ソーシャルメディア・プリズム

ソーシャルメディアプリズム

SNS はなぜヒトを過激にするのか?

ソーシャルメディア・プリズムの表紙
その他
著者:
クリス・ベイル / 松井信彦(クリスベイル / マツイノブヒコ)
出版社:
みすず書房
出版日:
2022年06月03日頃
ISBN:
9784622090830
在庫:
在庫あり
3.43(10 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
ソーシャルメディア分析データサイエンス心理学政治的部族主義誤情報ネットワーク分析行動研究社会学データビジュアライゼーションアルゴリズム

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書籍紹介

「本書は、データに基づく解決策が私たちを崖っぷちから救い出してくれるという希望を与えてくれる」
J・ゴルベック (『サイエンス』誌)

「エコーチェンバーが作用しているという仮説に、スマートかつ魅力的に挑戦している」
F・ブルニ (『ニューヨーク・タイムズ』紙)

「ベイルによる発見は、社会の成り立ちについての興味深い結論を教えてくれる」
N・ヘラー (『ニューヨーカー』誌)

「われわれのチームは、何千何万というソーシャルメディア・ユーザーの複数年にわたる行動を記述した億単位のデータポイントを収集してきた。自動化されたアカウントを使って新実験を行ったり、外国による誤情報キャンペーンが与える影響について先駆けとなる調査を実施したりしてきた」
「その真実とは、ソーシャルメディアにおける政治的部族主義の根本原因が私たち自身の心の奥底にあることだ。社会的孤立が進む時代において、ソーシャルメディアは私たちが自身をーーそして互いをーー理解するために使う最重要ツールのひとつになってきた。私たちがソーシャルメディアにやみつきなのは、人間に生得的な行動、すなわち、さまざまなバージョンの自己を呈示しては、他人がどう思うかをうかがい、それに応じてアイデンティティーを手直しするという行動を手助けしてくれるからである。ソーシャルメディアは、各自のアイデンティティーを屈折させるプリズムなのだーーそれによって私たちは、互いについて、そして自分についての理解をゆがめられてしまう」 (本文より)

計算社会科学 Computational Social Science の最先端を走る研究者が、政治的分極化への処方箋を提示する。

1 エコーチェンバーの伝説

エコーチェンバーについてのエコーチェンバー

分極化に向ける新たなレンズ

2 エコーチェンバーを壊したらどうなのか?
エコーチェンバーを壊す

悪いボット、良いボット

謎の解明

3 実際に壊すとどうなるか?
群れることを習うパティー

ジャネット

正しいことはいい気分

ハードリセット

4 ソーシャルメディア・プリズム
大して合理的ではない大衆

ソーシャルメディアとステータス追求

プリズムの威力

5 プリズムが過激主義をあおる仕組み
孤独な荒らしたち

あなたの知らない荒らし

過激主義というカルト

プリズムから映し出される過激主義

6 プリズムは穏健派を“ミュート”する
穏健な大多数

過激主義者との遭遇

失うものが多すぎる穏健派

穏健派の抱く絶望感

穏健派の不在

7 アカウントを削除すべきか?
離れられない理由

プラットフォームが独力では私たちを救えないわけ

私たち次第

8 プリズムをハックする
認識のずれを狭める

プリズムを見て取る

プリズムを通して自分を見る

プリズムを壊す

9 より良いソーシャルメディア
コロナ時代のソーシャルメディア

新手のプラットフォーム

目的を定めたプラットフォーム

付録 調査手法
ボットを使った量的な実験

ボットを使った質的な実験

シミュレーションされたソーシャルメディア・プラットフォーム実験

謝辞
索引 / 原注 / 参考文献

技書の森解説

SNS が人を過激にするのは、自分と同じ意見ばかりが届く閉じた空間に人を閉じ込めるからだ。広く語られてきたこの説明に、データと実験で挑むのが『ソーシャルメディア・プリズム』 (クリス・ベイル 著、松井信彦 訳、みすず書房、2022 年 6 月発行) です。副題は「SNS はなぜヒトを過激にするのか?」、原書名は BREAKING THE SOCIAL MEDIA PRISM で、版元は計算社会科学の研究者が政治的分極化への処方箋を示す本と案内しています。刊行時の略歴によれば、著者はデューク大学の社会学および公共政策の教授で、同大の分極化研究所 (Polarization Lab) の所長です。

エコーチェンバーの伝説を疑う、ボットを使った実験

本書が最初に取り上げるのは、エコーチェンバーという考え方そのものです。似た意見どうしが反響し合う空間に閉じこもるから人は極端になる、という説明が正しいなら、反対側の意見に触れさせれば分極化は和らぐと考えられてきました。第 1 章「エコーチェンバーの伝説」でこの通説を検討し、第 2 章「エコーチェンバーを壊したらどうなのか?」と第 3 章「実際に壊すとどうなるか?」で、自動化されたアカウント (ボット) を使った実験を扱います。第 3 章には、パティーやジャネットという人物の名を題にした節が並びます。本文の抜粋として版元が紹介する一節では、著者のチームが何千何万というユーザーの複数年にわたる行動を記録した億単位のデータを集め、自動化されたアカウントで新しい実験を行ってきたと述べられています。巻末の付録「調査手法」は、ボットを使った量的な実験と質的な実験、シミュレーションされたソーシャルメディア・プラットフォームでの実験の 3 つを説明しています。

自己を屈折させるプリズムという見立て

書名のプリズムは、本書の中心にある比喩です。版元が引く本文の一節は、人がソーシャルメディアにやみつきになるのは、さまざまな自己を見せては他人の反応をうかがい、それに応じてアイデンティティーを手直しするという生得的な行動を手助けしてくれるからだとし、「ソーシャルメディアは、各自のアイデンティティーを屈折させるプリズムなのだ」と続けます。分極化の原因をプラットフォームの仕組みの側だけに置かず、「ソーシャルメディアにおける政治的部族主義の根本原因が私たち自身の心の奥底にある」と見る立場です。この見立てに沿って、第 4 章でステータスの追求とプリズムの作用を論じ、第 5 章は過激主義がプリズムによってあおられる仕組みを、第 6 章は穏健な大多数がプリズムによって“ミュート”される過程を、過激主義者との遭遇や穏健派の抱く絶望感といった節で扱います。

処方箋の章とより良いソーシャルメディアの構想

後半は対処の章です。第 7 章「アカウントを削除すべきか?」は、離れられない理由とプラットフォームが独力では解決できない理由を論じ、第 8 章「プリズムをハックする」は認識のずれを狭め、プリズムを見て取り、それを通して自分を見る方法へ進みます。最後の第 9 章「より良いソーシャルメディア」では、コロナ時代のソーシャルメディア、新手のプラットフォーム、目的を定めたプラットフォームを取り上げます。全 9 章の範囲は、通説の検討から始まり、利用者個人の向き合い方とプラットフォームの設計の提案で終わる形です。

本書は利用者の側の心理と行動を、実験とデータで掘り下げる点に軸があります。計算社会科学の手法がどのような問いに答えられるのかを、具体的な研究の流れとともに知りたい人に向いた一冊です。付録「調査手法」は、ボットを使った量的な実験、質的な実験、シミュレーションされたソーシャルメディア・プラットフォームでの実験の 3 節で構成されています。

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