量子コンピュータと量子通信 3-量子通信・情報処理と誤り訂正ー

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量子コンピュータと量子通信 3-量子通信・情報処理と誤り訂正ーの表紙
セキュリティ
著者:
Michael A. Nielsen / Isaac L. Chuang / 木村 達也(ミカエル ニーセン / アイザック チャン / キムラ タツヤ)
出版社:
オーム社
出版日:
2005年01月19日頃
ISBN:
9784274200090
在庫:
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書籍紹介

量子情報理論の世界的な定本の待望の翻訳版!
研究開発が活発な量子コンピュータや量子暗号、量子通信を実現するための量子情報理論についての世界的な定本である"Quantum Computation and Quantum Information"の翻訳版、第 3 巻目。

量子暗号、量子通信を実現するために必要な量子誤り訂正などの理論をわかりやすく解説している。

技書の森解説

量子コンピューターや量子通信の理論を本格的に学ぶとき、避けて通れないのが、雑音の中で量子情報をどう守り、どれだけ確実に送れるかという問題です。『量子コンピュータと量子通信 Ⅲ』 (Michael A. Nielsen、Isaac L. Chuang 著、木村 達也 訳、オーム社、2005 年 1 月 20 日発売) は、版元が「量子情報理論についての世界的な定本」と紹介する Quantum Computation and Quantum Information の翻訳版の第 3 巻で、副題は「量子通信・情報処理と誤り訂正」です。版元は本書を、量子暗号や量子通信を実現するために必要な量子誤り訂正などの理論を解説した巻と案内しています。

第 Ⅲ 部の 5 章、量子雑音から量子暗号まで

目次は第 Ⅲ 部「量子通信・情報処理と誤り訂正」の下に第 8 章から第 12 章までの 5 章と付録 F が並ぶ構成で、第 Ⅰ 部と第 Ⅱ 部は本巻に含まれません。第 8 章「量子雑音と量子演算」は古典雑音と Markov 過程から入り、量子演算とその例、応用、量子演算形式の限界までを扱います。第 9 章「量子情報の距離測度」は 2 つの量子状態の近さや、量子チャンネルがどれくらいよく情報を保存するかを論じます。第 10 章「量子誤り訂正」は Shor の符号、量子誤り訂正の理論、量子符号の構築、固定部分群符号、耐故障性量子計算へ進みます。第 11 章「エントロピーと情報」は Shannon と von Neumann のエントロピー、強い劣加法性、第 12 章「量子情報理論」は量子状態の識別とアクセス可能な情報量、データ圧縮、雑音のある量子チャンネルにおける古典情報と量子情報、物理的リソースとしてのもつれ、量子暗号を扱い、巻末に付録 F「Lieb の定理の証明」が置かれています。

雑音と誤り訂正が量子計算の実現を左右する理由

量子コンピューター の量子ビットは、周囲との相互作用で重ね合わせやもつれが崩れやすい一方で、古典のビットのように値を読み出して複製し、多数決で誤りを直す方法がそのままでは使えません。測定すると状態が変わってしまい、未知の量子状態は複製できないからです。量子誤り訂正は、1 個の論理的な量子ビットを複数の物理的な量子ビットにもつれた形で符号化し、状態そのものを測らずに誤りの種類だけを調べて直すという発想で、この壁を越えます。Shor の符号はその最初の例として知られ、固定部分群符号 (英語では stabilizer code と呼ばれる系統) は多くの量子符号を同じ枠組みで扱う考え方です。さらに、誤り訂正の操作そのものにも誤りが入ることを前提に、計算全体を信頼できるものにするのが耐故障性量子計算です。雑音が状態をどう変えるかを書き表す量子演算の形式と、変わった状態が元の状態にどれだけ近いかを測る距離の尺度は、誤り訂正の効き目を論じるための共通の道具になります。

エントロピーから量子通信路と量子暗号の理論へ

後半の 2 章は、情報の量を測る理論です。古典の情報理論では Shannon のエントロピーが圧縮の限界や通信路で送れる情報量を決めますが、量子状態では密度行列に対して定める von Neumann のエントロピーがその役を担います。強い劣加法性は量子エントロピーの性質の中でも証明が難しいことで知られ、付録 F の Lieb の定理はその証明を支える定理です。第 12 章の節題には量子状態の識別、データ圧縮、雑音のある量子チャンネルを通じた情報の伝送が並び、もつれを物理的なリソースとして扱う節を経て量子暗号に至ります。量子鍵配送は、暗号化 に使う鍵を、盗聴の有無を確かめながら離れた 2 者で共有する方法です。その安全性の議論には、エントロピーや通信路の理論が欠かせません。

情報科学と通信の学生や研究者に向く中級の理論書

版元はおすすめの読者を、情報科学 / 情報工学 / 通信 / 電子分野の学生や研究者 / 教員と、情報通信関連のメーカーの技術者としており、段は中級としています。密度行列や量子演算は線形代数の言葉で定義される概念なので、行列の固有値や内積、テンソル積の扱いに慣れているほど読み進めやすくなります。逆に、量子回路をプログラムで組んで実機やシミュレータで動かす方法を学びたい人には目的がずれます。目次にプログラミングや特定の開発環境を扱う節は無く、2005 年に刊行された翻訳書なので、刊行後の量子誤り訂正の実験や実機の進展も含まれません。

量子誤り訂正や量子通信路の容量を扱う論文や講義に進む前に、その議論の共通の土台となる量子演算、距離の尺度、量子エントロピーを日本語で一続きに学んでおきたい人にとって、本巻は手元で何度も引き直せる理論書です。

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