僕とアリスの夏物語 人工知能の, その先へ

ボクトアリスノナツモノガタリジンコウチノウノソノサキヘ

僕とアリスの夏物語 人工知能の, その先への表紙
AI / 機械学習
著者:
谷口 忠大(タニグチ タダヒロ)
出版社:
岩波書店
出版日:
2022年01月15日頃
ISBN:
9784000297097
シリーズ:
岩波科学ライブラリー 309
在庫:
在庫あり
3.75(8 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
人工知能機械学習認知科学ロボティクス発達心理学自然言語処理統計深層学習知識表現人間-機械インタフェース

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書籍紹介

小学生の悠翔のもとに突然やってきた謎の少女、アリス。まるで赤ちゃんのように何も知らなかったが、悠翔たちから多くを学んでいく。しかしそこに、怪しい影が忍び寄り……!? AI と共存する未来とはどういうものか。「発達する知能」は、いかに実現されるのか。小説と解説の合わせ技で、いざ、めくるめく知の融合体験へ!
第 1 話 訪れる者

第 1 話解説 人工知能の時代

「知能」って何だろう

人工知能技術は人間に近づいているのか?

「関数」としての人工知能

発達する心をつくる

第 2 話 物を調べる者
第 2 話解説 探索と物体概念の獲得

物体の概念とは何か?

「見て、触って、聞いて」知るロボット

「物体概念」の数理モデル

探索する幼児 vs 待っている人工知能

ロボットに好奇心をもたせる

「時々、ダメそうなことをやってみる」知的さ

第 3 話 言葉を覚える者
第 3 話解説 音素と語彙の獲得

言葉を聞きとるための知識

幼児は音素と単語を発見する

音列の統計情報をつかう

ロボットは単語を「発見」できるか?

幼児の音声認識にテキストはいらない

それは「クーラー」か、「スズシイ」か?

第 4 話 徘徊する者
第 4 話解説 移動と場所の学習

幼児はやがて歩き始める

身体そのものが「知的」である

柔らかいことの大切さ

「場所」の概念を理解する

本物の言語使用に向き合う

第 5 話 街に出る者
第 5 話解説 社会の中での言語獲得と理解

「はじめてのおつかい」からサービスロボットを考える

「統語的」関係から意味を定義する

分布意味仮説ーー単語の並びに潜む意味

データベース的な知識を使うロボット

第 6 話 苦悩する者
第 6 話解説 人工知能と社会構造の変容

人工知能に仕事を奪われる?

技術が発展すると「仕事」は変わる?

インターネットと人工知能の同盟関係

第 7 話 衝突する者
第 7 話解説 人工知能との関係性と倫理

人間のふりをするロボット

会話の文脈理解は難しい

関係性を育む

「ロボット工学三原則」って言われても

人工知能は規範をどう学ぶか?

ロボットと生きるための倫理

第 8 話 未来に向かう者
第 8 話解説 発達する自律的な人工知能の創成

自律的なロボットを創る

人工知能の感情と意識

アリスが「人間」になった理由

プロジェクト・アリス

引用文献

技書の森解説

人間の子どもは、誰かに正解を一つずつ教えられなくても、物に触れ、音を聞き、歩き回るうちに言葉と世界の仕組みを身につけていきます。『僕とアリスの夏物語 人工知能の, その先へ』 (谷口 忠大 著、岩波書店、岩波科学ライブラリー 309、2022 年 1 月発売) は、この「発達する知能」がいかに実現されるのかを、小説と解説を交互に配して描く本です。小学生の悠翔のもとに突然やってきた謎の少女アリスは、赤ちゃんのように何も知らない状態から悠翔たちに多くを学んでいき、その歩みに合わせて人工知能研究の解説が続きます。物語を入口にして、ロボットが自分で学ぶ知能の研究に触れたい人に向いた一冊です。

全 8 話と解説の構成、人工知能の時代から自律的な人工知能の創成まで

本書は第 1 話「訪れる者」から第 8 話「未来に向かう者」までの 8 つの話で構成され、どの話の後にも解説が置かれています。第 1 話解説「人工知能の時代」で知能とは何かを問い直したあと、第 2 話解説「探索と物体概念の獲得」、第 3 話解説「音素と語彙の獲得」、第 4 話解説「移動と場所の学習」、第 5 話解説「社会の中での言語獲得と理解」と、アリスの成長の段階に沿って研究の話題が進みます。後半は第 6 話解説「人工知能と社会構造の変容」で仕事と技術の関係を、第 7 話解説「人工知能との関係性と倫理」で人間のふりをするロボットや規範の学習を扱い、第 8 話解説「発達する自律的な人工知能の創成」では人工知能の感情と意識に触れて締めくくられます。巻末には引用文献が付いています。

記号創発ロボティクスの視点、身体と経験から言葉の意味を学ぶ

刊行時の著者紹介によると、著者は記号創発システムという概念を提案し、記号創発ロボティクスという研究分野を創出した研究者です。この分野の問いは、言葉や概念をあらかじめ人間が書き込むのではなく、ロボットが自分の身体で集めた視覚や触覚、聴覚の情報から、物のまとまりや単語を自ら見つけ出せるかという点にあります。正解の付いた大量のデータを与えて学ばせる方式と比べると、手がかりは少なく、何を同じ物とみなすかの基準もロボット自身が組み立てなければなりません。書き起こした文章を大量に読ませて言葉を扱う 自然言語処理 の多くの手法とは、ここで出発点が分かれます。第 3 話解説には「幼児の音声認識にテキストはいらない」という節も置かれています。一方で第 5 話解説では、単語の並びに意味が潜むという分布意味仮説も取り上げられています。周囲に現れる単語から意味を捉えるこの考え方は、単語を数値の並びで表す 埋め込みベクトル の土台にもなっており、身体の経験に根ざした意味と、文章の統計から得られる意味をどう結びつけるかを考える手がかりになります。

数理モデルの節も含む一般向けの本、読む前に知っておきたいこと

本書は版元の分類 (C コード) で一般の読者向けとされ、小説の各話を入口に読み進める作りです。ただし解説には「物体概念」の数理モデルを扱う節もあります。目次には実装の手順やプログラムを扱う章は無いため、機械学習の手法を自分で書けるようになりたい人には目的が合いません。その場合は 機械学習の技術書の選び方 から手を動かす本を選ぶほうが近道です。また刊行は 2022 年 1 月で、人工知能をめぐる技術と社会の話題は刊行時点の状況を前提に書かれています。

物語から AI 研究の問いに触れたい読者に向く理由

本書は、物体や言葉の意味をどう獲得するかという抽象的な研究の問いを、アリスの振る舞いとして具体的に思い描ける形で示します。刊行翌月の 2022 年 2 月 12 日には、毎日新聞の朝刊に中村桂子氏による書評が掲載されました。対話する人工知能の性能の話とは別の角度から、知能が育つとはどういうことかを考えてみたい人や、エンジニアとして日々扱う技術の背後にある問いを家族や友人と共有する糸口を探している人など、物語と解説を行き来しながら読み進めたい人に向く一冊です。

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