エンジニアのための図解思考再入門講座

エンジニア ノ タメノ ズカイ シコウ サイニュウモン コウザ

情報の“本質”を理解するための実践テクニック

エンジニアのための図解思考再入門講座の表紙
エンジニアのキャリア / 思考
著者:
開米瑞浩(カイマイ, ミズヒロ)
出版社:
翔泳社
出版日:
2010年10月
ISBN:
9784798122755
在庫:
在庫あり
4.42(12 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
図解思考情報整理ドキュメント作成コミュニケーションスキルエンジニア向けビジュアル学習問題解決認知科学知識管理プロフェッショナルスキル

なぜ注目されているか

言及数
1239位
総合2019位 ↓ 2 ランクダウン 言及 1 件

書籍紹介

エンジニアの情報理解・伝達のスキルを飛躍的に向上する指南書が遂に登場! 各種ドキュメント・会話・思考など、さまざまな情報を“図解”して整理し、その本質を理解するノウハウを伝授します。

技書の森解説

『エンジニアのための図解思考 再入門講座』 (開米瑞浩 著、翔泳社、2010 年 10 月刊) は、副題に「情報の“本質”を理解するための実践テクニック」を掲げた A5 判の指南書です。版元の紹介文が対象として描くのは、システム開発の現場で各種ドキュメントや会話から情報を得て、それを理解し整理する必要のあるエンジニアで、この「技術情報の理解と伝達」のスキルを、読解力 / 図解力の研修講師として豊富な経験を持つ著者が「図解思考」のノウハウとして手ほどきします。複雑な情報を図解することで情報の「関係」「プロセス」「パターン」や、間違っている部分、足りない部分、情報からだけでは見えない部分を見つける力を、豊富な事例と練習問題で鍛える構成です。

全 15 章の構成、「ラベル」と「表」から「0 次情報」まで

構成は全 15 章で、多くの章に練習問題とその解答の節が置かれています。第 1 章「図解はなぜ必要か?」と第 2 章「図解力を伸ばすコツ」で導入したあと、第 3 章は「ラベル」で問題を一気に単純化する方法、第 4 章は「表」があなたの思考地図になるという考え方、第 5 章は「仮説思考」で発想を引き出す方法を扱い、範囲を広げてみる、つなげてみる、すでにわかっている要素を削ってみるという 3 つの図解思考法や、静的構造と動的構造の区別が節題に並びます。第 6 章から第 9 章は、エンジニア同士の議論を図解で論点整理してプロセスに関する共通認識を作ること、現実世界のユーザーの心理状態をイメージすること (時間軸は MECE になる、という節があります)、ロジックの型を知ること、情報の「粒度」を意識することがテーマです。後半の第 10 章から第 15 章は、論理思考の根っこを「0 次情報」と身体感覚に求める章、脳内イメージ操作能力を鍛える章、1 日 3 分見出しをつけて要約する習慣、わかりにくい文章はとりあえず「分ける」という手法、問題の解決策をゼロから考える章、そしてモチベーションを上げるヒントで締めます。

図を描く技術ではなく、情報を構造化する思考の技術

エンジニアの図が伝わらない原因の多くは、描画の巧拙ではなく、図にする前の段階で情報の切り分けができていないことにあります。何と何が関係しているのか、どの順序で進むプロセスなのか、繰り返し現れるパターンは何かを言葉で切り出し、ラベルを付けて表の軸に置く作業は、設計書やレビュー資料を書く前に頭の中で行う情報の構造化そのものです。本書の目次に並ぶ「ラベル」「表」「粒度」「ロジックの型」という道具は、この構造化を手順として練習するためのもので、たとえば情報の粒度をそろえる考え方は、抽象度の異なる項目を同じ箱に並べてしまう設計文書の典型的な読みにくさに直結する論点です。静的構造と動的構造を分けて考える節や、プロセスモデルを考える節は、ソフトウェア設計で「何があるか」と「どう動くか」を別の図に描き分ける一般的な原則と同じ発想に立っており、モデリングの記法を学ぶ前段階の思考訓練として位置づけられます。0 次情報から得られる身体感覚が論理思考には不可欠で、2 次情報は 0 次情報を解釈するときに役に立つものだという章の組み立ては、ドキュメントの文言だけを頼りに理解した気になってしまう危うさへの処方でもあります。

2010 年刊の本を読む前提知識と、向かない使い方

前提知識として特定のプログラミング言語やツールの経験は求められず、目次にも作図ソフトやモデリングツールの名前は登場しません。必要なのは、練習問題に自分で答えを書いてから解答の節を読む時間です。一方で、2010 年刊のため事例や語り口は刊行時点の開発現場を前提にしており、UML やアーキテクチャ図の記法そのもの、あるいはドキュメントのテンプレートや作図ツールの使い方を知りたい人には向きません。本書が鍛えるのは記法の手前にある情報の分解と整理の力なので、記法を学ぶ本とは補完関係にあります。文章側の表現技術については テクニカルライティング の観点とも重なりますが、本書は文章術の本ではなく、見出しをつけて要約する、わかりにくい文章は分けるといった章も、図解思考の一部として扱われています。

元が取れるのは、設計レビューで図の意図が伝わらなかった経験や、要件定義 の打ち合わせで話が噛み合わないまま終わった経験があり、その原因を自分の情報整理の仕方に求めて鍛え直したいエンジニアです。読み終えたときに手元に残るのは特定の図の描き方ではなく、ドキュメントや会話から得た情報にラベルを付け、表に置き、粒度をそろえて本質を取り出す手順で、これは開発言語や作図ツールが変わっても使い続けられる技術です。図解を自己流で続けてきた人が土台から見直す再入門の一冊として、堅実な選択です。

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