量子コンピュータによる機械学習

リョウシコンピュータニヨルキカイガクシュウ

量子コンピュータによる機械学習の表紙
AI / 機械学習
著者:
Maria Schuld / Francesco Petruccione / 大関 真之 / 荒井 俊太 / 篠島 匠人 / 高橋 茶子(マリア シュルト / フランチェスコ ペトルチョーネ / オオゼキ マサユキ / アライ シュンタ / ササジマ タクト / タカハシ チャコ)
出版社:
共立出版
出版日:
2020年08月28日頃
ISBN:
9784320124622
在庫:
在庫あり
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中級者向け
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書籍紹介

量子機械学習は, 量子力学に基づく計算手法という新しい概念と, 近年隆盛をむかえる機械学習の両者が相まって非常に興奮を覚える新しい分野に感じられる。しかしその基礎を押さえた書籍は意外なことに少ない。研究内容を紹介するような文献はいくつか見られるものの, 両者の初学者が手にとり, そしてお互いの分野を知り, 橋渡しをするような本当に求められている人材を育成するような教科書になる文献は存在しなかった。

本書は, 機械学習の概観を知り, しかし優しい言葉でわかったような気になるのではなく, 量子機械学習の枠組みに昇華させるために必要な数学的な要素や用語を押さえて, 後で納得感が得られる伏線がしっかりと張られた心地よい構成になっている。量子力学の説明にしても, 従来の教科書の記述が冗長であると喝破して, 必要最小限の記述で, 直接的に量子コンピュータ, 量子機械学習へのガイドとなっているところは, 急速に進化するこの分野における教科書としての位置付けが明確である証左とも言える。いわゆるゲート式, アニーリング式のどちらに偏ることもなく, これまでの研究で重要な起点, 進展の重要なところを取り上げており, 読み終わった後に現在の研究の最前線においても陳腐化しない知識を抑えることができる。

本書はそうした量子機械学習の研究を始めるにあたり, それぞれの分野の研究者を始め, 企業の開発者, 大学院生, 学部生が読み進めるのにちょうど良い難易度で, バランスよく両分野を意識した配置で書かれた良書である。

「量子機械学習, ないしは量子コンピュータの研究は, 言葉だけを受け取ると障壁が高いように感じられる。しかしながらその正体は, 両者の分野の過不足のない洗練された内容を学ぶチャンスと言える。両者ともに歴史が古いようで数学や物理学の多くの分野とは異なり, まだ新しい。特に量子コンピュータの登場により, 量子力学は学ぶ内容や道筋について, 再考が求められているときに来ているだろう。機械学習においてもだいぶその数理的内容が網羅的に整備された後であることを考えると, コンパクトにまとめて両者の関係を見つめながら学ぶのにもっとも効率的な時期を迎えていると個人的に強く思う。本書はそういう背景も踏まえて, だいぶスムーズに基礎的な事柄について学ぶこともできるため, どちらの分野にとっても有益で, 相補的な書籍になることが期待できる。」
(監訳者まえがき より)

技書の森解説

量子コンピューターの上で教師あり学習をどう組み立てるかを、機械学習と量子情報の両方の入門から積み上げて説明する教科書です。『量子コンピュータによる機械学習』 (Maria Schuld、Francesco Petruccione 著、大関 真之 監訳、荒井 俊太、篠島 匠人、高橋 茶子、御手洗 光祐、山城 悠 訳、共立出版、2020 年 8 月刊) は、原タイトル Supervised Learning with Quantum Computers の日本語版です。版元の紹介文は、両分野の初学者が手に取ってお互いの分野を知り、橋渡しをする人材を育てる教科書と位置づけ、研究者のほか企業の開発者、大学院生、学部生が読み進めるのにちょうど良い難易度と案内しています。

全 9 章の構成、両分野の入門から量子モデルまで

1 章「はじめに」は、2 つの学問の融合と量子機械学習のはじまり、4 つのアプローチを整理したうえで、二乗距離識別器を量子コンピューターで実現する小さな例を先に示します。続く 2 章「機械学習」と 3 章「量子情報入門」が両分野の入門にあたります。2 章ではベイズ学習、カーネルと特徴写像、確率的勾配降下法、人工ニューラルネットワーク、グラフィカルモデル、カーネル法を取り上げ、3 章では量子力学の仮定、古典ビットと量子ビット、量子ゲート、情報の符号化の方法、グローバー探索、量子位相推定などを扱います。4 章「量子優位性」は学習の計算複雑性、サンプル複雑性、モデル複雑性の 3 つの節で優位性の意味を整理し、5 章「情報の符号化」は計算基底符号化、振幅符号化、量子サンプル状態符号化、ハミルトニアン符号化の 4 方式を掘り下げます。6 章から 8 章が推論と学習の本論で、9 章「これからの量子機械学習」はスモールデータとビッグデータ、ハイブリッドと完全なコヒーレントアプローチ、定性的優位性と定量的優位性という対比で展望をまとめます。各章の末尾には参考文献が置かれています。

量子カーネルと変分回路、データの符号化が鍵になる理由

量子コンピューター で学習を行うとき、最初の壁になるのは古典のデータを量子状態へ載せる手順です。どの方式で符号化するかによって、使える量子ビットの数や回路の深さ、計算できる関数の形が変わるため、本書が符号化に独立した章を割いている構成には意味があります。6 章「推論のための量子計算」は、干渉回路で内積を求める線形モデル、量子カーネルと距離に基づいた識別器、量子サンプル状態を使う確率モデルを扱います。データを高次元の特徴空間へ写して内積で比べるというカーネル法の発想は、量子状態の重ね合わせと干渉とよく噛み合うため、量子カーネルは量子機械学習の中心的な考え方の一つになっています。7 章「量子計算による学習」は量子 BLAS による逆行列の計算、グローバー探索と振幅増幅、変分アルゴリズムと変分識別器の解析的な勾配、制約なし 2 次最適化問題やアニーリングマシンを使う量子断熱機械学習へ進み、8 章「量子モデルを利用した学習」は量子ボルツマンマシンや量子ホップフィールドモデル、変分回路とニューラルネットワークの対応、量子ウォークモデルや QBoost を取り上げます。版元の紹介文が述べるとおり、ゲート式とアニーリング式のどちらにも偏らない並びです。

前提知識と、2020 年時点の研究の地図としての使い方

版元は初学者にも開かれた教科書と案内しており、2 章と 3 章で両分野の基礎を本の中で用意しています。それでも、量子状態はベクトル、量子ゲートはユニタリ行列として書かれるため、行列の積や固有値、確率の扱いに慣れているほど式を追いやすくなります。数学の足場が不安な場合は、機械学習に必要な数学の本 で線形代数と確率を先に補っておくと進みが速くなります。一方で、目次には特定の量子プログラミング環境の使い方を扱う節は見当たらないため、手元のコードで回路を動かすことを主目的にする人には、実装を中心にした入門書を併読するほうが目的に近づきます。内容は 2020 年の刊行時点までの研究の流れを整理したものなので、個々の手法のその後の展開は論文で追う前提で読むのが向いています。

機械学習 の側から量子計算に入りたい人、あるいは量子情報の側から学習モデルへの応用を探りたい人にとって、両方の入門から量子カーネル、変分回路、アニーリングまでを 1 冊の流れで見渡せる本書は、研究や技術調査を始める前に全体の地図を持つための投資になります。各章末の参考文献をたどれば、関心のあるテーマの原論文へそのまま進めます。

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