新 基礎情報学
シンキソジョウホウガク
機械をこえる生命
- 著者:
- 西垣通(ニシガキトオル)
- 出版社:
- NTT 出版
- 出版日:
- 2021年06月18日頃
- ISBN:
- 9784757103993
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
反ホモ・デウスのためにートランス・ヒューマニズムとデータ至上主義の誤謬を証し、ディストピアを回避する方途を理論的に探る、〈基礎情報学〉の決定版。多様な人間 / 生命が息づく未来に向け西垣情報学理論の集大成。
序論 反ホモ・デウスのために
復活したトランス・ヒューマニズムの亡霊
AI をめぐる難題と混乱
二つのパラダイムそしてネオ・サイバネティクス
基礎情報学から見た“人間=機械“複合系”
本書の構成
第 1 部 基礎情報学にいたるアプローチ / 情報と意味創出
第 1 章 ネオ・サイバネティクスの誕生
1・1 情報をめぐる二つのパラダイム
1・2 論理主義とコンピューティング・パラダイム
1・3 コンピュータと情報理論
1・4 サイバネティック・パラダイムの端緒
1・5 多元宇宙の哲学
1・6 二次サイバネティクスと構成主義
第 2 章 ネオ・サイバネティクスの展開
2・1 オートポイエーシス理論
2・2 機能的分化社会理論
2・3 ラディカル構成主義心理学
2・4 システム文学論
第 2 部 基礎情報学の核心 / 生命にもとづく情報学
第 3 章 APS から HACS へ
3・1 情報を定義する
3・2 生命情報 / 社会情報 / 機械情報
3・3 HACS
3・4 情報 / コミュニケーション / メディア
3・5 プロパゲーション
3・6 個人と社会の知識形成
3・7 新たな発展へ
第 4 章 新実在論と生命哲学
4・1 情報学的転回
4・2 新実在論の台頭
4・3 生命論からの考察
4・4 内部観測
第 3 部 人間のための情報技術 / AI という衝撃
第 5 章 AI の論理と誘惑
5・1 AI のもたらす「偽ー情報学的転回」
5・2 トランス・ヒューマニストたちの主張
5・3 ホモ・デウスが到来するとき
5・4 情報圏という罠
5・5 この国の AI アプローチ
第 6 章 データ至上主義からの脱出
6・1 情報学と物質科学の違い
6・2 ホモ・デウスを拒む
6・3 二つのパラダイムの接点
6・4 AI 時代の癒し
6・5 AI のコントロール
6・6 AI 時代の自律性
6・7 次世代の情報教育
あとがき
索引
技書の森解説
「情報とは何か」を、コンピューターの側からではなく生命の側から定義し直そうとする情報学の理論書が『新 基礎情報学』です。著者は西垣通、版元は NTT 出版で、2021 年 6 月に刊行されました。副題は「機械をこえる生命」です。版元は本書を、トランス・ヒューマニズムとデータ至上主義の誤りを示し、ディストピアを避ける道筋を理論的に探る基礎情報学の決定版であり、西垣情報学理論の集大成と紹介しています。プログラミングや情報技術の使い方を教える本ではなく、情報技術の土台にある考え方そのものを問う本です。
序論と 3 部 6 章、ネオ・サイバネティクスから AI 論へ
序論「反ホモ・デウスのために」で問題を立てたあと、本文は 3 部 6 章で進みます。第 Ⅰ 部「基礎情報学にいたるアプローチ / 情報と意味創出」は、第 1 章「ネオ・サイバネティクスの誕生」と第 2 章「ネオ・サイバネティクスの展開」で、論理主義とコンピューティング・パラダイム、コンピューターと情報理論、二次サイバネティクスと構成主義、オートポイエーシス理論、機能的分化社会理論などをたどります。第 Ⅱ 部「基礎情報学の核心 / 生命にもとづく情報学」は、第 3 章で情報の定義、生命情報 / 社会情報 / 機械情報の区別、HACS、プロパゲーションを扱い、第 4 章「新実在論と生命哲学」で新実在論や内部観測へ議論を広げます。第 Ⅲ 部「人間のための情報技術 / AI という衝撃」は、第 5 章「AI の論理と誘惑」と第 6 章「データ至上主義からの脱出」で、トランス・ヒューマニストたちの主張の検討から、AI のコントロールや次世代の情報教育までを論じます。
意味を扱えない情報理論と、生命から考える基礎情報学
シャノンの情報理論は、通信路で送れる記号の量と誤りの扱いを数学的に定めましたが、記号が受け手にとって何を意味するかは意図して扱いの外に置いています。コンピューターが処理するのはこの意味を外した記号であり、そこからの延長で、知能や意味までデータの処理として説明しきれるのかという問いが生まれます。本書が出発点に置くサイバネティクスは、生物と機械に共通する制御と通信の仕組みを探る学問として始まり、観察する者自身をも系の内側に含めて考える二次サイバネティクスへと展開しました。オートポイエーシスは、生命を自分自身の構成要素を作り続ける閉じた系として捉える理論です。目次が生命情報 / 社会情報 / 機械情報という三つの区別を立てていることからも分かるとおり、本書は機械が扱う情報を、生命が意味を生み出す営みの一部として位置づけ直す枠組みを組み立てようとしています。
トランス・ヒューマニズムとデータ至上主義への反論
序論の題にあるホモ・デウスは、ユヴァル・ノア・ハラリの著書『ホモ・デウス』を指す語です。同書は、人間が技術によって神のような存在へ進む可能性や、データの流れに最高の価値を置くデータ至上主義を論じています。人工知能 が人間の判断を置き換えていくという見通しの多くは、膨大なデータから規則を学ぶ機械学習の性能の伸びを根拠にしています。本書の第 Ⅲ 部はこうした議論に正面から向き合う部で、第 6 章には「ホモ・デウスを拒む」という節が置かれ、生命と機械の違いという理論の側から、技術に寄せられる期待を点検します。
情報の意味を考えたい技術者と学生に向く、実務書ではない一冊
本書には、システムの作り方やツールの操作といった実務の手順は出てきません。目次には二次サイバネティクス、機能的分化社会理論、新実在論、生命哲学といった哲学や社会学の語が並び、思想の系譜を追いながら議論が進みます。すぐ業務に使える知識を求める人には向きません。一方で、データや AI を扱う仕事をしながら、情報や意味という言葉の中身を自分で説明できないことに引っかかりを覚えている人、AI と人間の関係を論じる議論の前提を一度掘り下げておきたい人にとって、本書は考えるための足場を与えてくれます。情報学の基礎理論を一冊でまとまった形で読みたい人に勧められる本です。
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