これから IT 業界で働く人のための情報処理技術の基本
コレカラ アイティー ギョウカイ デ ハタラク ヒト ノ タメノ ジョウホウ ショリ
なぜ注目されているか
書籍紹介
資格受験だけでなく、仕事にも活かせる一生モノの知識。
技書の森解説
IT 業界への就職や配属が決まったものの情報系の教育を受けた経験がなく、研修が始まる前に土台を作っておきたい。『これから IT 業界で働く人のための情報処理技術の基本』 (矢沢久雄著、日本実業出版社、2013 年刊、318 ページ) は、そういう立場の人へ向けた情報処理の基礎固めの本です。著者の矢沢久雄氏は、2001 年の初版から版を重ねる定番解説書『プログラムはなぜ動くのか』 (日経 BP) の書き手として知られ、難しい仕組みを平易な言葉に置き換える解説で定評があります。版元は本書を、資格受験だけでなく仕事にも活かせる一生モノの知識と紹介しています。
「〜してみよう」で貫く全 6 章の体験型構成
構成は全 6 章で、章題がすべて「〜してみよう」で統一されているのが本書の性格をよく表しています。パソコンの中を見る、プログラムをつくる、OS の機能を確認する、SQL で データベース を操作する、ネットワークツールを使う、そして 2 進数とアルゴリズムを手書きでおぼえる、という並びです。つまり知識を読んで暗記する教科書ではなく、実際に手を動かし、紙の上で計算を追いながら、コンピュータが情報を処理する原理を確かめていく体験型の入門書です。
試験と実務の土台が重なる 6 テーマ
この 6 テーマの選び方は的確です。ハードウェア / プログラム / OS / データベース / ネットワーク / アルゴリズムという層は、 基本情報技術者試験 をはじめとする情報処理技術者試験の土台領域とそのまま重なり、同時に、個別の製品やフレームワークが入れ替わっても寿命が尽きない知識層でもあります。実務でトラブルの切り分けができる人とできない人の差は、多くの場合この層の理解の差です。試験対策書を暗記だけで進めると知識が定着しにくいのに対し、本書のように一度手を動かして原理を通過しておくと、試験知識に現場の意味づけが与えられます。
2013 年刊として期待してよい範囲
一方で、刊行は 2013 年です。画面例や道具立ては当時の環境が前提であり、クラウドやコンテナ、機械学習といったその後に主流化したトピックは扱われていません。本書に期待してよいのは環境が変わっても持ち越せる原理の層までであり、開発現場の具体的な今どきのツールチェーンを知る目的には合いません。そこは新しい本や現場のドキュメントで補う前提で、役割を切り分けて読むのが正しい使い方です。
前提知識と次の一冊
前提知識は不要で、文系出身の内定者や新人が読み通せる難易度に作られています。買って元が取れるのは、入社前後の数ヶ月で基礎を作りたい人、基本情報技術者試験の学習と並走させる 1 冊が欲しい人です。読み終えてさらに 低いレイヤー へ興味が湧いたら、CPU とメモリの動きを掘り下げる同著者の『プログラムはなぜ動くのか』 (第 3 版、日経 BP、2021 年) が自然な次の一冊になります。原理から積み上げる著者の作風が合うかを確かめる入り口としても、本書は手頃な選択です。
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