記号と再帰 新装版

キゴウトサイキ

記号論の形式・プログラムの必然

記号と再帰 新装版の表紙
プログラミング
著者:
田中 久美子(タナカ クミコ)
出版社:
東京大学出版会
出版日:
2017年04月25日頃
ISBN:
9784130802567
在庫:
在庫あり
4(3 件 / 楽天ブックス)
上級者向け
プログラミング言語記号論人工言語再帰情報理論言語学計算論システム理論ソフトウェア工学理論コンピュータサイエンス

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書籍紹介

「x:=x+1」のような命令をはじめ, プログラミング言語を仔細にみてゆくと, 人間の自然言語とは異なる再帰性, 記号系の自己言及が見られる.人工言語の記号論を企て, 人間の記号系の本質を再考し, サントリー学芸賞, 大川賞に輝いた名著を改訂してペーパーバックに.
1 章 人工言語と記号論

2 章 情報記号

第 1 部 記号のモデル

3 章 バビロンの混乱

4 章 記号が一体化する時

5 章 「である」と「する」

第 2 部 記号、対象の種類

6 章 文 x:=x+1

7 章 三種類の項

8 章 ある■・その■

第 3 部 記号のシステム

9 章 構造的・構成的

10 章 記号と時間

11 章 系の再帰と進化

12 章 結 語

Semiotics of Programming
Kumiko Tanaka-Ishii

技書の森解説

『記号と再帰 新装版』 (田中 久美子 著、東京大学出版会、2017 年 4 月 25 日発売) は、プログラミング言語という人工言語を記号論の対象として取り上げ、そこから人間の記号系の本質を考え直す学術書です。副題は「記号論の形式・プログラムの必然」です。版元の紹介文によれば、「x:=x+1」のような命令をはじめとしてプログラミング言語を細かく見てゆくと、人間の自然言語とは異なる再帰性と、記号系の自己言及が見られます。本書はそこから人工言語の記号論を企てた著作で、サントリー学芸賞と大川賞を受けた本を改訂し、ペーパーバックにした新装版です。初版は 2010 年です。

2 章の導入と 3 部の本論、結語までの目次

目次は 1 章「人工言語と記号論」と 2 章「情報記号」で始まり、そのあとに 3 つの部が続きます。第 1 部「記号のモデル」は 3 章「バビロンの混乱」から 5 章「「である」と「する」」まで、第 2 部「記号、対象の種類」は 6 章「文 x:=x+1」から 8 章まで、第 3 部「記号のシステム」は 9 章「構造的・構成的」から 12 章「結 語」までです。第 3 部には 10 章「記号と時間」と 11 章「系の再帰と進化」が含まれ、巻末には新装版のための「新装版によせて」が置かれています。2017 年の刊行時点の版元の著者紹介によれば、田中 久美子は東京大学先端科学技術研究センター教授です。

代入の式 x:=x+1 が数式と違う点

「x:=x+1」を数学の等式として読むと、x と x+1 が等しいことになり成り立ちません。プログラムの命令としては、x という名前が指す 変数 の値を読み出し、1 を足した結果を同じ名前のもとに書き戻す、という時間の前後を含んだ操作を表します。記号 := は Pascal などの言語で代入に使われる書き方で、C の系統の言語では同じ操作を = で書きます。同じ記号 x が式の左と右で、値の置き場所と、そこに入っている値という別のものを指している点に、自然言語や数式とは違う記号の働きがあります。一度付けた名前に別の値を入れ直す操作を避け、値を変えずに計算を組み立てる 関数型プログラミング は、この代入の扱いをめぐる言語設計の分かれ目の 1 つです。

再帰と自己言及、記号論の 2 項と 3 項

プログラミングでいう 再帰 は、関数が自分自身を呼び出して問題を解く手法で、階乗のように答えを一回り小さな同じ問題の答えで定義する計算に使われます。定義の中に定義されるもの自身が現れるという形は、記号が記号自身を参照する自己言及と同じ構造を持っています。記号論には、記号を「表すもの」と「表されるもの」の 2 項の組で捉えるソシュールの系統と、記号の解釈を担う項を加えた 3 項で捉えるパースの系統があり、記号のモデルをどう立てるかは記号論の基本の問いです。国立国会図書館の書誌では件名が「記号学」、日本十進分類法の分類が 007.1 です。本書は、プログラミング言語の命令に現れる再帰性と自己言及を手がかりに、人工言語と人間の記号系を 1 章「人工言語と記号論」から 12 章「結 語」までで論じています。

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