UNIX という考え方

ユニックス ト イウ カンガエカタ

その設計思想と哲学

UNIX という考え方の表紙
OS
著者:
マイク・ギャンカーズ / 芳尾桂(ギャンカーズ, マイク / ヨシオ, カツラ)
出版社:
オーム社
出版日:
2001年02月23日頃
ISBN:
9784274064067
在庫:
在庫あり
4.16(79 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
UNIXOSオペレーティングシステムコマンドラインシステムプログラミングリソース管理プロセス管理ファイルシステムシェルプログラミングシステム設計コンピュータアーキテクチャ

なぜ注目されているか

言及数
122位
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書籍紹介

UNIX は『OS』ではない。それは『考え方』である。誕生から 30 年を経て今もなお第一線で使われる古くて新しい OS、UNIX の秘密を解き明かす。

技書の森解説

OS の使い方ではなく、OS を形づくった「考え方」そのものを主題にした本があります。『UNIX という考え方 その設計思想と哲学』 (Mike Gancarz 著、芳尾桂 監訳、オーム社、2001 年 2 月刊) は、UNIX の背後にある哲学を 9 つの「定理」にまとめ、平易な言葉で説く一冊です。原題は The UNIX philosophy で、版元の紹介によれば、技術的詳細には立ち入らず、それまで文章で表されることが少なかった UNIX の考え方を言語化することに紙面を使っています。版元が対象読者に挙げるのは、UNIX 系 OS のユーザとプログラマ、そして UNIX の世界観に興味のある人です。

9 つの定理を軸にした全 9 章の構成

本文はイントロダクションに続く全 9 章で、第 1 章「UNIX の考え方: たくさんの登場人物たち」が簡単なまとめを示した後、第 2 章から第 6 章で 9 つの定理を順に扱います。第 2 章「人類にとっての小さな一歩」が定理 1「スモール・イズ・ビューティフル」と定理 2「一つのプログラムには一つのことをうまくやらせる」、第 3 章「楽しみと実益をかねた早めの試作」が定理 3「できるだけ早く試作を作成する」と「人間による三つのシステム」の議論、第 4 章「移植性の優先順位」が定理 4「効率より移植性」と定理 5「数値データは ASCII フラットファイルに保存する」に Atari 2600 の事例研究、第 5 章「これこそ挺子の効果!」が定理 6 と定理 7 (ソフトウェアの梃子とシェルスクリプト)、第 6 章「対話的プログラムの危険性」が定理 8「過度の対話的インタフェースを避ける」と定理 9「すべてのプログラムをフィルタにする」という対応です。第 7 章「さらなる 10 の小定理」は「沈黙は金」「90 パーセントの解を目指す」「劣るほうが優れている」など 10 の短い考え方を並べ、第 8 章で総括した後、第 9 章「UNIX と他のオペレーティングシステムの考え方」で Atari ホームコンピュータ、MS-DOS、OpenVMS を UNIX と対比します。

小さな部品を組み合わせる設計思想はなぜ効くのか

定理群の核にあるのは、一つのことだけをうまくやる小さなプログラムを書き、それらを シェルスクリプト やパイプでつないで大きな仕事を組み立てるという発想です。入出力をテキストのストリームにそろえておけば、個々のプログラムは相手が何であるかを知らずに連結でき、新しい道具を一つ加えるだけで既存の道具すべてとの組み合わせが増えます。これが定理 6 で言う「梃子」の効果で、書いたコードの量に対して得られる機能が非線形に増える理由です。対話的な画面を持つプログラムは人間には親切でも、他のプログラムから呼び出しにくく組み合わせの連鎖から外れてしまうため、定理 8 と 9 はフィルタとして振る舞う コマンドライン の道具を勧めます。移植性を効率より優先する定理 4 も、ハードウェアの性能向上が最適化の労力を無に帰す一方で、別の機械でそのまま動くコードの寿命は長いという損得勘定に基づいており、ソフトウェア設計 の判断基準として汎用性があります。

2001 年刊の哲学書として読む前提と、向かない人

刊行は 2001 年で、第 9 章の比較対象や事例研究の題材はその時点までの計算機環境を前提にしています。書店向けの紹介文も、誕生から 30 年を経た「古くて新しい OS」として UNIX を位置づけており、歴史的な文脈ごと受け取る読み方が自然です。版元の説明どおり技術的詳細には立ち入らないため、コマンドの使い方やシェルスクリプトの文法、Linux の管理手順を身につけたい人には合いません。そうした実務の習得が目的なら、Linux の技術書の選び方 で整理されている操作系の入門書から入るほうが早道です。逆に、UNIX や Linux をすでに日常的に使っていて、なぜコマンドが小さく分かれているのか、なぜ設定や出力がテキストなのかを一段深く理解したい人には、その疑問に正面から答える本です。

読了後に得られるのは、設計の議論で「一つのことをうまくやらせる」「早く試作する」「フィルタにする」といった判断を、UNIX という実例に裏打ちされた言葉で説明できるようになることです。コマンドラインの道具を自作する人、チームのレビューで分割や責務の線引きを言語化したい人、そして UNIX らしいプログラムを作りたいと考える人にとって、9 つの定理は投じた読書時間に対して長く使える語彙になります。UNIX の世界観に興味を持った時点で、手に取る価値のある一冊です。

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