スマートフォンの環境経済学

スマートフォンノカンキョウケイザイガク

スマートフォンの環境経済学の表紙
ハードウェア
著者:
吉田文和(ヨシダ フミカズ)
出版社:
日本評論社
出版日:
2017年08月29日頃
ISBN:
9784535558854
在庫:
在庫あり
0
中級者向け
モバイルハードウェア環境経済学情報通信技術リサイクル労働問題環境汚染レアアースコバルト採掘ハイテク労災廃棄物管理サプライチェーン

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書籍紹介

はじめに

第 1 部 情報通信技術と環境問題

第 1 章 スマートフォンを解体する

第 2 章 情報通信技術と環境問題の経済学

BOX 電気電子機器廃棄物とは (GE05 による定義)

第 2 部 生産編

第 1 章 マレーシアのレアアースによる放射能汚染

BOX 利潤率と不変資本充用上の節約

第 2 章 スマートフォンと児童労働による充電電池用コバルト採掘

第 3 章 サムスン電子で起きたハイテク労災問題

第 4 章 シャープを傘下に収めた鴻海がかかえる労働問題と環境問題

第 5 章 IBM 誕生の地で継続する有機溶剤による汚染

第 6 章 台湾の液晶工場による廃水汚染

第 7 章 半導体生産による労働安全問題ーー生殖障害と発がん

BOX 携帯電話と発がんについての国立がん研究センターの見解

第 3 部 使用編

第 1 章 情報通信技術のエネルギー消費

第 2 章 携帯電話とスマートフォンの環境負荷

BOX スマートフォン事故 5 年で 239 件 重いやけどや火災に発展例も

第 4 部 リサイクルは国境を越える

第 1 章 電気電子機器廃棄物の輸出と環境影響ーー中国

第 2 章 インドの電気電子機器廃棄物問題

第 3 章 グローバルな携帯電話・スマートフォンの生産、リユース、リサイクル

BOX 世界で拡大する中古スマートフォン市場

第 4 章 電気電子機器廃棄物と拡大生産者責任 (EPR)

BOX 途上国に広がる「モバイル送金」サービス

第 5 部 展望ーーグローバルな情報通信と責任ある技術

あとがき

参考文献

用語解説

索引

技書の森解説

スマートフォンを作り、使い、捨てる過程で、人間と環境にどのような影響が及んでいるのかを、製品ライフサイクルに沿ってグローバルな視点から分析した書籍が『スマートフォンの環境経済学』です。著者は吉田文和氏で、刊行時の肩書は愛知学院大学経済学部教授、版元は日本評論社、書店発売日は 2017 年 8 月 29 日です。端末の操作や開発の手法を学ぶ本ではなく、情報通信機器の背後にある資源の採掘、工場の労働と汚染、使用時の電力、使用済み機器の行き先を、経済学の側から扱う専門書です。

スマートフォンの解体から責任ある技術の展望まで、5 部の構成

目次は「はじめに」に続く 5 部で構成されています。第 1 部「情報通信技術と環境問題」は、スマートフォンを解体する章と、情報通信技術と環境問題の経済学の章の 2 章で全体の枠組みを示します。第 2 部「生産編」は 7 章からなり、マレーシアのレアアースによる放射能汚染、児童労働による充電電池用コバルトの採掘、サムスン電子で起きたハイテク労災、鴻海が抱える労働問題と環境問題、IBM 誕生の地で続く有機溶剤による汚染、台湾の液晶工場による廃水汚染、半導体生産による労働安全問題を取り上げます。

第 3 部「使用編」は情報通信技術のエネルギー消費と、携帯電話とスマートフォンの環境負荷の 2 章です。第 4 部「リサイクルは国境を越える」は、中国への電気電子機器廃棄物の輸出と環境影響、インドの電気電子機器廃棄物問題、携帯電話とスマートフォンの生産 / リユース / リサイクルのグローバルな流れ、電気電子機器廃棄物と拡大生産者責任 (EPR) の 4 章です。最後の第 5 部は展望の部で、グローバルな情報通信と責任ある技術を論じ、巻末にあとがき、参考文献、用語解説、索引が付きます。章や部の後には BOX と題した囲み記事が置かれ、電気電子機器廃棄物の定義、携帯電話と発がんについての国立がん研究センターの見解、スマートフォンの事故、中古スマートフォンの市場、途上国に広がるモバイル送金サービスなどを補っています。

部品と素材から見たスマートフォンの環境負荷

スマートフォンの充電池にはリチウムイオン電池が使われ、その正極の材料にはコバルトを含むものが多くあります。小型のスピーカーや振動モーターの磁石にはネオジムなどのレアアースが使われ、液晶などの表示部や演算と記憶を担う半導体チップの製造工程では、大量の水や薬品、有機溶剤が使われます。経済学では、取引の当事者以外に及ぶ費用を外部不経済と呼びます。第 2 部が取り上げる事例は、採掘地、部品と組み立ての工場、半導体と液晶の工場という、供給の連なりの異なる段階にまたがっています。

使用時の電力と、国境を越える電子機器廃棄物

使う段階の環境負荷は、端末そのものの充電に使う電力だけではありません。通話やデータ通信は基地局やネットワーク機器、データセンターの電力に支えられており、第 3 部は情報通信技術全体のエネルギー消費と、携帯電話とスマートフォンの環境負荷を扱います。廃棄の段階では、使用済みの電気電子機器が再利用や資源回収の名目で国境を越えて運ばれ、輸入先で十分な設備のないまま解体や焼却が行われると、重金属や有害物質による汚染と健康被害につながります。拡大生産者責任は、製品が使用済みになった後の回収やリサイクルの責任を生産者にまで広げる考え方で、第 4 部の最後の章が電気電子機器廃棄物と結び付けてこれを論じます。

経済学の専門書としての位置づけ、向く読者

版元の分類コードは専門書の経済 / 財政 / 統計の区分で、NDL の分類は NDC 519 (環境工学 / 公害)、件名は環境経済学です。スマートフォンの仕組みや使い方の解説はなく、扱うのは資源と労働、汚染、電力、廃棄物をめぐる社会の側の問題です。刊行は 2017 年で、取り上げる事例と議論は刊行時点までのものです。電子機器の部材の調達や使用済み製品の回収に関わる仕事の人、情報通信機器と環境問題の関係を経済学の側から知りたい学生や研究者に向く内容で、巻末には用語解説と参考文献が付いています。

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