デジタル時代のアーカイブ系譜学

デジタルジダイノアーカイブケイフガク

デジタル時代のアーカイブ系譜学の表紙
その他
著者:
柳与志夫 / 加藤諭 / 宮本隆史(ヤナギヨシオ / カトウサトシ / ミヤモトタカシ)
出版社:
みすず書房
出版日:
2022年12月05日
ISBN:
9784622095552
在庫:
在庫あり
3(2 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
デジタルアーカイブ系譜学情報保存デジタル文書化文化遺産管理著作権複製技術博物館・図書館・文書館社会史研究方法

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書籍紹介

〈本書を通じて目指したのは、なんらかの本質を持つようなアーカイブなるものが自己実現するという進歩史観的な歴史像を提示することではない。むしろ、雑多な思想や制作や営為が合流した結果として、わたしたちが現在のデジタル時代のアーカイブを想像できるようになっていることを示そうとした。複雑なアーカイブという現象を、単純化したモデルとして提示するのではなく、むしろ個々の事例に即して解像度を上げて理解しようと試みたのである〉

デジタルアーカイブの定義の変遷から、文書をデジタル化する意味と問題、保存と活用の現状、博物館・図書館・文書館を貫く効用と課題、自治体史や研究者資料における役割、サブカルやユーチューブと著作権問題、複製技術の歴史など、気鋭の研究者 11 名による論考を収録。デジタル時代の今日において「アーカイブ」と呼ばれるものに合流してきたさまざまな系譜を歴史的に明らかにするとともに、それが社会に作用する仕方の見取り図の全貌を示す。

技書の森解説

『デジタル時代のアーカイブ系譜学』 (柳与志夫 監修、加藤諭、宮本隆史 編、みすず書房、2022 年 12 月 1 日発行) は、デジタルアーカイブと呼ばれるものに合流してきた思想や制度、実践の流れを、個々の事例に即してたどる論集です。版元の紹介文は、デジタルアーカイブの定義の変遷から、文書をデジタル化する意味と問題、保存と活用の現状、博物館 / 図書館 / 文書館を貫く効用と課題、自治体史や研究者資料における役割、サブカルやユーチューブと著作権問題、複製技術の歴史までを挙げ、「気鋭の研究者 11 名による論考を収録」と説明しています。編者が掲げるのは、本質を持つアーカイブが自己実現していくという進歩史観的な歴史像ではなく、雑多な思想や制作や営為が合流した結果として捉える見方で、書名の系譜学はこの姿勢を指しています。

序章と終章のあいだに 3 部 9 章、アーカイブ論集の構成

目次は、柳与志夫による「はじめに」のあと、加藤諭と宮本隆史による序章「デジタル時代のアーカイブの諸系譜をたどるために」で始まります。序章にはデジタルアーカイブの政策の流れを扱う節があります。続いて第一部「アーカイブの系譜を解きほぐす」が第 1 章から第 3 章、第二部「多様なアーカイブの文脈を紐解く」が第 4 章から第 6 章、第三部「アーカイブをメディアとして読み解く」が第 7 章から第 9 章で、最後に加藤諭と宮本隆史による終章「まとめと展望」と「おわりに」、索引、編者 / 執筆者紹介が置かれています。執筆者は目次の章題の下に示され、複数の執筆者による共同の章もあります。

概念史と技術史、識別と参照から見るデジタルアーカイブ

第一部の第 1 章「アーカイブの概念史」 (加藤諭) は、デジタルアーカイブという語の文脈を 1990 年代、2000 年代、2010 年代の 3 つの時期に分けて追います。第 2 章「アーカイブの技術史」 (大向一輝) は、デジタル技術の特性、デジタルアーカイブの基盤技術、コンテンツの識別と参照を経て、オープンワールドのアーカイブに向けた節で閉じます。技術の面では、たとえば資料の画像やテキストと、その資料が何であるかを記述する目録の情報を データベース に収めてウェブで公開する形の場合、論文や他のサイトから資料を参照している間に URL のような所在の表記が変わると参照が切れます。資料を安定して指し示す識別の仕組みが技術上の論点になるのはこのためです。また、紙の資料を画像として写すだけの場合と違い、文字を Unicode のような文字コードの並びとして持つ資料は、全文の検索や機械による処理の対象になります。第 3 章「博物館・図書館・文書館から見たアーカイブ史」は、文書館、図書館、博物館のそれぞれの取り組みと議論を扱います。

漱石文庫から神田祭、オールド・ベイリまでの事例

第二部と第三部は事例が中心です。第 4 章「自治体史とデジタルアーカイブ」は地域の公的アーカイブを、第 5 章「研究者から立ちあがるアーカイブ」は夏目漱石の漱石文庫、矢内原忠雄に関する研究者アーカイブ、牧野富太郎と末永雅雄の標本 / 書籍 / 資料、鶴見良行文庫を取り上げます。第 6 章「文化活動の側面を持つアーカイブ」は副題が「祭の記録から動画投稿まで」で、神田祭に見るアーカイビング、サブカルチャー・オタク文化、ネットワーク上の営みの節を含みます。第三部の第 7 章「複製技術とアーカイブ」は日本における文書複製 / 保存技術の歴史を近世の終わりから戦後まで追い、第 8 章「デジタルテキストのメディア特性」はオールド・ベイリ・プロジェクトとオールド・ベイリ・オンラインを、第 9 章「コミュニティの想像とアーカイブ」は日系カナダ人の歴史アーカイブ「不正義の景観」とカビール・プロジェクトの事例を扱います。

国立国会図書館の書誌では件名をデジタルアーカイブとし、索引ありと記録しています。版元の紹介文が示すとおり、本書はアーカイブと呼ばれるものに合流してきた系譜を歴史的に明らかにし、それが社会に作用する仕方の見取り図を示すことを目指した 1 冊で、文書館、図書館、博物館の取り組みから研究者の資料、祭や動画投稿、複製技術までを 3 部 9 章に収めています。

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