AI 社会の歩き方
エイアイシャカイノアルキカタ
人工知能とどう付き合うか
- 著者:
- 江間 有沙(エマ アリサ)
- 注目:
- 総合 1948 位
- 出版社:
- 化学同人
- 出版日:
- 2019年02月28日頃
- 一覧:
- 2019 年に出た技術書
- ISBN:
- 9784759816808
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
人工知能が社会に浸透するとき, どのような変化が起こるのか.汎用人工知能, 自動運転車, 仕事が奪われる, 自律型兵器などをめぐる議論のほかにも, 考えておくべきポイントはないだろうか.本書では人工知能に関わる論点を, 技術開発者, 政策立案者, ユーザ, 法・倫理関係者などの立場に分けて, 具体的な事例とともに整理.そのうえで, 多様なステークホルダーをつなぐための対話を経て見えてきた, 人工知能と社会の関係の地図を描き出す.楽観論にも悲観論にも流されない, 人工知能との付き合い方を考える.
1.人工知能は何ができるか
2.人工知能の価値をめぐって
3.社会の中の人工知能
4.人工知能が浸透するとき
5.人工知能とどう付き合うか
おわりに
技書の森解説
AI の本には「どう作るか」を教える技術書と、「どう付き合うか」を考える本があり、『AI 社会の歩き方 人工知能とどう付き合うか』 (江間有沙 著、化学同人、DOJIN 選書 80、2019 年 2 月刊) は後者を正面から引き受けた一般書です。機械学習の数式やプログラミングは出てきません。代わりに扱うのは、人工知能 が社会に浸透するときに誰の間でどんな論点が生じるかという問いで、技術開発者 / 政策立案者 / ユーザ / 法や倫理の関係者という立場ごとに関心の在りかを腑分けし、具体的な事例とともに論点の地図を描きます。楽観論にも悲観論にも流されないと版元がうたう筆致は実際この本の背骨で、AI 礼賛でも脅威論でもない中間の足場を提供してくれます。
5 章立ての構成と論点の地図
構成は「人工知能は何ができるか」から始まり、価値をめぐる議論、社会の中の人工知能、浸透するときに起こる変化、そして付き合い方へと進む 5 章立てです。題材には汎用人工知能、自動運転車、仕事が奪われるという懸念、自律型兵器といった代表的な話題が並びますが、本書の持ち味は個々の話題の当否を裁くことではなく、「他に考えておくべきポイントはないか」を立場を混ぜずに拾い上げる整理の作法にあります。多様なステークホルダーをつなぐ対話の実践から見えてきた知見が織り込まれている点も、机上の評論と一線を画すところです。
ELSI と AI ガバナンスという背景知識
この整理の作法が重要になる背景には、AI の課題が技術だけでは閉じないという事情があります。倫理的 / 法的 / 社会的課題をまとめて ELSI と呼びますが、たとえば自動運転車の事故責任は技術の精度の問題であると同時に、法制度と保険と社会的受容の問題です。本書が刊行された 2019 年前後は、まさに各国政府や国際機関、企業が AI 倫理指針を相次いで打ち出した時期で、日本でも政府が「人間中心の AI 社会原則」を決定しています。開発者 / 規制側 / 利用者の間で議論がかみ合わない場面が世界中で頻発したこの時期に、立場の違いそのものを主題化した本書のアプローチは、AI ガバナンスという分野の入口として素直に機能します。
2019 年刊という時点の注意
時点の位置づけは正直に述べておくべきで、本書は 2019 年刊、つまり 2022 年に始まる生成 AI ブームより前の本です。個別の技術動向や事例には当時の水準が前提のものが含まれます。ただし本書の中心は技術予測ではなく論点整理の枠組みなので、生成 AI をめぐる著作権 / 雇用 / 偽情報の議論に参加するときも「この論点は誰の関心か」という同じ問いの立て方がそのまま使えます。むしろ論争が過熱した局面ほど、ブーム以前に書かれた 冷静な見取り図の価値は下がりにくいと言えます。
向いている読者 / 向かない読者
機械学習の仕組みや実装 を学びたい人、生成 AI の活用術を探している人には、本書は求めるものと違います。一方、自社サービスへの AI 導入で社内外の合意形成を担う人、AI 倫理指針やガバナンスの検討に加わることになった実務者、卒業論文や研究で「AI と社会」を扱う学生には、関係者それぞれの関心を見取り図として頭に入れられる手頃な一冊です。新書サイズの選書で技術的な前提知識も不要なので、読み通す負担は小さく、読後は会議での議論のかみ合わなさを個人の資質ではなく構造として説明できるようになります。AI の社会論に最初の一冊から順序立てて入りたい人に、出発点として薦められる本です。
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