AI・ロボットと共存の倫理
エーアイロボットトキョウゾンノリンリ
- 著者:
- 西垣 通(ニシガキ トオル)
- 出版社:
- 岩波書店
- 出版日:
- 2022年07月07日頃
- ISBN:
- 9784000223133
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
いまや社会にとって不可欠な技術となった人工知能 (AI) とロボット。限りなく人間に近づきつつあるテクノロジーは、果たして生命を持つようになるのか。そして私たちは AI・ロボットといかに付き合うべきか。西垣通、河島茂生、ドミニク・チェン、広井良典、富山健、江間有沙による、技術と倫理をめぐる共同研究。
生命的機械の登場──まえがきにかえて……西垣 通
■第一部|人間と機械
第一章 人間と機械の連続と非連続、そして倫理──観察の複数性とシステムのありようとの関係をもとに……河島茂生
第二章 人新世における AI・ロボット……西垣 通
■第二部|ロボットとケア
第三章 非規範的な倫理生成の技術に向けて……ドミニク・チェン
第四章 ロボットの倫理……富山 健
■第三部|AI と社会
第五章 AI を活用した未来構想と地球倫理……広井良典
第六章 AI 倫理の実装をめぐる課題……江間有沙
技書の森解説
人間に限りなく近づいていくテクノロジーは、はたして生命を持つようになるのか。そして私たちは AI やロボットとどう付き合うべきなのか。『AI・ロボットと共存の倫理』は、この原理的な問いを情報学者の西垣通氏を中心とする 6 人の研究者が引き受けた共同研究の論集で、2022 年 7 月に岩波書店から刊行されました。執筆陣は西垣氏のほか、河島茂生、ドミニク・チェン、富山健、広井良典、江間有沙の各氏。情報学 / メディア研究 / ロボット工学 / 公共政策 / 科学技術社会論と、それぞれ足場の異なる書き手が章を分担しています。
三部六章の構成と執筆分担
構成は三部六章です。第一部「人間と機械」では、人間と機械の連続 / 非連続をシステム論から問う河島論文と、人新世という時間軸に AI / ロボットを置き直す西垣論文が、本書全体の存在論的な土台を作ります。第二部「ロボットとケア」では、ドミニク・チェン氏が規範を上から当てはめるのではない「倫理が生成する技術」の可能性を、富山健氏がケアの現場を見据えたロボットの倫理を論じます。第三部「AI と社会」は広井良典氏による AI を使った未来構想と地球倫理、江間有沙氏による AI 倫理を組織で実装する際の課題へと、抽象から実務へ視座を下ろして締めくくられます。
ガイドライン解説ではないという読みどころ
読む前に知っておきたいのは、これが AI 倫理のガイドライン解説やチェックリスト集ではないことです。むしろ、各国のガイドラインが前提にしている「人間中心」という発想そのものを検討の対象に載せ、倫理は機械との関係の中でどう生成しうるのかまで掘り下げる本です。刊行は 2022 年 7 月、対話型の生成 AI が世間の話題を席巻する直前にあたりますが、扱っているのが流行のツールではなく人間と機械の関係の原理であるだけに、生成 AI 以後に読んでも 議論の骨格は古びていません。というより、AI が「それらしく語る」存在になった今こそ、生命と機械の境界を問う第一部の議論は切実さを増しています。
難易度と読み方の注意
技術的な前提知識は不要ですが、哲学 / 社会学の語彙で進む議論を腰を据えて追う読解力は求められます。難易度は一般書と学術書の中間で、通勤の細切れ時間より、まとまった時間でじっくり読む のに向く本です。各章の視座が互いに少しずつずれており、その不一致こそが「共存の倫理はまだ合意された答えのない問題」であることの誠実な表現になっています。
向いている読者と読む順番
AI 倫理という言葉を、炎上回避の決まり文句ではなく自分の足場のある概念として使いたいエンジニアや企画職、テクノロジーと社会を扱う卒論 / 修論のテーマを探している学生には、思想的な地層まで降りられる数少ない日本語文献です。実装寄りの関心が強いなら、本書第六章の執筆者である江間有沙氏の単著『AI 社会の歩き方』 (2019 年) を先に読み、原理的な問いに惹かれたら本書へ進む、という 読む順番 も組めます。答えを渡す本ではなく、考えるための足場を渡す本。それを求めている人には、価格以上に長く効く一冊です。
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