AI の壁
エーアイノカベ
人間の知性を問いなおす
- 著者:
- 養老 孟司(ヨウロウ タケシ)
- 注目:
- 総合 1637 位
- 出版社:
- PHP 研究所
- 出版日:
- 2020年09月30日頃
- ISBN:
- 9784569847337
- シリーズ:
- PHP 新書
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
人工知能 (AI) 技術の飛躍的発展により、近年「AI が人間の知能を超える」と言われるようになった。
しかし、そもそも AI は本当に役に立つのか? AI と人間の知性の違いはどこにあるのか?
常々「脳」と「意識」について考えてきた解剖学者・養老孟司が、各界のトップランナーと縦横無尽に議論を交わす。
■AI の発展がめざましい棋界に身を置く棋士・羽生善治
■経済学者であり、AI 技術にも精通する井上智洋
■著書でテクノロジーと人間のあり方を考察してきた哲学者・岡本裕一朗
■人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を進めてきた数学者・新井紀子
4 人の叡智との対話から見えてきたのは、AI の限界と可能性。AI はいわば「高級な文房具」、AI 化がむしろ「人間本来の暮らし」に戻れる余白を作ってくれる……AI の限界と日本の未来を語り合う、知的興奮に溢れる 4 つの議論。
第 1 章 AI から見えてきた「人間の可能性」 羽生善治×養老孟司
第 2 章 経済は AI 化でどう変わるか 井上智洋×養老孟司
第 3 章 AI から人間を哲学する 岡本裕一朗×養老孟司
第 4 章 わからないことを面白がれるのが人間の脳 新井紀子×養老孟司
技書の森解説
『AI の壁』 (養老孟司 著、PHP 研究所、PHP 新書、2020 年 9 月刊) は、副題に「人間の知性を問いなおす」を掲げた対談集です。解剖学者で東京大学名誉教授の養老孟司氏を聞き手兼論者に、棋士の羽生善治氏、経済学者の井上智洋氏、哲学者の岡本裕一朗氏、数学者の新井紀子氏という 4 人との対話を 4 つの章に収めています。新書判 208 ページで、機械学習の理論やコードを扱う技術書ではなく、人工知能 は本当に役に立つのか、AI と人間の知性の違いはどこにあるのか、という問いを人間の側から考えるための一冊です。
全 4 章の構成、羽生善治から新井紀子までの 4 つの対談
構成は全 4 章で、章ごとに対談相手が替わります。第 1 章 (AI から見えてきた「人間の可能性」) は羽生善治氏との対話で、版元は羽生氏を AI の発展がめざましい棋界に身を置く棋士と紹介しています。第 2 章「経済は AI 化でどう変わるか」の相手は経済学者であり AI 技術にも精通する井上智洋氏、第 3 章「AI から人間を哲学する」は著書でテクノロジーと人間のあり方を考察してきた哲学者の岡本裕一朗氏、第 4 章「わからないことを面白がれるのが人間の脳」は人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を進めてきた数学者の新井紀子氏です。版元の紹介文は、4 人との対話から見えてきたものを AI の限界と可能性と要約し、AI はいわば「高級な文房具」であるという見方や、AI 化がむしろ「人間本来の暮らし」に戻れる余白を作るという見方を、本書の議論を象徴する文言として掲げています。
「AI が人間を超える」論の背景と、脳の側から問い直す視点
本書が刊行された 2020 年は、深層学習 の進展によって画像認識や囲碁 / 将棋のようなゲームで機械が人間の専門家を上回る成果が積み上がり、「AI が人間の知能を超える」という言説が広く語られていた時期です。技術の側から見ると、こうした成果を支えているのは大量のデータから統計的なパターンを学習する仕組みであり、それが人間の「知性」や「意識」と同じものなのか、そもそも何が違うのかという問いは、工学だけでは答えが出ません。脳を長年研究してきた解剖学者が、AI 化を最も早く経験した将棋界の当事者、雇用と経済への影響を論じる経済学者、人間と技術の関係を考える哲学者、そして AI に大学入試問題を解かせる研究を進めてきた数学者と、それぞれ異なる立場から同じ問いを検討するのが本書の枠組みです。技術書がふつう前提として済ませてしまう「AI に何を期待し、何を期待しないか」という土台の部分を、複数の視点で点検できるのが対談形式の効用です。
技術書ではない新書としての前提知識と、向かない使い方
前提知識は要りません。機械学習の用語や数式は出発点にならず、一般読者向けの新書として通読できる難易度です。その反面、機械学習 のアルゴリズムやモデルの実装、ツールの使い方を学ぶ目的にはまったく向きません。エンジニアとして技術面から AI を体系的に学びたいなら、本書とは別に技術書を選ぶ必要があり、その選び方は 機械学習 / ディープラーニング本の選び方 で整理しています。また、本書は 2020 年時点の対話であり、その後の生成 AI の急速な普及を踏まえた議論は含まれない点も、読む前に押さえておくとよい前提です。
元が取れるのは、日々モデルやツールを扱う立場にいながら、AI に何をさせて何をさせないかという判断の軸を人間の側から持ちたい人です。業務への AI 導入を検討する立場の人、AI 万能論と AI 脅威論のどちらにも違和感を覚えている人にとって、棋士 / 経済学者 / 哲学者 / 数学者という異なる専門家が解剖学者と交わす 4 つの議論は、技術の内側からは出てきにくい言葉を手に入れる機会になります。新書 1 冊分の時間で、技術書の合間に自分の AI 観を点検したい人に向く一冊です。
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