銀行とデザイン デザインを企業文化に浸透させるために

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銀行とデザイン デザインを企業文化に浸透させるためにの表紙
インターネット / WEB デザイン
著者:
金澤洋 / 金子直樹 / 堀 祐子(カナザワヒロシ / カネコナオキ / ホリ ユウコ)
出版社:
インプレス
出版日:
2022年11月22日
ISBN:
9784295015604
在庫:
在庫あり
4(15 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
WEB デザインインターネット・WEB デザインUX デザインUI デザインデジタルトランスフォーメーション企業文化インハウスデザイン金融業界デザイン思考グッドデザイン賞

なぜ注目されているか

総合2109位

書籍紹介

三井住友銀行 (以下、SMBC) は 2016 年からインハウスデザイナーを採用し、「UI/UX デザイン」という観点から銀行サービスを変革させ続けています。2019 年・2021 年にはグッドデザイン賞を受賞しました。本書は、銀行デジタルサービスのリニューアルを担当したインハウスデザイナー 3 名によるドキュメントです。デザインの必要性・重要性について社内から理解を得るまでの苦労から節目となるアプリのリニューアル、デザインによる DX を社内にどう浸透させているのか、といったデザイナーたちの体験をリアルに描いています。

技書の森解説

デザイン経営やデザイン思考を扱う本の多くはスタートアップや IT 企業を舞台にしますが、『銀行とデザイン デザインを企業文化に浸透させるために』 (金澤洋 / 金子直樹 / 堀祐子 著、インプレス、2022 年 11 月刊) の舞台は三井住友銀行です。版元の紹介によれば、三井住友銀行 (SMBC) は 2016 年からインハウスデザイナーを採用し、「UI/UX デザイン」という観点から銀行サービスを変革させ続けており、2019 年と 2021 年にはグッドデザイン賞を受賞しています。本書は、その銀行デジタルサービスのリニューアルを担当したインハウスデザイナー 3 名によるドキュメントで、英題は "#BANK DESIGN"、A5 判のビジネス書として刊行されました。IT 技術書ではなく、規制と慣行の厚い大企業の中でデザインを企業文化にどう根付かせたかを当事者が記録した実務記録です。

全 5 章の構成、1 人目のデザイナー採用からグループへの浸透まで

構成は全 5 章で、章題が示すとおり時間軸に沿って進みます。第 1 章「銀行のデザインシフト」は「SMBC が UX デザイナーを採用した理由」と「初のデザイナー採用 デザイナーと社員の戸惑い」という節から始まり、銀行が自前でデザイナーを持つと決めた背景と、受け入れる側の反応を扱います。第 2 章「チームとしての始動」では「デザイナーとプロジェクトの関わり方」「デザイナーのプレゼンスを上げるためのアクション」が並び、社内でデザイナーの居場所を作る段階が描かれます。第 3 章「デザインチームの足跡」は「三井住友銀行アプリのリニューアル」「コーポレートサイトのリニューアル」などの具体的なプロジェクトを、第 4 章「デザインチームの今」は「デザインシステムの構築」「SMBC グループへのデザイン浸透」などのチームの到達点を、第 5 章「これからのデザインチーム」は「企業がインハウスデザイナーを置く意義」「デザイナーとして意識していること」などを取り上げます。版元の紹介文は本書の流れを、デザインの必要性 / 重要性について社内から理解を得るまでの苦労、節目となるアプリのリニューアル、デザインによる DX を社内にどう浸透させているのか、という 3 つの局面で要約しています。書誌には参考文献の存在も記録されています。

銀行にインハウスデザイナーが要る背景と、組織に浸透させる難しさ

銀行の顧客接点は店頭や紙の帳票からスマートフォンアプリと Web へ移り、口座残高の確認や振込のような日常操作の UX が、そのままサービスの評価になる時代になりました。画面の設計を外部の制作会社に案件ごとに委ねる体制では、業務や規制の知識と利用者理解を一つの頭の中で突き合わせることが難しく、リリース後の継続的な改善も回りにくくなります。インハウスのデザイナーを置く意義はここにあり、複数のアプリや Web サイトに共通する部品と規則を整えた デザインシステム を構築できるのも、社内に恒常的なデザイン機能があるからです。一方で、デザインの価値は売上や件数のように短期の数字で示しにくく、意思決定の階層が多い組織では、なぜデザイナーが必要なのかを説明し続ける仕事そのものが大きな負担になります。本書の第 1 章と第 2 章がデザインの成果物ではなく採用の理由や社員の戸惑い、プレゼンスを上げるためのアクションに紙面を割いていることからも、この難しさが銀行という現場でどう現れたかが本書の主題の一つだと読み取れます。

著者 3 名の経歴と、当事者の記録として読む前提

著者 3 名はいずれも三井住友銀行に入行したデザイナーで、刊行当時の版元プロフィールによれば、金澤洋は武蔵野美術大学大学院工芸工業デザインコース (テキスタイルデザイン) を修了し、美術講師、造形作家、フリーの Web デザイナーを経て制作会社に入社、通信キャリアや省庁等の UI デザインを手がけ、ネット系銀行のオンサイト業務立ち上げ時から常駐して IB、アプリ等デザインを担当し、2016 年に三井住友銀行 1 人目のデザイナーとして入行した HCD-Net 人間中心設計専門家です。金子直樹は 2006 年に知人と起業して EC サイトの運営や Web サイト / アプリの企画 / 制作を担当し、その後デジタルマーケティング会社に入社し、Web サイトの企画 / 制作 / 運用業務を経て 2017 年に入行、UI/UX を専門領域として既存サービスの改善や新規プロダクトのデザインリードを担当し、社内へのデザイン浸透も行っています。堀祐子は 2011 年に ICT 企業に新卒入社して Web サイト構築や医療、公共交通機関の UI デザインを担当し、2015 年の海外留学、ワーキングホリデー後、2017 年に入行、銀行アプリや Web ページ、社内システムの UI/UX デザインを担当し、ユーザーテスト、UI 仕様設計など上流工程から、具体的なデザイン / ビジュアルの提案 / 制作を行う HCD-Net 人間中心設計専門家です。本書は汎用のフレームワークを提示する本ではなく、一つの銀行で起きたことを内側から書いた記録なので、読者は自社との条件の違いを意識しながら、転用できる打ち手を自分で抽出する読み方になります。

元が取れる読者と、別の本が向く読者

本書で元が取れるのは、金融や製造、インフラのような非 IT の大企業でデザイン組織の立ち上げやデザイナーの初採用を任された人、DX 推進の担当としてデザインで何が変わるのかを経営層に説明する言葉を探している人、そしてインハウスデザイナーとして非デザイン企業に入り、社内でのプレゼンスの作り方に悩んでいる人です。読み終えると、デザイナーを採用した後に社内で起きること、プロジェクトへの関わり方、デザインシステムやグループ浸透へ広げる順序について、先行事例に基づく見通しが持てます。一方で、目次と版元の紹介から分かるとおり、本書は UI 設計の技法やツール操作を教える教科書ではなく、デザイン思考のフレームワークを体系的に解説する本でもありません。手を動かすスキルを求める人には別の実務書が向きます。銀行という制約の多い組織でデザインを文化にまで育てた過程を、当事者の言葉で追いたい人にとって、本書は他に代わりの少ない 1 冊です。

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