今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい量子コンピュータの本

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今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい量子コンピュータの本の表紙
コンピュータサイエンス / アルゴリズム
著者:
山崎 耕造(ヤマザキコウゾウ)
出版社:
日刊工業新聞社
出版日:
2021年01月26日頃
ISBN:
9784526081071
在庫:
在庫あり
3(5 件 / 楽天ブックス)
初級者向け
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977位

書籍紹介

今話題の量子コンピュータの技術について、その基礎理論から関連知識、開発状況、未来展望に至るまでを紹介する。

技書の森解説

『トコトンやさしい量子コンピュータの本』 (山﨑耕造 著、日刊工業新聞社 (今日からモノ知りシリーズ)、2021 年 1 月刊) は、量子コンピューターの技術を、基礎理論から関連知識、開発状況、未来展望まで紹介する入門書です。版元は、従来のコンピューター (古典コンピューター) の素子が「ビット」で情報を扱うのに対して、量子コンピューターでは「量子ビット」により情報を扱うと説明しています。本書はこの量子ビットの性質、量子ゲートと量子回路、量子ビットを作るハードウェア、世界の開発の動きを 8 つの章で取り上げ、ニュースで見かける用語の意味を一つずつ確かめたい読者の入口になります。

全 8 章の構成、量子スプレマシーから世界の開発の現状へ

第 1 章「量子コンピュータはどれだけ凄いのか?」は、量子スプレマシーの実現や、ゲート方式とアニーリング方式という 2 つの方式の項目から入ります。第 2 章「量子コンピュータとは?」で古典ビットと量子ビット、古典暗号と量子暗号の違いを整理し、第 3 章「量子の原理をどう使うの?」で量子的重ね合わせ、ブロッホ球、観測とデコヒーレンス、量子もつれを取り上げます。第 4 章「量子コンピュータの種類は?」には量子ゲート型と量子イジング型、量子アニーリング方式、量子ニューラルネット方式の項目が並びます。第 5 章「量子ビットと量子ゲートとは?」は古典ゲートと論理回路の項目から入り、量子計算のための物理と数学の基礎の項目を挟んで、パウリゲート、アダマールゲート、制御 NOT ゲート、量子フーリエ変換、量子誤り訂正へ進みます。

量子回路とアルゴリズム、ハードウェアと暗号を扱う後半

第 6 章「量子回路と量子アルゴリズムとは?」には、スワップ回路、半加算回路と全加算回路、乱数回路、量子テレポーテーション回路といった回路の項目と、ドイチュ=ジョサ・アルゴリズム、ショア・アルゴリズム、グローバー・アルゴリズム、P 問題と NP 問題の項目が並びます。第 7 章「量子ビットのハードウェアと量子暗号のしくみは?」は、超伝導の磁束量子ビットと電荷量子ビット、イオントラップと冷却原子、光量子、量子ドットなどの方式と、RSA 暗号と量子鍵配送を扱います。最後の第 8 章「量子コンピュータ開発の世界の現状は?」は、グーグル、IBM、マイクロソフトやインテル、スタートアップ企業、日本と中国の開発を取り上げ、IBM のクラウドサービスを使ってみる項目や、組み合わせ最適化、創薬、フィンテック、格子暗号の項目に進みます。コラムでは、量子や暗号、人工知能を題材にした映画やアニメ映画が紹介されています。

量子計算が暗号の話題と結びつくのには理由があります。インターネットの HTTPS の通信で鍵の受け渡しや署名に使われる公開鍵暗号の一部は、大きな数の素因数分解のような計算が古典コンピューターでは現実的な時間で終わらないことを安全性の根拠にしています。十分な規模で誤りを訂正できる量子計算機が実現すれば、この前提が崩れます。一方で、量子コンピューター がどんな計算でも速くなるわけではありません。測定すると状態は確率的に一方へ確定するため、速さは、誤った答えの成分を打ち消し正しい答えの成分を強める手順を組める問題に限られます。どの問題で効き、どの問題では効かないのかを見分けることが、量子計算の話題を読み解く出発点になります。

量子の仕組みと開発の動きを一冊で見渡したい読者へ

本書が向くのは、量子スプレマシーやアニーリング方式といった言葉の意味を、原理からハードウェア、用途まで一続きで押さえたい技術者やビジネスパーソンです。第 5 章には波動関数とシュレーディンガー方程式、複素ベクトルとユニタリ行列を扱う基礎の項目も置かれています。一方で、特定のプログラミング言語や開発キットで量子プログラムを書く手順を学ぶ章は目次に無く、第 8 章の開発の状況も 2021 年 1 月の刊行時点のものです。刊行後の機器や研究の進展は、別の資料で補う必要があります。

量子コンピューターの記事を読むたびに用語の壁に当たる人や、社内で量子技術の可能性を説明する立場になった人にとって、原理と方式と用途を 1 冊で見渡せる本書は、その後に専門書へ進むための地図として手元に置く価値があります。

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