働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」
ハタラキタクナイイタチトコトバガワカルロボット ジンコウチノウカラカンガエルヒトトコトバ
- 著者:
- 川添愛 / 花松あゆみ(カワゾエアイ / ハナマツアユミ)
- 出版社:
- 朝日出版社
- 出版日:
- 2017年06月17日頃
- ISBN:
- 9784255010038
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
なぜ AI は、囲碁に勝てるのに、簡単な文がわからないの?
そもそも、言葉がわかるって、どういうこと?
中高生から大人まで「言葉を扱う機械」のしくみと、私たちの「わかり方」を考える。
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「つまり、僕らはロボットにしてほしいことを言うだけで、あとはロボットが勝手にやってくれる。それが一番いいってことだね」
「いいね。そうすれば、誰も働かなくてよくなるね」
イタチたちはみなこの計画にうっとりして、なんてすてきなのだろうと思いました。
(序章「ことの始まり」より)
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なんでも言うことを聞いてくれるロボットを作ることにしたイタチ村のイタチたち。彼らは、「言葉がわかる機械ができたらしい」といううわさを聞いては、フクロウ村やアリ村や、その他のあちこちの村へ、それがどのようなものかを見に行きます。ところが、どのロボットも「言葉の意味」を理解していないようなのですーー
この本では、「言葉がわかる機械」をめぐるイタチたちの物語と、
実際の「言葉を扱う人工知能」のやさしい解説を通して、
そうした機械が「意味がわかっていると言えるのか」を考えていきます。
はたして、イタチたちは何でもできるロボットを完成させ、ひだりうちわで暮らせるようになるのでしょうか?
ロボットだけでなく、時に私たち人間も、言葉の理解に失敗することがありますが、なぜ、「言葉を理解すること」は、簡単なように見えて、難しいのでしょうか?
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ーーいま、さまざまな人がさまざまな機会に、「言葉を理解する機械がとうとう完成した」とか「今はできていないけれど、もうすぐできるだろう」とか「機械には本当の意味で言葉を理解することはできない」ということを言っています。いったいどれが正しいのでしょうか?
ーー私たちは普段から、「あの人が何を言っているかが理解できた」とか「あの言葉の意味が分からない」ということをよく口にします。しかし、自分がそう言うとき、どんな意味で言っているか、きちんと意識しているでしょうか? 実際のところ、私たちはさまざまなことを、「言葉が分かる」という便利な表現の中に放り込んでしまっています。それらを一つひとつ取り出してみないことには、「言葉が分かっているかどうか」という問題に答えを出すことはできません。
ーーこの本では、「言葉が分かる」という言葉の意味を考えていくことで、機械のこと、そして人間である私たち自身のことを探っていきたいと思います。
ーー (問題の一部を知るだけでも) みなさんが、「人と機械の知性」について考えたり、またご自身の「言葉の使い方」や「理解の仕方」を振り返ったりする手がかりになると信じています。
(序章「ことの始まり」より)
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技書の森解説
機械は言葉の意味を分かっていると言えるのか。この問いを、イタチたちの物語と、言葉を扱う人工知能のやさしい解説を組み合わせて考えていく一般向けの本です。『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』は川添 愛 氏の著、花松 あゆみ 氏の絵で、朝日出版社から 2017 年 6 月に発売されました。副題は「人工知能から考える「人と言葉」」です。版元は本書を、「中高生から大人まで」を読者に想定し、「言葉を扱う機械」のしくみと、私たちの「わかり方」を考える本と紹介しています。
イタチ村の物語と、聞き取りから意図の推測までの 8 章
版元の紹介によると、物語は、なんでも言うことを聞いてくれるロボットを作ることにしたイタチ村のイタチたちが、言葉がわかる機械ができたといううわさを聞くたびに、フクロウ村やアリ村などへ見に行く筋で進みます。ところが、どのロボットも言葉の意味を理解していないように見えます。目次では、序章「ことの始まり」に続く本文が第 1 章「言葉が聞き取れること」から第 8 章「話し手の意図を推測すること」までの 8 章で、その間に第 2 章「おしゃべりができること」、第 3 章「質問に正しく答えること」、第 4 章「言葉と外の世界を関係づけられること」、第 5 章「文と文との論理的な関係が分かること (その一)」、第 6 章「文と文との論理的な関係が分かること (その二)」、第 7 章「単語の意味についての知識を持っていること」が並びます。節には音声認識、チューリング・テスト、画像の認識、含意関係認識、意味に関する知識の自動獲得、曖昧性の解消、会話的含みといった題材があり、最後は終章「その後のイタチたち」で、人間の側の理解にも目を向けます。巻末にはあとがきと註と参考文献が付きます。
似ていると計算できることと、意味が分かること
自然言語処理 は、人の言葉を計算機で扱う技術の分野で、機械翻訳や文書の検索、分類などを含みます。この分野の多くの手法は、大量の文章から語と語の結びつきの傾向を学び、その傾向に沿って出力を作ります。語や文を数値の並びとして表す 埋め込みベクトル を使うと、2 つの文がどれだけ似ているかを計算で比べられます。ただ、似ている度合いを計算できることと、文の内容が正しいかどうかや、話し手が何を伝えたいのかを判断できることは、別の問題です。版元が引く序章の一節で、著者は、私たちがさまざまなことを「言葉が分かる」という便利な表現の中に放り込んでしまっていると述べ、それらを一つひとつ取り出す必要があると書いています。本書の 8 つの章題はいずれも「こと」で終わり、言葉が分かることの中身を 1 つずつ章に立てているので、機械にできることとできないことを、能力ごとに区別して読み進められます。
中高生から読める入り口と、実装を学びたい人への注意
刊行時の著者紹介では、著者の専門は言語学と自然言語処理で、国立情報学研究所の研究員や特任准教授を務めた経歴が示されています。著書には、オートマトンと形式言語やチューリングマシンを題材にした物語形式の本『白と黒のとびら』と『精霊の箱』 (いずれも東京大学出版会) があります。本書は刊行後に毎日新聞と読売新聞の朝刊で書評に取り上げられました。一方で、本書は物語と解説で考える本なので、手を動かして言葉を扱う仕組みを作りたい人は、実装を扱う入門書を別に選ぶ必要があります。2017 年 6 月刊の本なので、取り上げられる機械の例は刊行時点のものです。
人工知能が言葉を扱うという話題に触れて、何ができて何ができないのかを自分の言葉で整理したい人や、中高生に言葉と機械の関係を考える入り口を手渡したい人にとって、物語を追ううちに「分かる」とは何かを具体的な場面で考えられる本書は、手に取りやすい一冊です。序章で著者は、この本が人と機械の知性について考えたり、読者自身の言葉の使い方や理解の仕方を振り返ったりする手がかりになると信じていると書いています。