英語 2 割、図 3 割、コード 5 割 - 洋書が意外と読める理由
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洋書アレルギーの正体
「洋書の技術書を読みたいけど、英語が苦手だから無理」。この思い込みで、優れた技術書を読む機会を逃しているエンジニアは少なくありません。
しかし、技術書のページを開いて構成要素を見分けてみると、英語の文章が占める部分は思ったほど多くありません。コードを動かしながら進めるタイプの本を念頭に、ページの中身をおおまかな目安で分けると次のようになります。
- 英語の地の文: 約 2 割
- 図表・ダイアグラム: 約 3 割
- コードブロック: 約 5 割
この目安どおりなら、ページの 8 割ほどは英語の文章力をほとんど必要としない要素です。ただし比率は本の性格で大きく動きます。設計思想や運用の考え方を論じる本は地の文が中心で、コードはほとんど出てきません。だからこそ、後述する手順では最初の 1 冊をコードの多い本から選びます。
構成要素ごとに、必要な力と読み方を整理すると次のようになります。
| 構成要素 | ページに占める割合 | 読むのに必要な力 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| コードブロック | 約 5 割 | プログラミング言語の文法。英語力は要らない | コードブロックだけを追って、その章が何をやっているかの大枠を掴む |
| 図表・ダイアグラム | 約 3 割 | 図の読み方。アーキテクチャ図・シーケンス図・フローチャート・ER 図 | 説明文を読む前に図で全体像を取る |
| 英語の地の文 | 約 2 割 | 繰り返し出てくる技術英語と、主語 + 動詞 + 目的語の単純な構文 | わからない箇所は飛ばし、前後のコードと図表から意味を推測する |
英語力が問われるのは最下段の 2 割だけで、しかもその 2 割にも技術書特有の読みやすさがあります。
コードは万国共通語
function calculateTotal(items) { return items.reduce((sum, item) => sum + item.price, 0); }
このコードを読むのに英語力は要りません。プログラミング言語の文法を知っていれば、国籍に関係なく読めます。変数名や関数名は英単語ですが、プログラミングをしている人なら calculate、total、items、price 程度の単語は既に知っています。
技術書のコードブロックは、日本語の本でも英語の本でも同じです。洋書を開いてコードブロックだけを追えば、その章が何をやっているかの大枠は掴めます。
ただし、コードから読み取れるのは「何をしているか」までです。なぜその書き方を選んだのか、他の選択肢と比べて何を捨てたのかは、コードの前後の地の文にしか書かれていません。コードだけを追う読み方は 1 周目の見通しをつけるには向きますが、設計の判断を持ち帰りたい章では地の文に戻る必要があります。
図表は言語の壁を超える
アーキテクチャ図、シーケンス図、フローチャート、ER 図。これらの図表は、英語の説明文を読まなくても情報を伝えてくれます。
図の量は、出版社やシリーズの方針で大きく違います。O'Reilly や Manning のように図解を前面に出すシリーズなら、章の初めに全体像の図が置かれていることが多く、そこだけ見ても構造は追えます。
ただし、その図が前提にしているバージョンや条件は、図そのものではなくキャプションと近くの注記に書かれています。ここを読み飛ばすと、適用範囲を取り違えたまま図の形だけを覚えることになります。図で全体像を取ったら、キャプションの 1 行だけは必ず読んでください。
洋書の技術書は、翻訳版が出る前に最新の技術を学べるという大きなメリットがあります。
英語 2 割の攻略法
残りの 2 割の英語テキストも、技術書特有の読みやすさがあります。
語彙が限定的
技術書で使われる英語の語彙は、小説や新聞に比べて限られています。implement、define、return、execute、configure。同じ動詞と名詞が章をまたいで何度も出てくるため、最初の数章で引いた単語がそのまま後半でも効きます。何語覚えれば何割読めるという換算はできませんが、辞書を引く回数は読み進めるほど減っていきます。
文構造がシンプル
技術書の英語は、文学的な修辞や複雑な構文を使いません。「A does B」「If C, then D」「This is because E」。主語 + 動詞 + 目的語の単純な構造が大半です。
同じパターンの繰り返し
技術書の説明は、「概念の定義 → コード例 → 解説 → 次の概念」のパターンを繰り返します。このパターンに慣れると、英語を逐語的に読まなくても、文の役割 (定義なのか、注意点なのか、次のステップなのか) が予測できるようになります。
洋書デビューの具体的な手順
ステップ 1: 日本語版を読んだ本の原著を読む
既に日本語で読んだ本の原著なら、内容を知っている状態で英語に触れられます。「ああ、あの話をこう表現するのか」という発見があり、技術英語の語彙が自然に増えます。
ステップ 2: コードが多い本を選ぶ
最初の洋書は、コードブロックの比率が高い本を選びます。ハンズオン形式の本は、英語の地の文が少なく、コードを追うだけで進められます。
ステップ 3: わからない文は飛ばす
英語の地の文でわからない箇所があっても、前後のコードと図表から意味を推測できることは多いです。完璧に読もうとせず、コードと図表を軸に読み進めてください。
ただし、飛ばしてよい文と、飛ばすと意味が反対になる文は分けて扱います。not、unless、except、instead of、avoid、deprecated のような否定・条件・非推奨を表す語が入った文だけは、面倒でも意味を取ってから進めてください。ここを流すと、やってはいけない書き方を手本として写してしまいます。
3 つのステップをまとめます。
| ステップ | やること | 効く理由 |
|---|---|---|
| 1 原著から入る | 既に日本語版で読んだ本の原著を選ぶ | 内容を知っている状態で英語に触れられ、技術英語の語彙が自然に増える |
| 2 コードが多い本を選ぶ | ハンズオン形式など、コードブロックの比率が高い本にする | 英語の地の文が少なく、コードを追うだけで進められる |
| 3 わからない文は飛ばす | 完璧に読もうとせず、コードと図表を軸に読み進める | わからない箇所も前後のコードと図表から意味を推測できる |
3 ステップとも「英語を読む力を上げる」話ではなく、「英語を読まずに済む部分を増やす」話であるところが共通しています。
翻訳版を待つコスト
人気のある技術書でも、原著の刊行から翻訳版が出るまでに 1〜2 年かかることは珍しくありません。そもそも翻訳が出ない本も多く、待っていれば日本語で読めるようになるとは限りません。技術の進化が速い分野では、この遅れが採用判断の遅れにそのまま出ることがあります。
洋書を読めるようになると、翻訳を待つ列から外れて、原著が出た時点で中身を確かめられます。それが評価に結びつくかは職場や分野によりますが、少なくとも判断の材料が手元に揃う時期は早くなります。
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まとめ
コードの多い技術書なら、ページの大部分はコードと図表で、英語力が低くても読み進められます。技術書に出てくる語彙は限られ、文構造もシンプル。日本語版を読んだ本の原著から始め、コードが多い本を選び、わからない文は飛ばす。この方法で洋書デビューすれば、翻訳を待たずに最新の技術知識にアクセスできるようになります。
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