システムの失敗を克服するメタシステムアプローチの表紙

システムの失敗を克服するメタシステムアプローチ(システムノシッパイヲコクフクスルメタシステムアプローチ)

セキュリティ
著者:
中村 隆文(ナカムラ タカフミ)
出版社:
ナカニシヤ出版
出版日:
2022年10月12日頃
ISBN:
9784779516801
在庫:
在庫あり
0
上級者向け
システム障害メタシステムリスク管理システムサイエンス複雑系ICTシステムエンジニアリングリスク評価システム設計失敗分析

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書籍紹介

中村隆文 (ナカムラタカフミ)
京都大学 理学部 物理専攻 卒業 学士 (理学) (1982 年)

INSEAD France Fontainebleau Management International Management 修了 (2002 年)

McGill Canada Montreal Masters in Management 修士課程修了 (2003 年)

東京工業大学 社会理工学研究科 価値システム 博士課程修了 博士 (理学) (2009 年)

現職
大東文化大学 経営学部経営学科 特任教授

主要著作
・ Meta-methodology for Risk Management. (共著 Handbook of Systems Sciences, Springer, 2021.)

・ System of System Failures (編集 Intechopen, 2018.)

・ Method for quantifying risk factors for system failure and its application to ICT (共著 Risk Management, 4 (16) , pp.231-271 , 2015 / 01) 他

所属学会
・ ISSS (International Society for the Systems Sciences)

・一般社団法人 経営情報学会

・特定非営利活動法人 失敗学会

前書き

1 .導 入
1.1 本書の目的

1.2 本書の構成

2 .現状の方法論の調査
2.1 現状の構造化方法論とリスク分析技術の限界

2.2 現状のトラブルシューティング技術の限界

2.3 社会システム科学からのアプローチ

2.4 自己組織化からのアプローチ

2.5 先達からの警句

3 .現状の方法論の欠点を克服する新たな方法論の提案
3.1 System of System Failures (SOSF)

3.1.1 ダブルループ学習と新たな方法論の 3 つの成功要因

3.1.2 System of System Failures (SOSF) の導入

3.2 Failure Factor Structuring Methodology (FFSM)

3.2.1 メンテナンスシステムの概要

3.2.2 FFSM: 失敗から学習する新たな方法論

3.3 System Failure Dynamic Model (SFDM)

3.3.1 ダイナミックモデルを通じてシステムの失敗を理解する

4 .ICT システムの失敗への適用
4.1 ICT システムの失敗へ SOSF を適用するシナリオ

4.2 長時間ダウン問題ヘの FFSM の適用について

4.3 サーバーの騒音問題への SFDM の適用─設計の失敗か設置の失敗か─

5 .考 察
5.1 FFSM の適用結果について

5.2 SFDM の適用結果について

5.3 HAS の視点から SOSF を再考する

6 .対策の全体性を確保するフレームワークの提案とヒューマンエラーへの適用
6.1 背 景

6.1.1 社会技術システムと安全

6.2 システムの安全を実現する現状の方法論

6.2.1 リスク管理と危機管理

6.2.2 静的な視点 (安全と 4 M) と動的な視点 (個人とチーム)

6.2.3 安全はシステムの問題

6.2.4 主要な 2 つの組織理論─ノーマルアクシデント理論と高信頼組織理論─

6.3 ヒューマンエラーフレームワークの提案

6.3.1 危機への一般的な視点

6.3.2 ヒューマンエラーの寄与 (チームのエラーと個人のエラー)

6.3.3 仮 説

6.4 ICT システムへの適用

6.5 ICT システムへの適用結果と考察

7 .結論と将来の研究に向けて
7.1 結 論

7.2 将来の研究に向けて

付録 A システムの失敗の分類
付録 B サンプルインシデントマトリクス

付録 C 属性付きサンプルインシデント

参考文献
索 引

後書き

謝 辞

技書の森解説

障害のたびに再発防止策を積み上げているのに、しばらくすると同じ型の失敗が別の場所で起きる。『システムの失敗を克服するメタシステムアプローチ』 (中村隆文 著、ナカニシヤ出版、 2022 年 10 月刊) は、この繰り返しを個々の障害の問題ではなく「失敗から学習する仕組みそのものの欠陥」として捉え、失敗を扱うシステムを一段上 (メタ) から設計し直す方法論を提案する研究書です。版元掲載の略歴によれば、著者は京都大学理学部卒・東京工業大学で博士 (理学) を取得し、刊行時点で大東文化大学経営学部特任教授。失敗学会などに所属し、英文の編著 System of System Failures (2018 年) を持つ、システム科学に基づく失敗研究の専門家です。

全 7 章の構成、 SOSF ・ FFSM ・ SFDM という 3 つの方法論

目次に沿って構成を追うと、第 1 章の導入に続き、第 2 章で既存の構造化方法論・リスク分析技術・トラブルシューティング技術の限界を調査します。第 3 章が本書の中核で、「ダブルループ学習と新たな方法論の 3 つの成功要因」を掲げたうえで、 System of System Failures (SOSF) 、失敗から学習する新たな方法論と位置づけられた Failure Factor Structuring Methodology (FFSM) 、ダイナミックモデルを通じてシステムの失敗を理解する System Failure Dynamic Model (SFDM) という 3 つの方法論を提案します。第 4 章はこれらを ICT システムの実際の失敗へ適用する章で、長時間ダウン問題や、設計の失敗か設置の失敗かが問われたサーバー騒音問題が事例です。第 5 章の考察を挟み、第 6 章では対策の全体性を確保するフレームワークを提案してヒューマンエラーへ適用し、第 7 章の結論と将来の研究で閉じます。巻末には失敗の分類やサンプルインシデントマトリクスの付録が付きます。

技術背景、個別対処の再発防止はなぜ同じ失敗を許すのか

組織学習論では、既存の前提の枠内で行動だけを修正する学習をシングルループ学習、前提や構造そのものを疑って修正する学習をダブルループ学習と呼び分けます。障害対応の現場でいえば、直接原因を特定して個別対策を足すことの繰り返しは前者にあたり、失敗を生み出す仕組み自体は温存されるため、対策が増えるほど手順が複雑化して形骸化する事態も起こり得ます。本書の目次はこの語彙を第 3 章の冒頭に置いており、既存手法の限界を学習の階層を上げることで乗り越える構成です。また安全研究には、複雑で密に結合したシステムでは事故を構造的に避けにくいとみるノーマルアクシデント理論と、運用の工夫で高い信頼性を保つ組織の実践に学ぶ高信頼組織理論という対照的な系譜があり、第 6 章はこの 2 つの組織理論に触れつつヒューマンエラーの枠組みを提案します。インシデント管理SRE が個々の障害対応と信頼性維持を体系化する実践だとすれば、本書が扱うのはその一段上、失敗から学ぶ仕組み自体をどう設計するかという層です。

研究書という体裁、事例は ICT システムの運用障害

調査、提案、適用、考察、結論と進み参考文献と索引を備える目次構成が示すとおり、体裁は学術的な研究書です。すぐに使えるチェックリストや障害対応手順を期待する実務書ではなく、システム開発プロジェクトの進め方を説くプロジェクトマネジメント書とも違います。適用事例は稼働中の ICT システムに起きる障害であり、抽象的な方法論の議論に付き合う姿勢が求められます。そのぶん、費やす労力に見合う報酬として、個々の手法を超えて使える「失敗を分類し、学習の仕組みを設計するための語彙と枠組み」が手に入ります。

向いている読者、再発防止を仕組みのレベルで立て直したい人へ

向くのは、障害報告書が「担当者の注意不足・確認の徹底」で閉じてしまうことに違和感を覚えている品質・運用・安全の担当者、そして再発防止の枠組みを理論的な裏付けごと設計し直したい人です。失敗学やシステム科学の応用研究に関心のある読者にとっては、日本語で読める適用事例付きの一冊として貴重です。逆に、明日の障害対応へそのまま流用できるテンプレートを求める人には向きません。障害対応の経験が現場の記憶にどう残るかを描いた 障害対応の夜に思い出す、あの本の 1 ページ のような場面で、対応の先にある「学習する仕組み」まで考えたくなったことがあるなら、その問いに正面から答えようとする本書は読む価値があります。

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