機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ

キカイカニバリズム ニンゲンナキアトノジンルイガクヘ

機械カニバリズム 人間なきあとの人類学への表紙
ハードウェア
著者:
久保 明教(クボ アキノリ)
出版社:
講談社
出版日:
2018年09月12日頃
ISBN:
9784065130254
シリーズ:
講談社選書メチエ
在庫:
在庫あり
4.67(3 件 / 楽天ブックス)

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書籍紹介

「シンギュラリティ」「IoT で豊かな未来」「鉄腕アトム」「ターミネーター」……私たちは、機械を愛し、憎んでいる。では機械のほうから「私たち」を見たらどうなる? テクノロジーと深く結びつく人間は、あらたな存在に生まれ変わっているのかもしれない。
人類学者カストロは、アマゾンにおける食人=カニバリズムを、「他者の視点から自らを捉え、自己を他者としてつくりあげるための営為」として描き出した。「機械カニバリズム」は、テクノロジーによって私たちが変容ゆくことを捉える試みである。将棋ソフトによってプロ棋士と将棋が、SNS によってコミュニケーションと社会が、いままさに変容しているなか、「人間」観そのものが刷新されていくべきなのだ。気鋭の人類学者が、「現在のなかにある未来」を探る、痛快かつ真摯な思考!

川上量生氏コメントーー
わたしたちは AI が人間の能力を凌駕しつつある歴史的過程の中にいます。AI と人間とどちらが優れているのか、そういう問いが日常的に飛び交う世の中で過ごすのも、この時代に生を受けた運命としてはやむを得ないことでしょう。

しかしながら実際にはこの問いは、そもそも正しくなかったことが明らかになってきました。いったい「優れている」とはなにか? AI とはなにか? そしてなによりも人間とはなにか? という、より大きな疑問が頭をもたげてきたからです。人間とはそもそも優れているのか、機械とは、そして AI とはなにが違うというのか。そして真実が明るみになったときに、人類ははたして結果を受け入れることができるのでしょうか。

いささか大袈裟ではありますが、人間社会が AI の時代を受け入れるための礎石にならん、という決意で始めた将棋電王戦を、本書は AI 時代における社会的な役割から解き明かしてくれました。また、より大きな視点で、ニコニコ動画を含めたネット社会についても、人間と技術の関わりから、どう捉えるべきかを示してくれています。

こういう議論はまだまだ始まったばかりで、21 世紀の人類の最大の哲学的テーマであると思う次第です。

【本書の内容】
現在のなかの未来

ソフトという他者

探索から評価へ

知性と情動

強さとは何か

記号の離床

監視からモニタリングへ

生きている機械

第一章 現在のなかの未来

第二章 ソフトという他者

第三章 探索から評価へ

第四章 知性と情動

第五章 強さとは何か

第六章 記号の離床

第七章 監視からモニタリングへ

第八章 生きている機械

技書の森解説

『機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ』 (久保明教 著、講談社、講談社選書メチエ、2018 年 9 月刊) は、将棋ソフトとプロ棋士、SNS とコミュニケーションという 2 つの題材を通して、テクノロジーと深く結びついた人間がどう変わっていくのかを人類学の立場から考える書籍です。版元の紹介文は、機械を愛しながら憎んでもいる私たちを、機械の側から見たらどう見えるのかという問いを掲げています。人工知能 を性能の比較や経済効果の話としてではなく、人間観そのものの問い直しとして読みたい人に向いた一冊です。

全 8 章の構成と、将棋ソフトと SNS という 2 つの題材

目次は第一章から第八章までの全 8 章で、第二章「ソフトという他者」、第三章「探索から評価へ」、第四章「知性と情動」、第五章「強さとは何か」、第六章「記号の離床」、第七章「監視からモニタリングへ」と続き、第八章「生きている機械」で閉じます。版元の紹介文によれば、本書は将棋ソフトによってプロ棋士と将棋が、SNS によってコミュニケーションと社会が変容している状況を取り上げ、「人間」観そのものが刷新されていくべきだと論じます。版元ページには将棋電王戦を始めた川上量生氏のコメントが掲載されており、本書が将棋電王戦を AI 時代における社会的な役割から解き明かし、ニコニコ動画を含めたネット社会についても人間と技術の関わりからどう捉えるべきかを示していると紹介しています。

「探索から評価へ」の背景にあるゲームプログラムの仕組み

章題にある探索と評価は、将棋や囲碁を指すプログラムを組み立てる 2 つの基本の部品の名前でもあります。探索は、指せる手とそれに対する相手の応手を木の形に展開し、何手か先までの局面を順に調べる処理です。評価は、探索の末端に現れた局面がどちらにどれだけ有利かを数値で見積もる処理で、駒の価値や玉の囲いの堅さといった多数の要素を重みづけして足し合わせる関数として作られてきました。この重みを開発者が手で調整する代わりに、プロ棋士の棋譜から 機械学習 で自動的に合わせ込む方式が広まったことで、将棋ソフトの強さは人の言葉で説明しきれない数値の集まりに支えられるようになります。人間の側から見ると理由の分からない手が、結果として勝ちにつながることもあります。

優劣の比較から人間観の問い直しへ、人類学の視点

AI をめぐる議論は、機械と人間のどちらが優れているかという比較の形をとりがちです。版元ページの川上量生氏のコメントは、その問いがそもそも正しくなかったことが明らかになってきたと述べ、優れているとは何か、AI とは何か、人間とは何かというより大きな疑問が立ち上がってきたと書いています。書名が借りているのは、人類学者カストロがアマゾンの食人を「他者の視点から自らを捉え、自己を他者としてつくりあげるための営為」として描き出した議論です。版元はこれを、テクノロジーによって私たちが変容していくことを捉える試みとして説明しています。機械を外側から評価する道具として見るのではなく、機械と関わることで人間の側の考え方や振る舞いが組み替わっていく過程に目を向ける点に、本書の立場があります。

将棋ソフトと SNS を扱う人文書が向く読者

本書は人類学の書籍であり、機械学習の手法やプログラムの書き方を学ぶ本ではありません。モデルの作り方や実装の手順を求める人には目的が合わないので、技術書と並べて選ぶ場合は役割を分けて考えるのが確実です。著者は版元の著者紹介で、科学技術と社会の関係を文化人類学と社会人類学の観点から研究していると紹介されており、著作には『ロボットの人類学』 (世界思想社) があります。

一方で、AI を組み込んだ製品やサービスを作るエンジニアで、利用者が機械とどう付き合い、その過程でどう変わっていくのかを考える手がかりがほしい人には、技術の言葉の外から問いを立て直す材料になります。将棋ソフトと棋士の関係や、SNS が人と人のつながり方を変える過程に関心がある人、AI と人間の優劣という枠組みに違和感を持っている人にとって、本書は議論の土台を一段掘り下げるための一冊です。

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