下に比較する。
| 観点 | カンバン | スクラム |
|---|---|---|
| イテレーション | なし (継続的フロー) | スプリント (Scrum Guide 2020 では 1 か月以内の固定長) |
| WIP 制限 | あり (列ごとに上限) | なし (スプリント内で管理) |
| 役割 | 必須の役割を定めない | PO, SM, Dev |
| 計画 | 必要に応じて | スプリントプランニング |
| メトリクス | WIP、スループット、サイクルタイム、作業項目の経過時間 | ベロシティ (慣行。Scrum Guide には定義がない) |
| 変更 | いつでも追加可能 | スプリントゴールを危うくする変更はしない (スコープは PO と再交渉できる) |
WIP 制限
WIP (Work In Progress) 制限は、各列の同時作業数に上限を設ける。
❌ WIP 制限なし:
In Progress: Task A, B, C, D, E (5件同時)
→ コンテキストスイッチが多発、全てが遅くなる
✅ WIP 制限あり (3件):
In Progress: Task A, B, C (3件まで)
→ 1件完了してから次を開始、フローが安定
リードタイムとサイクルタイム
リードタイムは Backlog に入ってから Done までの全期間、サイクルタイムは In Progress に入ってから Done までの作業期間を計測する。
ただしリードタイムの起点は流派で異なり、顧客が依頼した時点を起点に取る定義もある。Kanban Guide が必須とするフローメトリクスは WIP・スループット・サイクルタイム (作業開始から完了までの経過時間)・作業項目の経過時間 (作業開始から現在までの経過時間) の 4 つで、リードタイムは含まない。起点の定義をチームで決めて揃えないと、同じ「リードタイム 5 日」が別の意味になり比較できなくなる。進行中の作業が滞っているかどうかは、完了しないと値が出ないサイクルタイムではなく作業項目の経過時間で見る。
累積フロー図 (CFD)
累積フロー図 (CFD) を図で示す。
件数
| ████████████████ Done
| ████████████ Review
| ████████ In Progress
| ████ To Do
+------------------------→ 時間
各列の件数を時系列でプロットし、ボトルネックを可視化する。
カンバンが適するケース
運用・保守チーム、サポートチーム、割り込みが多い環境、継続的デリバリーに適している。新規プロダクト開発 (スクラム推奨)、見積もりが重要なプロジェクト、固定スプリントやリリース計画が必要な場合には適さない。
さらに掘り下げるなら関連書籍が参考になる。
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関連用語
スクラム
スプリントと呼ばれる短い反復サイクルで開発を進めるアジャイルフレームワーク
アジャイル
短いイテレーションで動くソフトウェアを継続的に届け、変化に適応する開発手法の総称
DORA メトリクス
ソフトウェアデリバリーのパフォーマンスを測定する 4 つの指標
SRE
Site Reliability Engineering の略で、ソフトウェアエンジニアリングの手法でシステムの信頼性を向上させる実践
DevOps
開発チームと運用チームの協働を促進し、ソフトウェアのデリバリーと品質を継続的に改善する文化 / プラクティスの総称
ペアプログラミング
2 人の開発者が 1 台の PC で協力してコードを書く開発手法
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