量子コンピューティング

リョウシコンピューティング

基本アルゴリズムから量子機械学習まで

量子コンピューティングの表紙
クラウド / インフラ / DevOps
著者:
情報処理学会出版委員会 / 嶋田義皓(ジョウホウショリガッカイシュッパンイインカイ / シマダ ヨシアキ)
出版社:
オーム社
出版日:
2020年11月09日頃
ISBN:
9784274226212
在庫:
在庫あり
4(1 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
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書籍紹介

これから必ずくる量子コンピューティングの時代に備えるためのバイブル
本書は、IT のプログラマやエンジニアを主な読者対象として、その方々にとって特に重要な量子コンピューティングの基礎をわかりやすく解説した書籍です。

量子コンピュータについては、多くの人がクラウド越しで実物に触れられるようになった今でも、物理の専門書から学ぶかチュートリアルやハンズオンのウェブ記事を読んで勉強するかしかありません。これから量子の力をフル活用できる人や、量子情報の考え方を利用してコンピュータサイエンスをよくしていく人材が必要になるというのに、入門書と専門書の間には大きな隔たりがあります。

本書はこれから必ずくる量子コンピュータの時代で活躍されるであろう IT のプログラマやエンジニアの皆様にとって、特に知っておくべき概念をできる限り網羅しています。量子コンピュータの背景、その原理や応用についても高校数学で学んだ内容を起点に数式も示しつつ、しっかりと解説しています。

技書の森解説

量子コンピューターを学ぼうとすると、物理の専門書に進むか、クラウドの実機を動かすハンズオン記事を読むかの二択になりがちです。『量子コンピューティング』 (嶋田 義皓 著、情報処理学会出版委員会 監修、オーム社、2020 年 11 月刊) は、その入門書と専門書の隔たりを埋めることを狙い、IT 分野のプログラマやエンジニアを主な読者として量子コンピューティングの基礎をまとめた書籍です。副題は「基本アルゴリズムから量子機械学習まで」で、版元は量子コンピューターの背景、原理、応用を、高校数学で学んだ内容を起点に数式も示しながら解説すると案内しています。

全 9 章の構成、量子ビットから量子アルゴリズムまで

1 章「なぜ量子コンピュータ?」は、とても難しい問題を高速に解くという動機とポストムーア時代という位置づけから入り、量子チューリングマシンから NISQ 時代までの歴史を整理したうえで、今の量子コンピューターで何ができるかを確かめます。2 章「量子コンピュータの基本」は量子ビット、ブロッホ球とブラケット記法、1 量子ビットゲートと 2 量子ビットゲート、量子回路の書き方へ進み、Toffoli ゲートを量子コンピューター版の NAND ゲートとして扱う節、足し算回路、万能量子計算、量子もつれとテレポーテーションの節が続きます。この章はデータの入力にも踏み込み、基底エンコーディング、振幅エンコーディング、量子ランダムアクセスメモリ (QRAM) を扱います。3 章「量子計算の基本パッケージ」はアダマールテスト、スワップテスト、量子フーリエ変換、量子位相推定といった部品をそろえる章で、4 章「量子アルゴリズム」がそれらを組み合わせます。4 章にはショアのアルゴリズムによる 21 の素因数分解、水素分子を例にした量子化学計算、グローバーの検索アルゴリズムと充足可能性問題、量子線形回帰や量子サポートベクタマシンなどの量子機械学習、計算複雑性理論と量子アルゴリズムの関係が並びます。

NISQ と誤り訂正、ソフトウェアとハードウェアの両面

後半は、手元にある装置で何を動かすかと、将来の大規模な装置をどう作るかの両方を扱います。5 章は NISQ 向けの量子アルゴリズムとして VQE と量子化学計算、QAOA と組合せ最適化、パラメーター付き量子回路による機械学習と勾配の計算を取り上げます。6 章「量子コンピュータのエラー訂正」はパリティチェックからショアの符号、スタビライザ形式、魔法状態、表面符号、しきい値定理、Lattice surgery による論理ゲート操作までを追います。7 章「量子コンピュータのプログラミング」は抽象化レイヤー、命令型と関数型の量子プログラミング言語、量子コンパイラー、量子ソフトウェア開発基盤を、8 章「量子コンピュータのアーキテクチャ」は量子ビットを実現する技術、マイクロアーキテクチャ、2048 ビットの数の素因数分解に必要なシステムを考える節を含みます。最後の 9 章は量子超越の実験検証、ベンチマーク、量子インターネットなど、技術の進み方をどう見ていくかで閉じます。

この並びには技術上の理由があります。量子コンピューター の量子ビットは雑音に弱く、誤り訂正を持たない中規模の装置で動かせる計算は限られます。ショアのアルゴリズムのように理論上の高速化がはっきりしている アルゴリズム の多くは、誤り訂正を備えた大規模な装置を前提にしています。量子回路で 機械学習 を高速化するという期待も、データをどう量子状態へ入力するかという問題と切り離せません。本書が 2 章でデータの入力と前処理に節を割き、6 章以降で誤り訂正とアーキテクチャを扱う構成は、アルゴリズムの期待とハードウェアの制約を一冊の中で突き合わせる意図と読めます。刊行は 2020 年 11 月なので、NISQ や量子超越をめぐる記述は刊行時点の状況を前提に読む必要があります。

中級の若手技術者と大学院生に向く理由

版元はおすすめの読者を、システムエンジニアリングや情報工学の若手技術者 / 研究者と情報工学系の大学院生とし、読者の段では中級を示しています。高校数学が起点とはいえ、量子ビットや量子ゲートを扱う以上、ベクトルと行列、複素数、確率の計算を式で追う場面は避けられません。特定の開発キットを手元で動かすことだけが目的なら、そのキットの公式チュートリアルのほうが早道です。一方で、量子回路の部品からアルゴリズム、誤り訂正、プログラミング言語、アーキテクチャまでの全体像を一度つかみ、ニュースや論文で出会う用語がどの層の話なのかを自分で判断できるようになりたいエンジニアや学生にとって、本書は投じた時間に見合う見取り図になります。

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