ネット炎上の研究
ネットエンジョウノケンキュウ
誰があおり、どう対処するのか
- 著者:
- 田中 辰雄 / 山口 真一(タナカ タツオ / ヤマグチ シンイチ)
- 注目:
- 総合 2416 位
- 出版社:
- 勁草書房
- 出版日:
- 2016年04月22日頃
- 一覧:
- 2016 年に出た技術書
- ISBN:
- 9784326504220
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
インターネットが普及すれば多くの人が自由な議論の輪に加わり討論の民主主義が社会のすそ野に広がっていくと期待された。しかし論調は暗転し、ネット上での意見交換に悲観的な意見が増えてくる。この論調の暗転の大きな原因になったのがいわゆる炎上問題である。本書はこの炎上について定量的な分析を行うとともに、本書なりにその原因と社会としての炎上対策を示す。
技書の森解説
『ネット炎上の研究』 (田中 辰雄、山口 真一 著、勁草書房、2016 年 4 月刊) は、インターネット上の炎上を定量的な分析の対象にして、誰が炎上に加わっているのか、社会としてどう対処すればよいのかを論じた研究書です。版元の書籍ページの見出しには「誰があおり、どう対処するのか」が添えられています。版元の紹介文には、インターネットが普及すれば多くの人が自由な議論の輪に加わると期待されたものの論調は暗転し、その大きな原因になったのが炎上問題であり、本書はこの炎上について定量的な分析を行うとともに、原因と社会としての対策を示すとあります。版元は本書を、炎上はなぜ生じるのか、防ぐ方法はあるのか、甘受するしかないのか、という問いに答える本と案内しています。版元ドットコムの著者紹介によると、2 人とも専門は計量経済学です。版元は 2025 年 8 月に重版しており、紙版のほかに電子版もあります。
全 8 章と付録の構成、炎上の分類から社会的対処まで
目次は「はじめに」のあと、第 1 章「ソーシャルメディアと炎上: 特徴と発生件数」に始まり、第 2 章「炎上の分類・事例・パターン」、第 3 章「炎上の社会的コスト」、第 4 章「炎上は誰が起こすのか」、第 5 章「炎上参加者はどれくらいいるのか」、第 6 章「炎上の歴史的理解」、第 7 章「サロン型 SNS:受信と発信の分離」と進み、第 8 章「炎上への社会的対処」で終わります。巻末には付録「炎上リテラシー教育のひな型」と参考文献、索引が付きます。第 2 章は炎上を 5 つの型に分け、反社会的な行為や規則に反した行為の告白、批判や暴言、自作自演やステルスマーケティングや捏造の露呈、ファンを刺激する恋愛の話題や特権の利用、他者と誤解される場合を順に扱い、企業のキャンペーンや著名人の発言など実際の事例を添えています。第 3 章は節の題で「炎上のコストは情報発信の萎縮」と結論を示しています。
炎上参加者はごく一握り、アンケートと Twitter の推定
炎上に加わる人の姿を数字で確かめるのが、第 4 章と第 5 章です。第 4 章は「データから見る炎上参加者のプロフィール」を扱い、節の題で「年収の多い若い子持ちの男性が書き込み」と示す一方、「ひとり暮らし, 学歴, ネット時間等」は炎上参加行動に有意でない属性として節を分けています。有意かどうかは 統計学 の言葉で、ある属性と書き込みの有無との関係が偶然の揺れでは説明しにくいかどうかを指します。第 5 章は「アンケート調査での炎上参加者数推定」と「Twitter での炎上参加者数推定」の 2 つの方法で人数を見積もり、「炎上参加者はごく一握り」と結んでいます。第 5 章は、書き込みの量ではなく書いている人の数を データ分析 で推定しています。
集団極性化とサロン型 SNS、第 6 章から第 8 章の対処の議論
第 6 章は「炎上の理解: 集団極性化とデイリーミー」の節から始まります。集団極性化は、似た意見の人どうしで議論を重ねると、集団の意見が議論の前より極端な方向へ振れる現象を指す社会心理学の概念です。デイリーミーは、受け取る情報を自分の関心に合わせて選び抜いた、自分専用の新聞のような情報環境を指す言葉です。第 6 章はこのあと「近代化の歴史より」「草創期の力の濫用」と、炎上を歴史の中に置き直します。第 7 章は「炎上の真の原因」「サロンの構想」「自由参入かメンバーシップか」の節で、受信と発信を分けたサロン型の SNS を構想し、第 8 章は政策的な対応を検討したうえで「炎上への規制対応は難しい」と論じています。
本書は、炎上の特徴と分類から、社会的コスト、参加者の属性と人数の推定、歴史的な理解、サロン型 SNS の構想、社会的対処までを、全 8 章と付録に収めています。
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