アジャイルサムライの表紙

アジャイルサムライ(アジャイル サムライ)

達人開発者への道

ソフトウェア工学・設計
著者:
ジョナサン・ラスマセン/西村直人(ラスマセン,ジョナサン/ニシムラ,ナオト)
出版社:
オーム社
出版日:
2011年07月
ISBN:
9784274068560
在庫:
在庫あり
4.43(187 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
アジャイルスクラムソフトウェア開発プロジェクト管理顧客満足度チームワークイテレーション継続的インテグレーションデリバリーソフトウェアエンジニアリング

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ソフトウェア工学・設計
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書籍紹介

アジャイルサムライーそれはソフトウェアを顧客に届ける猛々しきプロフェッショナルだ。本書では、圧倒的なアジャイルプロジェクトの姿を見せる。

技書の森解説

『アジャイルサムライ 達人開発者への道』は、アジャイル開発をこれから現場に取り入れる人に向けて、価値観の土台からプロジェクトの立ち上げ・計画づくり・運営・技術プラクティスまでを一気通貫で語る入門書です。著者は Jonathan Rasmusson 氏。原書 The Agile Samurai (Pragmatic Bookshelf ・ 2010 年) を西村直人氏と角谷信太郎氏が監訳し、近藤修平氏と角掛拓未氏の翻訳で 2011 年 7 月にオーム社から刊行されました。「マスターセンセイ」との対話を交えたユーモラスな体裁ながら、中身は顧客に価値ある成果を届け続けるための足場固めであり、日本の開発現場で長く 読み継がれてきた定番書 です。

インセプションデッキの出典としての価値

本書の名前を広めた立役者はインセプションデッキです。プロジェクトを始める前にチームと関係者が「我われはなぜここにいるのか」という問いから、エレベーターピッチ、パッケージデザイン、やらないことリストといった課題に順に答え、目的と境界線についての合意を作る手法で、第 3 章と第 4 章でその仕組みと課題一覧が解説されます。日本語圏でインセプションデッキという言葉が使われるとき、出典としてまず挙がるのが本書です。キックオフ時の期待の食い違いが後から効いてくる痛みを知っている人なら、この 2 つの章だけでも読む価値があります。

全 6 部の構成と息の長さの理由

構成は 6 部立て (第 VI 部は付録) です。第 I 部でアジャイル開発の価値観 (価値ある成果を毎週届ける・「完了」とは完了のことだ・ 3 つの真実) と、自己組織化や職能横断型チームというチーム論を押さえ、第 II 部の方向づけに続いて、第 III 部でユーザーストーリーの集め方・見積り・計画づくり、第 IV 部でイテレーションの運営と意思疎通、現場の状況の見える化、第 V 部でユニットテスト・リファクタリング・テスト駆動開発・ 継続的インテグレーション という技術の基礎体力を扱います。個別の手法の手順書ではなく「なぜそうするのか」から語る書き方で、スクラムや XP など特定のフレームワークに縛られない記述になっているのが息の長さの理由です。

2011 年刊の時代前提と類書との使い分け

一方で、本書が 2010 年前後の技術環境を前提にしていることは知って読むべきです。刊行後にスクラムガイドは 2020 年改訂版まで版を重ねて用語や役割の定義が変わり、継続的インテグレーションの道具立ても、クラウドのマネージド CI が当たり前になった 2020 年代とは様変わりしました。第 V 部の道具に関する記述は当時の文脈込みで読む必要があります。それでも本書の主戦場は道具ではなく原則です。動くソフトウェアを毎週届ける、完了の定義を曖昧にしない、状況を隠さず見せて期待を調整する。この骨格は開発環境が何世代変わっても効き続けるもので、 古い本 を「当時の前提を差し引いて読む」訓練としても得るものがあります。

類書との使い分けも明確です。監訳者の西村直人氏自身が共著した『 SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 』増補改訂版 (翔泳社・ 2020 年) は、スクラムという特定フレームワークの運用をこれから始める人の目線で解説する本で、スクラムイベントを回す実務にはこちらが直接的です。対して本書は、スクラムに限らないアジャイルの原則と、開始前の期待合わせから技術プラクティスまでの全体観を与える本です。「スクラムのやり方」を知りたいなら前者、「そもそもアジャイルで何が変わるのか・何から始めるのか」を腹落ちさせたいなら本書が先に来ます。

向いている読者と買いどき

プログラミングの深い前提知識は不要で、第 V 部を除けばマネージャーや企画職、開発の依頼側でも読み通せます。向かないのは、認定資格の試験対策として 2020 年代のスクラムの正確な定義を求める人や、特定ツールの設定手順を期待する人です。買って元が取れるのは、初めてアジャイル開発のチームに加わる人、「アジャイルでやろう」と決まったものの何から手を付けるか迷っているリーダー、そして外注や社内開発の発注側としてプロジェクトに深く関わることになった人です。読み終えると、キックオフで聞くべき手ごわい質問の型と、進捗を正直に見せながら期待を調整する感覚が手に入ります。刊行年を差し引いてもなお、アジャイルの最初の一冊としての座は揺らいでいません。

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