AI vs.教科書が読めない子どもたちの表紙

AI vs.教科書が読めない子どもたち(エーアイタイキョウカショガヨメナイコドモタチ)

AI・機械学習
著者:
新井 紀子(アライ ノリコ)
出版社:
東洋経済新報社
出版日:
2018年02月02日頃
ISBN:
9784492762394
在庫:
在庫あり
4.27(702 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
AI教育読解力画像認識自然言語処理シンギュラリティ教育技術AIの限界教育改革コンピュータビジョン

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書籍紹介

東ロボくんは東大には入れなかった。 AI の限界ーー。しかし、”彼”は MARCH クラスには楽勝で合格していた!これが意味することとはなにか? AI は何を得意とし、何を苦手とするのか? AI 楽観論者は、人間と AI が補完し合い共存するシナリオを描く。しかし、東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国 2 万 5000 人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明する。 AI の限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか? 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。
はじめに

第 1 章 MARCH に合格ーー AI はライバル

AI とシンギュラリティ
偏差値 57.1

AI 進化の歴史

YOLO の衝撃ーー画像認識の最先端

ワトソンの活躍

東ロボくんの戦略

AI が仕事を奪う

第 2 章 桜散るーーシンギュラリティは SF

読解力と常識の壁ーー詰め込み教育の失敗
意味が理解しない AI

Siri (シリ) は賢者か?

奇妙なピアノ曲

機械翻訳

シンギュラリティは到来しない

第 3 章 教科書が読めないーー全国読解力調査

人間は「 AI にできない仕事」ができるか?
数学ができないのか、問題文を理解していないのか?--大学生数学基本調査

全国 2 万 5000 人の基礎的読解力を調査

3 人に 1 人が、簡単な文章が読めない

偏差値と読解力

第 4 章 最悪のシナリオ

AI に分断されるホワイトカラー
企業が消えていく

そして、 AI 世界恐慌がやってくる

おわりに

技書の森解説

「 AI が仕事を奪う」という不安と「 AI にできることは限られている」という楽観の両方に、実験と調査のデータで答えた本です。『 AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、国立情報学研究所教授で数理論理学を専門とする新井紀子氏が、東洋経済新報社から 2018 年 2 月に刊行した一般向けの単行本 (四六判 288 ページ) です。著者が 2011 年からプロジェクトディレクタを務めた人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」、通称・東ロボくんの到達点と、そこから浮かび上がった人間側の読解力の問題を 1 本の筋で貫き、 2018 年には本書で第 66 回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞しました。

東ロボくんが示した AI の境界線 (第 1 〜 2 章)

構成は全 4 章です。第 1 章と第 2 章は東ロボくんの実験報告を軸にした AI 論で、東ロボくんが東大合格には届かなかった一方で MARCH クラスの合格圏 (偏差値 57.1) に達していたという事実から出発します。この「できたこと」と「できなかったこと」の境界線を手がかりに、画像認識の YOLO やクイズ王に勝ったワトソン、機械翻訳といった刊行当時の主要技術がどのような原理で動き、なぜ意味の理解に至らないのかを平易に説明し、論理・確率・統計という数学の道具立てに載る処理しかできない AI にシンギュラリティは到来しない、と結論づけます。

読解力の危機へ反転する後半 (第 3 〜 4 章)

第 3 章で視点が反転します。東ロボくんの実験と並行して行われた、全国 2 万 5000 人を対象とする基礎的読解力の調査で、 3 人に 1 人が簡単な文章を読めていないという実態が示されるのです。著者は 2016 年から読解力を診断するリーディングスキルテストの研究開発を主導しており、係り受けや照応の解決といった、 AI が苦手とするのと同じ種類の基礎的読解で人間側もつまずいているという発見が本書の核心になっています。第 4 章は、 AI に代替されにくい仕事を担えるだけの読解力を持つ人が足りないまま雇用が分断されていく「最悪のシナリオ」を描き、教育への提言で締めくくられます。

大規模言語モデル時代に再読する価値

刊行は 深層学習 ブームの只中である 2018 年で、事例も画像認識や統計的機械翻訳が中心です。それでも中心命題である「 AI は意味を理解しているのか」という問いは、 2022 年以降に 大規模言語モデル が普及した局面でこそ改めて争点になったものであり、確率と統計でどこまでの振る舞いが作れて何が原理的に残るのかを自分の言葉で説明できるようになる価値は損なわれていません。 AI の内部原理を数式で学ぶ本ではないので技術者には物足りない箇所もありますが、非専門家に AI の射程を説明するための語彙を得る本としては、その平易さがむしろ武器になります。

向いている読者と使い方

想定読者は、 AI 導入の判断に関わるビジネスパーソン、読解力の問題に向き合う教育関係者、そして自分が扱う技術の社会的な位置づけを言語化したいエンジニアです。機械学習の実装手法やモデルの数理を学びたい人向けではなく、その用途には専門書を選ぶべきです。一方で、実験と調査という検証可能な裏づけを持った AI 論・教育論は多くありません。 AI をめぐる期待と不安を等身大に戻したい人なら、まず本書で土台を作ってから 各論の技術書 へ進むのが遠回りしない読み方です。

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