みんなの量子コンピュータ
ミンナノリョウシコンピュータ
- 著者:
- Chris Bernhardt / 湊 雄一郎 / 中田 真秀(クリス・バーンハルト / ミナト ユウイチロウ / ナカタ マホ)
- 出版社:
- 翔泳社
- 出版日:
- 2020年01月24日頃
- ISBN:
- 9784798163574
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
量子コンピューティングに関する基礎理論の全体像
【本書の内容】
本書は、量子ビットを使用したコンピューティングの数学的構造をわかりやすく紹介しています。
解説を単純化すると、量子状態に実際の係数のみを使用することで、位相の複雑さを軽減し、
初学者にもイメージしやすくしています。
一読すれば、すぐにでも量子コンピュータのエキスパートに近づけるという書籍ではありませんが、
量子コンピュータを形作る数学・物理学、アルゴリズム、論理回路など、多方面のアイデアと、
その源泉に触れることができます。
そのため、読者が直感的に理解している分野に関しては、その厳密なバックボーンを提供し、
理解の促進 (あるいは取っ掛かり) が得られるはずです。
本書は、「なんとなく」や「話のタネ的に」ではなく、
量子コンピュータをベースに世界を構築したい人たちのための、最初の一冊です。
本書は
"Quantum Computing for Everyone" Chris Bernhardt
The MIT Press Cambridge
の翻訳です。
【本書のポイント】
・スピンやキュービット、スイッチなどの厳密な解説
・もつれ状態の構築実際の係数を使用して説明
・論理回路とユニバーサルゲートの構築法
・NP 問題に適応する量子アルゴリズムの構築
【読者が得られること】
・量子コンピュータに必要な数学的背景
・80 年代から続くアイデアの整理と展望
・高次コンピュータサイエンスの理解
【対象読者】
・理工学部学生
・量子コンピュータをターゲットとするエンジニア
・量子コンピュータ科学者
【著者について】
・Chris Bernhardt (クリス・バーンハルト)
Warwick ユニバーシティで数学の博士号を取得後、Fairfield ユニバーシティの数学教授。
主な著述はコンピュータ理論であり、数学や物理、コンピュータ・サイエンスを含む分野がメインである。
この分野は、多くの美しく直感に反するアイデアが含まれており、
バーンハルト教授の目的は、すべてをできるだけシンプルにすることで、
非専門家にもこれらの重要なポイントを紹介することにある。
技書の森解説
量子コンピューターの仕組みを、たとえ話ではなく数学の言葉で一通りたどりたい人のための入門書です。『みんなの量子コンピュータ』 (Chris Bernhardt 著、湊 雄一郎、中田 真秀 監修・翻訳、翔泳社、2020 年 1 月刊) は、The MIT Press から出た Quantum Computing for Everyone の日本語版で、副題は「量子コンピューティングを構成する基礎理論のエッセンス」です。版元の紹介によると、量子ビットを使用したコンピューティングの数学的構造を紹介する本で、対象読者には理工学部の学生、量子コンピューターを対象とするエンジニア、量子コンピューター科学者が挙げられています。著者は刊行時の版元の著者紹介で、Warwick で数学の博士号を取得し、Fairfield の数学教授とされています。
全 9 章の前半、スピンと線形代数で量子ビットを記述する
1 章「スピン」は量子時計や測定、光子と偏光から入り、2 章「線形代数」でベクトル、ブラとケットの積、正規直交基底、行列、直交およびユニタリ行列といった道具を揃えます。3 章「スピンと量子ビット」ではそれを使って量子スピンと光子の偏光を数学で表し、量子ビット、アリスとボブとイブ、確率振幅と干渉の節を経て、BB84 プロトコルの節へ進みます。4 章「量子もつれ」はテンソル積の標準基底と、CNOT ゲートで量子ビットをもつれさせる方法、5 章「ベルの不等式」はアインシュタインと局所現実性、隠れ変数を取り上げ、量子鍵配送のためのエッカートプロトコルの節で締めくくられます。物理の現象を先に見せ、必要な数学を挟んでから量子ビットの記述に戻る並びと読めます。
後半、古典の論理回路から量子ゲートと量子アルゴリズムへ
6 章「古典論理、ゲート、および回路」はブール代数、NAND による普遍的なゲート、可逆ゲート、ビリヤードボールコンピューティングを扱い、7 章「量子ゲートと回路」で量子複製不能定理、ベル回路、超高密度符号化、量子テレポーテーション、エラー訂正へ進みます。8 章「量子アルゴリズム」は複雑性クラス P と NP、クエリの複雑さから、ドイッチのアルゴリズム、ドイッチ-ジョサのアルゴリズム、サイモンのアルゴリズムを順に取り上げます。9 章「量子コンピューティングの与える影響」は、ショアのアルゴリズムと暗号解読、グローバーのアルゴリズムとデータ検索、化学とシミュレーション、ハードウェア、量子アニーリング、量子超越性と並行宇宙の節で構成されています。
量子ビットを状態ベクトルと行列で扱う考え方
量子コンピューター の計算は、量子ビットの状態を 2 つの基底ベクトルの線形結合として書き、量子ゲートをその状態ベクトルに掛かるユニタリ行列として扱うと見通しがよくなります。測定でどちらの値が得られるかの確率は係数の 2 乗で決まり、複数の量子ビットはテンソル積でまとめて表します。この枠組みが分かると、量子もつれは個々の量子ビットの状態の積に分解できない状態として、量子アルゴリズムは確率振幅の干渉を利用して答えの出やすさを変える手続きとして読めるようになります。量子計算が注目される理由の一つは、公開鍵型の 暗号化 が安全性を頼る問題を、古典的な計算機より速く解ける手順が知られていることです。紹介文は「量子状態に実際の係数のみを使用することで、位相の複雑さを軽減し」と説明しており、2 章の冒頭に「複素数と実数について」の節が置かれていることと合わせると、係数を実数に絞って数学の負担を抑える方針と読めます。
理工系の学生やエンジニアに向く理由と、実装を学ぶ本との違い
版元は本書を、すぐにでもエキスパートに近づけるという書籍ではないとしたうえで、量子コンピューターを形作る数学、物理学、アルゴリズム、論理回路の考え方とその源泉に触れられる本だと案内しています。線形代数を 1 章分かけて用意してから量子ビットに入るので、行列の計算に久しぶりに触れる理工系の学生やエンジニアでも足場を作りながら読み進められます。一方、目次にはプログラミング環境や開発キットを使う章は無く、量子回路をコードで組んで動かしたい場合は実装を扱う本と組み合わせることになります。量子コンピューターの解説記事や講演で出てくる量子もつれや量子アルゴリズムの話を、自分で式を追って確かめられるようになりたい人にとって、本書はその土台を 1 冊で作れる入口です。
言及した記事 (11 件)
書籍等を用いた「量子コンピュータ」の学習ロードマップ
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