教養としての AI 講義 ビジネスパーソンも知っておくべき「人工知能」の基礎知識
キョウヨウトシテノエーアイコウギビジネスパーソンモシッテオクベキジンコウチノウノキソチシキ
- 著者:
- メラニー・ミッチェル / 松原 仁 / 尼丁 千津子(メラニーミッチェル / マツバラヒトシ / アマチョウチヅコ)
- 注目:
- 総合 1061 位
- 出版社:
- 日経 BP
- 出版日:
- 2021年02月12日頃
- ISBN:
- 9784296000128
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
AI 解説本の決定版。「今知るべき AI のすべて」がわかります。
大きな進歩を遂げて、活用が広がる人工知能 (AI)。
AI の成果とその仕組みから、多くの未解決問題、
潜在的な利益とリスク、科学的・哲学的な問題まで、
身近になった AI の現況と見通しを深く掘り下げつつ、
わかりやすく説明した 1 冊です。
世界的名著『ゲーデル, エッシャー, バッハ あるいは不思議の環』著者の
愛弟子が人工知能の仕組みと実用性を徹底的にやさしく全部教えます!
人工知能に関する本は山のように出ているが、
本書の記述の正確さとわかりやすさは群を抜いている。
解説者が何百冊以上の本を読んで得た人工知能の知識を、
本書 1 冊を読むだけで得ることができる。
……本書を読めば人工知能の凄さと脆さがわかる。
「私たちはまだ、はるか、はるか遠くにいる」のである。
松原仁 東京大学次世代知能科学研究センター (AI センター) 教授 本書「解説」から
【目次】
はじめに - 恐怖にとらわれる
AI と『GEB』
チェスと第一の疑いの種
音楽ーー人間性のとりで
グーグルとシンギュラリティ
ホフスタッターは、なぜ恐怖にとらわれているのか?
混乱する私
この本が目指すもの
第 1 部 予備知識
第 1 章 人工知能が辿ってきた道のり
第 2 章 ニューラルネットワークと、台頭する機械学習
第 3 章 AI の春
第 2 部 見ることと読み取ること
第 4 章 誰が、いつ、どこで、何を、なぜ
第 5 章 CNN と ImageNet
第 6 章 学習する機械を詳しく見る
第 7 章 信頼できる倫理的な AI とは
第 3 部 遊びを学習する
第 8 章 ロボットへのご褒美
第 9 章 ゲームを止めるな
第 10 章 ゲームを超えて
第 4 部 人工知能が自然言語に立ち向かう
第 11 章 言葉とその周りのもの
第 12 章 エンコーディングとデコーディングによる翻訳
第 13 章 何でも聞いて
第 5 部 意味の壁
第 14 章 理解について
第 15 章 人工知能にとっての知識、抽象化、そしてアナロジー
第 16 章 質問、答え、それについての考察
質問ー自動運転車が普及するまで、あとどれくらいかかるだろうか
質問ー AI によって、大量の人間の失業者が出るのだろうか
質問ーコンピューターは創造性豊かになれるのだろうか
質問ー汎用的な人間レベルの AI の実現まで、あとどれくらいかかるのだろうか
質問ー私たちは AI をどれくらい恐れる必要があるのだろうか
質問ー AI についての既存の問題で、まだ解決されていないものは何か
技書の森解説
AI は何ができて何ができないのか。その問いに、技術礼賛でも脅威論でもない立場から答えるのが『教養としての AI 講義』 (メラニー・ミッチェル 著、尼丁千津子 訳、松原仁 解説、日経 BP、2021 年 2 月刊) です。副題は「ビジネスパーソンも知っておくべき「人工知能」の基礎知識」で、国立国会図書館の登録では原題は Artificial Intelligence とされています。著者はコンピューター科学の研究者で、版元プロフィールによればミシガン大学大学院で『ゲーデル, エッシャー, バッハ あるいは不思議の環』の著者ダグラス・ホフスタッターの指導のもと博士号を取得し、アナロジーを生成する Copycat プログラムを共同開発した人物です。AI の成果とその仕組みから、多くの未解決問題、潜在的な利益とリスク、科学的 / 哲学的な問題までを掘り下げる概説書で、判型は A5 判、日本経済新聞 2021 年 4 月 3 日朝刊で書評が掲載されました。
全 5 部 16 章の構成、AI の歩みから意味の壁まで
本文は全 5 部 16 章で、その前に置かれた「はじめに」は「恐怖にとらわれる」と題され、ホフスタッターがなぜ AI に恐怖を抱いたのかを巡る導入になっています。第 1 部の予備知識は人工知能が辿ってきた道のり、ニューラルネットワークと機械学習の台頭、AI の春を扱い、第 2 部の見ることと読み取ることでは CNN と ImageNet、学習する機械を詳しく見る、信頼できる倫理的な AI とは何かを検討します。第 3 部の遊びを学習するはロボットへのご褒美、ゲームを止めるな、ゲームを超えてと続き、第 4 部の人工知能が自然言語に立ち向かうでは言葉とその周りのもの、エンコーディングとデコーディングによる翻訳、何でも聞いてという章が続きます。第 5 部の意味の壁は理解について、人工知能にとっての知識 / 抽象化 / アナロジーを論じ、第 16 章では自動運転車の普及時期、AI による大量失業、コンピューターの創造性、汎用的な人間レベルの AI の実現時期、AI をどれくらい恐れる必要があるか、未解決の問題という六つの質問に著者が答える形で締めくくられます。
深層学習の成果と脆さを見分ける技術背景
本書が扱う AI の成果は、2012 年の ImageNet 画像認識コンペティションで畳み込みニューラルネットワークが精度を大きく更新して以降の 深層学習 の展開が中心にあります。画像認識、報酬から行動を学ぶ 強化学習 によるゲームの攻略、エンコーダーとデコーダーを組み合わせた機械翻訳や質問応答という 自然言語処理 の進歩は、いずれも大量のデータと計算資源を前提にした同じ潮流の産物です。難しいのは、こうした成果の裏側にある脆さを見分けることです。人間には見えないわずかなノイズで判定が変わる、訓練データの偏りが判断に写り込む、ゲームでの強さが少しルールを変えただけで崩れる、翻訳文が流暢でも意味を扱っているとは限らないといった問題は、統計的なパターン学習という手法そのものに根があります。著者はアナロジーを生成する Copycat を共同開発した研究者で、第 5 部ではこれらを「意味の壁」という主題に束ね、機械は本当に理解しているのかを論じます。解説の松原仁は、本書を読めば人工知能の凄さと脆さがわかると評し、「私たちはまだ、はるか、はるか遠くにいる」という一節を本書の要点として挙げています。
刊行 2021 年の時点で読む前提と、生成 AI 以後の位置づけ
日本語版の刊行は 2021 年 2 月で、対話型の 生成 AI が一般に広がった 2022 年末以降の展開は刊行後の出来事です。したがって大規模言語モデルの具体的な挙動や業務利用の話は本書の範囲外で、扱われる事例は画像認識、ゲーム、翻訳と質問応答までです。ただし、著者が第 5 部で提示する問い、つまり流暢な出力と理解の違い、常識と抽象化の欠如、アナロジーの重要性は、生成 AI の限界を評価する際に繰り返し持ち出される論点そのものであり、本書の議論の枠組みは刊行後の技術にも当てはめて読めます。著者は AI 研究者としての立場から書いており、読む側は個々の事例の新旧よりも、成果を評価するときの問いの立て方を持ち帰るのが本書の使い方です。
ビジネスパーソンと技術者それぞれの読みどころ、向かない人
版元は本書をわかりやすく説明した一冊と紹介し、副題もビジネスパーソンを読者に含めているので、機械学習の専門知識やプログラミングの経験は前提になっていません。ビジネスパーソンが得られるのは、AI 導入の提案や報道に接したときに、それが画像認識 / 強化学習 / 自然言語処理のどの系譜の成果で、どこに脆さがあるのかを判断する相場観です。機械学習を実務で使う技術者には、個々の手法の背後にある前提と、精度指標では見えない失敗の型を歴史的な文脈で整理し直す効果があります。向かないのは、特定の手法の実装方法やライブラリの使い方を求める人、生成 AI の業務活用術を知りたい人、短時間で要点だけ押さえたい人で、これらの目的には別の本が適切です。
読み通すには相応の時間が要りますが、AI の成果を鵜呑みにせず、かつ不当に恐れもしないための判断軸を一冊で身につけたい人には、投じた時間が長く効く本です。AI という言葉に振り回されない教養を求める人にとって、本書は正面から応える選択です。