マスタリング・イーサリアム

マスタリングイーサリアム

スマートコントラクトと DApp の構築

マスタリング・イーサリアムの表紙
プログラミング
著者:
Andreas M.Antonopoulos / Gavin Wood / 宇野 雅晴 / 中城 元臣 / 落合 渉悟 / 落合 庸介(アンドレアス エム アントノプロス / ギャビン ウッド / ウノ マサハル / ナカジョウ ユキシゲ / オチアイ ショウゴ / オチアイ ヨウスケ)
出版社:
オライリー・ジャパン
出版日:
2019年11月30日頃
ISBN:
9784873118963
在庫:
在庫あり
3.2(5 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
プログラミングセキュリティ暗号ブロックチェーンスマートコントラクトSolidityVyperDAppsEVMイーサリアム

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書籍紹介

『Mastering Bitcoin』 (邦訳『ビットコインとブロックチェーン: 暗号通貨を支える技術』) の著者であるアンドレアス・M・アントノプロスによる、Ethereum (イーサリアム) の技術解説書。Ethereum、ブロックチェーン、スマートコントラクトの基本から、Solidity、Vyper、セキュリティ、DApps の構築、EVM (Ethereum Virtual Machine) まで、関連知識をわかりやすく解説します。

技書の森解説

イーサリアムの仕組みを、ウォレットや鍵の扱いからトランザクション、スマートコントラクト、仮想マシン、コンセンサスまで、プロトコルの層に沿って体系的に学ぶ技術書が『マスタリング・イーサリアム』 (Andreas M. Antonopoulos、Gavin Wood 著、宇野 雅晴、鳩貝 淳一郎 監訳、中城 元臣、落合 渉悟 技術監修、落合 庸介ほか 8 名 訳、オライリー・ジャパン、2019 年 11 月 30 日発行) です。原書は Mastering Ethereum、副題はスマートコントラクトと DApp の構築です。版元の紹介文は、ビットコインの定番書『Mastering Bitcoin』の著者と、イーサリアムの共同設立者でありスマートコントラクトの開発言語 Solidity の開発者が執筆した技術解説書だと説明しています。スマートコントラクトを書く前に、その下で何が起きているのかを理解しておきたい開発者に向いた一冊です。

全 14 章の構成、ウォレットとトランザクションから EVM とコンセンサスまで

本文は全 14 章と付録 A から F で構成されています。1 章でビットコインとの比較やチューリング完全性を通じてイーサリアムの位置づけを整理し、2 章では MetaMask を使ったウォレットの作成とテスト用イーサの入手、簡単なコントラクトの作成とやり取りを体験します。3 章はクライアントとノードの運用、4 章は鍵とアドレス、楕円曲線暗号、Keccak-256 といった暗号の基礎、5 章は決定性ウォレットやニーモニックコードを扱うウォレットの技術です。6 章ではナンスやガス、デジタル署名、トランザクションの伝播とマルチシグまでトランザクションの構造を掘り下げます。7 章と 8 章は Solidity と Vyper によるスマートコントラクトの作成で、9 章のスマートコントラクトセキュリティでは、リエントランシーや算術オーバーフローなどの項目の多くで脆弱性と予防テクニックの節を並べ、The DAO などの実例を添えています。10 章はトークン、11 章はオラクル、12 章はオークションを題材にした DApp と ENS、13 章は EVM とガス、14 章は PoW と PoS によるコンセンサスです。付録にはイーサリアムのフォークの歴史、EVM のオペコードとガス消費、開発ツールとフレームワークとライブラリ、web3.js のチュートリアルなどが収められています。

ガスと不変のコード、スマートコントラクトの安全性の技術背景

ブロックチェーン の上で任意のプログラムを動かすイーサリアムには、ビットコインには無い難しさがあります。どんな計算でも書ける言語を全ノードで実行する以上、終わらない処理や重すぎる処理でネットワークが止まらないよう、命令ごとに費用を課して実行量に上限を設ける仕組みが必要になり、これがガスです。もう一つは、一度デプロイしたコントラクトのコードは原則として書き換えられず、しかも資産を直接扱う点です。外部のコントラクトを呼び出した後に自分の残高を更新するといった順序の誤りが、そのまま資金の流出につながり、修正版を配布して済ませることもできません。鍵とアドレスの関係も同様で、アドレスが公開鍵の ハッシュ から導かれる仕組みや、署名から送信者を特定する仕組みを理解していないと、ウォレットの保管やオフライン署名の安全性を判断できません。本書の章は鍵と暗号、トランザクション、言語、セキュリティ、仮想マシンの順に並ぶので、こうした層ごとの理解を下から順に積み上げられます。

2019 年刊の前提と、2022 年の PoS への移行後に読む注意

本書は 2019 年 11 月の発行で、記述はその時点のイーサリアムを前提にしています。とくに大きいのはコンセンサスで、ethereum.org の案内によれば、イーサリアムのメインネットは 2022 年 9 月 15 日に実行された The Merge によって PoS への移行を完了し、PoW は正式に廃止されました。14 章は PoW の Ethash と、刊行時点で PoS のアルゴリズムとして紹介されていた Casper を扱っているので、メインネットの仕組みとしてではなく、移行に至る設計の経緯として読むのが適切です。ネットワーク全体が同じ台帳に合意するための 合意アルゴリズム の考え方そのものは、方式が変わっても分散システムを理解する土台になります。クライアントや開発ツール、Solidity のコンパイラーの版も刊行後に進んでいるので、コードを動かす時は各プロジェクトの公式ドキュメントで手元の版の説明を確かめる前提で読むのが安全です。

読み進めるには、何らかのプログラミング言語でコードを書いた経験と、コマンドラインの基本操作があると楽になります。一方で、暗号資産の売買や投資の判断材料を求める人には目的が合いません。扱うのはプロトコルとスマートコントラクトの技術であり、市場や価格の話ではないためです。裏返せば、スマートコントラクトの監査や開発に関わる人、DApp を設計する立場で鍵の管理やガスの見積もり、脆弱性の型を自分の言葉で説明できるようになりたい人にとって、プロトコルの下層から積み上げる本書は、刊行時点との差分を押さえたうえで手元に置く価値のある一冊です。

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