暗号ハードウェアのセキュリティ
アンゴウハードウェアノセキュリティ
- 著者:
- 崎山 一男 / 菅原 健 / 李 陽(サキヤマ カズオ / スガワラ タケシ / リ ヤン)
- 出版社:
- コロナ社
- 出版日:
- 2019年05月23日頃
- ISBN:
- 9784339028942
- 在庫:
- 在庫あり
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書籍紹介
本書は, 社会インフラの安全・安心を支えるハードウェアのセキュリティ技術を基礎から解説する。暗号処理を行うハードウェアの物理攻撃や安全性解析を中心に, セキュリティエンジニアに必要となる知識を理論から実践まで網羅する。
★主要目次★
1. 暗号技術と暗号ハードウェアへの脅威
 1.1 はじめに
 1.2 暗号技術の概要
 1.3 ハードウェア実装される代表的な暗号プリミティブ
 1.4 暗号アルゴリズムの安全性
 1.5 暗号ハードウェアへの脅威
2. 共通鍵暗号の実装
 2.1 共通鍵暗号方式
 2.2 AES 暗号
 2.3 有限体の演算
3. 公開鍵暗号の実装
 3.1 公開鍵暗号方式
 3.2 基本的な算術演算
 3.3 基本的な剰余演算アルゴリズム
 3.4 RSA 暗号の実装
 3.5 ECC の実装
4. 暗号モジュールへの脅威と対策
 4.1 物理攻撃とは
 4.2 暗号モジュールとその利用例
 4.3 敵性の利用環境
 4.4 物理攻撃への対策
5. サイドチャネル攻撃
 5.1 サイドチャネル攻撃とは
 5.2 ブロック暗号へのサイドチャネル攻撃の概要
 5.3 リーケージの発生メカニズムとモデル化
 5.4 信号処理と統計
 5.5 相関電力解析
 5.6 対策法
6. フォールト攻撃
 6.1 フォールト攻撃の概要
 6.2 RSA 暗号へのフォールト攻撃
 6.3 AES 暗号へのフォールト攻撃
7. マイクロアーキテクチャへのサイドチャネル攻撃
 7.1 攻撃の全体像
 7.2 キャッシュ攻撃の例
 7.3 アクセスベースのキャッシュ攻撃
技書の森解説
『暗号ハードウェアのセキュリティ』 (崎山 一男、菅原 健、李 陽 著、コロナ社、2019 年 6 月刊) は、暗号処理を行うハードウェアへの物理攻撃と安全性解析を中心に、ハードウェアのセキュリティ技術を基礎から解説する教科書です。版元のまえがきは対象を学部生、大学院生、セキュリティエンジニアと研究者とし、計算機アーキテクチャ、暗号理論、数論アルゴリズムの基礎知識を前提にすると明記しています。同じまえがきには電気通信大学の授業「ハードウェアセキュリティ」のティーチングアシスタントからのフィードバックへの謝辞があり、2026 年 10 月時点の版元の著者欄では、3 名とも電通大の教授と准教授と表記されています。
全 7 章の構成、暗号の実装から物理攻撃とキャッシュ攻撃まで
第 1 章「暗号技術と暗号ハードウェアへの脅威」で公開鍵暗号、共通鍵暗号、暗号学的ハッシュ関数、乱数生成器というハードウェアで実装される暗号プリミティブを整理したあと、第 2 章「共通鍵暗号の実装」と第 3 章「公開鍵暗号の実装」で実装そのものに入ります。第 2 章は AES のハードウェア実装と、合成体や正規基底を用いた S-box の実装まで、第 3 章は加算器や乗算器の基礎からモンゴメリー剰余乗算、べき剰余演算の方式、素体 GF (p) 上と 2 の拡大体上の楕円曲線暗号 (ECC) の実装までを扱います。後半は第 4 章「暗号モジュールへの脅威と対策」、第 5 章「サイドチャネル攻撃」、第 6 章「フォールト攻撃」、第 7 章「マイクロアーキテクチャへのサイドチャネル攻撃」と続きます。7 章すべての末尾に引用 / 参考文献があり、巻末には演習問題の解答と索引が付きます。
理論上の安全性と実装の安全性が別の問題になる理由
暗号化 のアルゴリズムは、攻撃者が入力と出力しか観測できないという前提のもとで安全性が評価されます。ところが実際の回路は、処理するデータに応じて消費電力や電磁波、処理時間がわずかに変わり、外部から誤動作を誘発されることもあります。まえがきが述べるとおり、理論上の想定と物理的な現実とのすき間を突くのがサイドチャネル攻撃を代表とする物理攻撃です。どの演算がどの物理量に表れるかは、演算器の構成を知らなければ評価できません。第 2 章と第 3 章は演算器の構成やべき剰余演算の方式まで扱います。漏えいはノイズに埋もれた小さな偏りとして現れ、統計的に取り出して初めて意味を持ちます。第 5 章に平均と分散、共分散と相関係数、信号雑音比、仮説検定といった統計の節が置かれており、こうした道具が同じ章の相関電力解析を読み解く前提になります。対策の節ではプロービングモデルと Threshold Implementation が取り上げられています。
マイクロアーキテクチャの共有資源という論点
第 7 章は対象を専用の暗号回路から汎用の CPU へ広げ、キャッシュの基礎、キャッシュヒットとキャッシュミス、キャッシュラインといった仕組みから説き起こします。キャッシュは複数のプログラムが共有する資源であるため、あるプログラムのメモリアクセスの痕跡が、別のプログラムから観測できる時間差として残ります。節題にはトレースベースと時間ベースのキャッシュ攻撃、Prime+Probe 攻撃、Flush+Reload 攻撃、投機的実行とキャッシュ攻撃が並びます。第 6 章のフォールト攻撃も含め、本書が扱うのは攻撃の原理と対策の考え方であり、特定の製品を対象にした手順書ではありません。
前提知識と向いている読者、暗号実装に関わる学生と技術者へ
まえがきが挙げる前提のうち、数論アルゴリズムと計算機アーキテクチャの基礎は、第 3 章の剰余演算と第 7 章のキャッシュの節で特に使われます。暗号を使う側としてプロトコルや製品の選び方を知るための本ではありません。一方で、暗号回路の設計や評価、組込み機器のセキュリティ、あるいはハードウェアセキュリティの研究に進もうとする学生と技術者に向けて、演算器の実装から統計的な解析、対策の考え方までを一冊で通し、各章の参考文献から原論文へたどれる教科書です。
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