なぜ注目されているか
書籍紹介
コンピュータの誕生から未来までを豊富な図や写真を用いてやさしく解説。文系・理系を問わず、大学・短大・専門学校生を対象とした入門書。ハードウェアとソフトウェアの基礎、インターネット社会、セキュリティ、オペレーティング・システム、プログラミング言語、アプリケーション・ソフトウェアのほか、電子書籍や IC タグなど、最近の話題まで幅広く取り上げている。
第 1 章 人間の能力評価の変遷と社会への影響
1.1 人間の能力評価の変遷
1.2 社会への影響
1.3 学校教育への影響
1.4 勤務体系の変化
第 2 章 コンピュータの出現
2.1 計算の機械化
2.2 計算の自動化
2.3 コンピュータの出現
2.4 普及するコンピュータ
第 3 章 2 進数の世界 (初級・中級編)
3.1 10 進数と 2 進数
3.2 10 進数を 2 進数に変換
3.3 2 進数を 10 進数に変換
3.4 2 進数の加算
3.5 2 進数の乗算
3.6 2 進数の減算
3.7 2 進数の除算
第 4 章 コンピュータ内部での情報の表わし方
4.1 情報の単位
4.2 コンピュータ内部での情報の取り扱い
4.3 コンピュータ内部での情報の表わし方
4.4 さまざまなコード体系
4.5 整数の表現方法
4.6 小数点の表示方法
第 5 章 2 進数の世界 (上級編)
5.1 1 より小さい数の 2 進数表現
5.2 補数
5.3 補数の応用
5.4 8 進数と 16 進数
第 6 章 コンピュータ・システム
6.1 ハードウェアとソフトウェア
6.2 ハードウェア
6.3 ソフトウェア
第 7 章 コンピュータの種類
7.1 扱うデータの形態の違いによる分類
7.2 大きさ、性能などによる分類
7.3 新しい原理による分類
第 8 章 コンピュータの利用形態とライフスタイルの変化
8.1 利用形態の移り変わりとライフスタイル
8.2 ユビキタス社会の到来
第 9 章 コンピュータ・ネットワーク
9.1 ネットワークのはじまり
9.2 LAN (ラン)
9.3 インターネット
9.4 ブロードバンド
第 10 章 セキュリティ (安全性)
10.1 コンピュータ・ウィルス
10.2 不正アクセス
10.3 ウィルスの被害
10.4 ウィルスの命名法
10.5 防御策
第 11 章 オペレーティング・システムとプログラミング言語
11.1 オペレーティング・システム (OS) とは
11.2 オペレーティング・システムの働き
11.3 いろいろなオペレーティング・システム
11.4 プログラミング言語事始め
11.5 言語処理システム
11.6 プログラミング言語の分類
第 12 章 アプリケーション・ソフトウェア
12.1 アプリケーション・ソフトウェアとは
12.2 ワープロ・ソフト
12.3 表計算ソフト
12.4 機械翻訳
12.5 賢くなるロボット
12.6 多岐にわたるアプリケーション・ソフト
第 13 章 最近の話題と情報技術の近未来像
技書の森解説
コンピュータの仕組みを、プログラミングの技能ではなく教養として一通り学びたい学生のための教科書があります。『教養・コンピュータ 第 4 版』 (吉田敬一 著、共立出版、2008 年 12 月刊) は、文系 / 理系を問わず大学 / 短大 / 専門学校生を対象に、コンピュータの誕生から情報技術の近未来像までを豊富な図や写真を使って解説する入門書です。版元の分野区分は情報科学の概論と教科書で、巻末には参考文献、演習問題の解答およびヒント、索引が置かれ、授業の教科書としても独習用としても使える体裁になっています。
全 13 章の構成、2 進数の計算から情報技術の近未来像まで
構成は第 1 章から始まる全 13 章です。第 1 章は人間の能力評価の変遷と社会への影響、第 2 章はコンピュータの出現で、計算の機械化と自動化の歴史からコンピュータの普及までをたどります。第 3 章から第 5 章は本書の柱で、2 進数の世界 (初級 / 中級編)、コンピュータ内部での情報の表わし方、2 進数の世界 (上級編) の 3 章を使い、10 進数と 2 進数の相互変換、2 進数の加減乗除、情報の単位、さまざまなコード体系、整数と小数点の表現、補数とその応用、8 進数と 16 進数を順に扱います。第 6 章はコンピュータ・システム (ハードウェアとソフトウェア)、第 7 章はコンピュータの種類、第 8 章は利用形態とライフスタイルの変化とユビキタス社会の到来、第 9 章はコンピュータ・ネットワーク (LAN、インターネット、ブロードバンド)、第 10 章はセキュリティで、コンピュータ・ウィルス、不正アクセス、ウィルスの命名法、防御策を取り上げます。第 11 章はオペレーティング・システムとプログラミング言語、第 12 章はアプリケーション・ソフトウェア (ワープロ、表計算、機械翻訳、賢くなるロボット) と続き、終章の第 13 章で情報技術の近未来像を展望します。版元の紹介文は、電子書籍や IC タグといった刊行時点の話題も取り上げていると記しています。
2 進数と補数を教養として学ぶ意味
3 章分を 2 進数と情報表現に割く構成は、教養課程向けの本としては骨太です。文字も画像も音声も、コンピュータの内部ではすべて 0 と 1 の列に置き換えられており、その約束事を知らないと「なぜ表計算の小数計算で端数がずれるのか」「なぜ文字化けが起きるのか」といった日常の疑問に原理から答えられません。補数を使えば減算を加算の回路だけで実現できるという事実は、CPU が単純な仕組みで多様な計算をこなす理由そのものです。文字にどの数値を割り当てるかというコード体系の問題は、後に Unicode のような規格を理解する土台になりますし、第 11 章にある言語処理システムの節は、人間が書いたプログラムを機械語へ翻訳する コンパイラ やインタプリタの役割をつかむ入口です。これらは特定製品の操作手順と違って年月で古びない知識で、本書の価値の中心がここにあります。
2008 年刊の教科書として読むときの前提と注意
第 4 版の刊行は 2008 年 12 月で、本書は 2008 年時点の技術環境を前提に書かれています。目次に並ぶ語はブロードバンド、ユビキタス社会、IC タグといった 2000 年代の語彙で、クラウド、スマートフォン、SNS、機械学習という語は目次に現れません。セキュリティの章もコンピュータ・ウィルスと不正アクセスが軸で、2010 年代以降に被害が広がったランサムウェアやフィッシング詐欺は目次上の項目にはありません。したがって第 6 章から第 13 章のうち製品や社会動向を扱う部分は、歴史的な背景として読むのが適切です。一方で第 3 章から第 5 章の数値表現、第 6 章のハードウェアとソフトウェアの基本構成、第 11 章の OS と言語処理系の原理は 2020 年代でもそのまま通用します。2020 年代の技術動向は別の新しい入門書で補うという二段構えが前提になります。
大学 / 短大 / 専門学校の教養科目に向く読者と向かない人
前提知識は要りません。版元が対象として挙げるのは、文系 / 理系を問わず大学 / 短大 / 専門学校の学生で、2 進数の計算も 10 進数の四則演算ができれば追える段階から始まります。巻末に演習問題の解答およびヒントがあるため、授業の教科書として指定された場合だけでなく、独習で手を動かして確認しながら進めることもできます。向かないのは、プログラムを書けるようになりたい人です。第 11 章はプログラミング言語の成り立ちと分類を扱う章で、特定の言語で演習を積む構成ではありません。また、2020 年代のクラウドや生成 AI を含む技術の全体像を知りたい社会人にも、刊行年からして第一の選択にはなりません。
元が取れるのは、教養科目で情報の授業を受ける学生、非情報系の学部で 2 進数や補数の計算を一度きちんと手で確かめておきたい人、そして基本情報技術者試験などで問われる数値表現の基礎を、試験対策書より穏やかな筆致で入門したい人です。コンピュータが何をしている機械なのかを原理から説明できるようになることが本書のペイオフで、その部分は刊行から年月を経ても価値を失っていません。
言及した記事 (1 件)
この本に興味がある方におすすめ
関連する本
関連記事
技術書の「積ん読」を資産に変える - 未読本を活かすリファレンス読書術
積ん読を「解消すべき問題」ではなく「活用すべき資産」として捉え直す発想の転換と、未読の技術書をリファレンスライブラリとして運用する具体的な方法を紹介します。
技術書を読む速度が 2 年目で急に上がる理由
技術書を読み始めて 1 年目は遅い。しかし 2 年目に入ると、新しい本を読むスピードが上がりやすくなります。この加速が起きるメカニズムと、加速を早めるコツを解説します。
「とりあえず動く」で 5 年過ごしたエンジニアの末路
「動けばいい」のマインドセットで 5 年間コードを書き続けると何が起きるか。技術的負債の蓄積、キャリアの停滞、そしてそこから抜け出すための読書戦略を考えます。