ゼロから作る Deep Learning シリーズの読む順番 - 全 6 巻の内容と選び方を整理
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結論 - ❶ は全員必読、❷ 以降は「番号順」ではなく「目的順」
『ゼロから作る Deep Learning』(斎藤康毅 著、オライリー・ジャパン) は、外部ライブラリに頼らず Python でディープラーニングを一から実装しながら学ぶシリーズです。2016 年の第 1 巻から 2026 年の第 6 巻 (LLM 編) まで、全 6 巻が刊行されています。
読む順番の結論を先に書きます。
- ❶ (無印) は、どの巻に進むにしても最初に読む。シリーズ全体の前提となる巻です
- ❷〜❻ は続き物ではなく、テーマ別の独立した巻。番号順に読む必要はなく、自分の目的に合う巻へ ❶ から直接進んでかまいません
「2 を飛ばして 5 や 6 を読んでいいのか」という疑問への答えは「よい」です。以下、それぞれの巻が何を扱うかを、発行元の公式ページの情報に基づいて整理します。
全 6 巻の一覧表
| 巻 | テーマ | 発売 | ページ数 | 主な内容 |
|---|---|---|---|---|
| ❶ 無印 | ディープラーニングの基礎 | 2016 年 9 月 | 320 | パーセプトロン、ニューラルネットワーク、誤差逆伝播法、CNN |
| ❷ 自然言語処理編 | 自然言語処理・時系列 | 2018 年 7 月 | 432 | word2vec、RNN、LSTM、seq2seq、Attention |
| ❸ フレームワーク編 | フレームワーク自作 | 2020 年 4 月 | 552 | 自動微分、Define-by-Run、DeZero を全 60 ステップで構築 |
| ❹ 強化学習編 | 強化学習 | 2022 年 4 月 | 376 | バンディット問題、ベルマン方程式、Q 学習、DQN、方策勾配法 |
| ❺ 生成モデル編 | 生成モデル | 2024 年 4 月 | 336 | 最尤推定、VAE、拡散モデルの理論と実装 |
| ❻ LLM 編 | 大規模言語モデル | 2026 年 6 月 | 384 | トークナイザ、Transformer、事前学習から事後学習までを実装 |
シリーズを通じたコンセプトは一貫していて、既存のフレームワークをブラックボックスとして使うのではなく、NumPy レベルから自分の手で組み上げることで原理を理解します。
各巻の性格と前提知識
❶ 無印 (2016 年) - シリーズの土台
パーセプトロンから始めて、ニューラルネットワークの学習、誤差逆伝播法、畳み込みニューラルネットワーク (CNN) までを実装します。誤差逆伝播やソフトマックスといった、❷ 以降のすべての巻が「説明済み」として扱う道具はここで手に入ります。Python の基礎文法が分かっていれば読み始められ、数学は高校レベルの微分の記憶があいまいでも進められる作りです。
❷ 自然言語処理編 (2018 年) - 言葉と時系列データ
単語の分散表現 (word2vec) から RNN、LSTM、seq2seq、そして Attention までを実装します。第 1 章がニューラルネットワークの復習に充てられているとおり、❶ の内容を前提に書かれています。大規模言語モデルを支える Attention の仕組みを、行列演算のレベルで手を動かして理解できる巻です。LLM そのものを作る ❻ が刊行された後も、word2vec から Attention へ至る「進化の流れ」を追体験できる巻として、❻ の前段に置く価値があります。
❸ フレームワーク編 (2020 年) - PyTorch の中身を作る
シリーズ中もっとも毛色が違う巻です。DeZero というオリジナルのフレームワークを全 60 ステップで作り、自動微分や Define-by-Run といった、PyTorch や TensorFlow の内部で動いている仕組みそのものを実装します。「フレームワークを使えるが、中で何が起きているかは説明できない」という状態を脱したい人向けで、552 ページとシリーズ最厚ですが、ステップ刻みなので進捗は管理しやすい構成です。
❹ 強化学習編 (2022 年) - 報酬から学ぶ
バンディット問題、マルコフ決定過程、ベルマン方程式という理論の積み上げから、Q 学習、DQN、方策勾配法までを扱います。強化学習は教師あり学習とは問題設定自体が違うため、❷ や ❸ を読んでいなくても支障はありません。❶ のニューラルネットワークの知識だけを前提に、独立して読める巻です。
❺ 生成モデル編 (2024 年) - 拡散モデルまで
正規分布と最尤推定から始めて、VAE (変分オートエンコーダ)、そして画像生成 AI の中核である拡散モデルの理論と実装まで進みます。公式のキャッチコピーが「ゼロから作る、数式に挑む」であるとおり、シリーズの中でも数式の比重が高い巻です。確率の基礎 (期待値、分布) に不安がある場合は、途中の式変形で立ち止まる時間を見込んでおくと挫折しにくくなります。
❻ LLM 編 (2026 年) - ChatGPT の仕組みを作って解き明かす
シリーズ第 6 弾のテーマは大規模言語モデル (LLM) です。トークナイザから Transformer、事前学習から事後学習 (SFT や強化学習) まで、LLM を支える技術をゼロから実装します。構成は基本編・応用編・挑戦編の 3 部立てで、CodeBot → StoryBot → WebBot と 3 段階のチャットボットを作りながら進みます。応用編以降では RoPE や KV キャッシュ、Flash Attention、分散学習といった、実際の LLM 開発で使われる技術まで射程に入ります。
Attention や Transformer の実装は本書の 2 章に含まれているため、❷ を経なくても読み進められる作りですが、word2vec から Attention へ至る歴史的な流れを先に ❷ で追っておくと、「なぜこの形になったのか」の解像度が上がります。
目的別の読書ルート
┌─ 言語モデル・Attention の中身 ─▶ ❷ 自然言語処理編
├─ PyTorch などの内部の仕組み ──▶ ❸ フレームワーク編
❶ 無印 (必読) ──┼─ ゲーム AI・制御・意思決定 ───▶ ❹ 強化学習編
├─ 画像生成・拡散モデル ─────────▶ ❺ 生成モデル編
└─ LLM・ChatGPT の中身 ─────────▶ ❻ LLM 編 (じっくり派は ❷ を経由)
- とにかくディープラーニングの原理を知りたい: ❶ だけで完結します。まず ❶ を読み切ってから次を考えれば十分です
- LLM の仕組みに興味がある: ❶ → ❻ が最短です。時間をかけられるなら ❶ → ❷ → ❻ で、word2vec から Attention、そして Transformer へと進化の流れごと理解できます
- 研究や実装の道具としてフレームワークを深く使いたい: ❶ → ❸
- 強化学習を学びたい: ❶ → ❹。❷❸ は飛ばして問題ありません
- 画像生成 AI の中身を知りたい: ❶ → ❺。数式への耐性を付けたい場合は ❶ の後に数学の補強を挟むのも手です
なお、当サイトが集計している Qiita / Zenn 記事での言及数ランキングでは、2026 年 8 月時点で ❶ が首位に立ち、シリーズの複数の巻が上位 10 冊に並んでいます。順位は集計のたびに入れ替わりますが、刊行から年月が経った巻が上位に居続けること自体が、技術記事の中で繰り返し参照される定番シリーズであることを示しています (2026 年 6 月刊の ❻ は集計上まだ日が浅い巻です)。
よくある質問
Q. ❷ を飛ばして ❺ や ❻ を読んでもいい?
問題ありません。❺ は ❶ のニューラルネットワークの知識を前提にしていますが、❷ の自然言語処理の内容には依存しません。❻ も Attention・Transformer の実装を本書の 2 章で扱うため、❷ を経なくても読み進められます。
Q. ライブラリ (PyTorch など) の使い方はこのシリーズで学べる?
学べません。このシリーズはフレームワークを「使う」本ではなく「作って原理を理解する」本です。実務でのライブラリ活用は、シリーズで原理を固めた後に実装特化の本へ進むのが効率的です。選び方は ディープラーニング本の選び方 にまとめています。
Q. 数学が苦手でも読める?
❶〜❹ は、数式を眺めるだけでなくコードで確かめながら進む構成なので、数学的な厳密さより納得感を優先して読み進められます。❺ は最尤推定や式変形が中心に来るため、シリーズの中でも数学の比重が高い巻です。
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まとめ
ゼロから作る Deep Learning シリーズは、❶ が全巻共通の土台、❷〜❻ はテーマ別の独立巻という構造です。番号は「難易度の階段」ではなく「刊行順」なので、❶ を読み終えたら自分の目的の巻へまっすぐ進んでください。購入時は巻数ではなく副題 (自然言語処理編・フレームワーク編・強化学習編・生成モデル編・LLM 編) で目的の巻を確かめると間違いがありません。シリーズの販売ページと、巻ごとの当サイト書籍ページ (上の一覧表からリンクしています) も参考にしてください。
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