リーダーの作法

リーダーノサホウ

ささいなことをていねいに

リーダーの作法の表紙
プログラミング
著者:
Michael Lopp / 和智 右桂(マイケル ロップ / ワチ ユウケイ)
出版社:
オライリー・ジャパン
出版日:
2022年06月21日頃
ISBN:
9784873119892
在庫:
在庫あり
3.36(11 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
プログラミングリーダーシップマネジメントチームリーダーエンジニアリングマネージャーソフトウェア開発組織行動コミュニケーションスキルリーダーシップ開発テクニカルリーダーシップ企業文化

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言及数
134位
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出版前出版日061220222023202420252026

書籍紹介

基本的なかつ具体的な振る舞いを繰り返すことで IT 企業で必要なマネジメントスキルを向上させる!
リーダーシップは、複雑なリーダーシップの哲学を実践し人々に説く一部の人に与えられた天職と考えられがちですが、重要なのは基本的な小さな振る舞いであるとし、繰り返し行うことでチーム内に信頼と尊敬を築くことができるとしています。Netscape のマネージャー、Apple のシニアマネージャーやディレクタ、Slack のエグゼクティブと、著者が自らの体験から得たエンジニアリング組織のリーダーに必要な具体的な振る舞いを紹介します。

技書の森解説

初めて部下を持ったエンジニアが最初につまずくのは、壮大なリーダーシップ論ではなく、1on1 で何を聞くか、任せた仕事にどこまで口を出すか、うわさ話にどう向き合うかといった日々の小さな場面です。『リーダーの作法』 (Michael Lopp 著、和智右桂 訳、オライリー・ジャパン発行、オーム社発売、2022 年 6 月刊) は、そうした場面での振る舞いを 30 のエッセイで語る本で、登録書名には副題「ささいなことをていねいに」が付きます。原書は "The Art of Leadership" です。版元は、リーダーシップは一部の人だけに与えられる天職であり複雑で膨大な哲学を実践しなければならないと思われがちだがそうではなく、ささいな行動を日々繰り返すことでお互いを尊敬し信頼し合うチームを作ることができる、という立場をこの本の軸として紹介しています。Netscape でマネージャー、Apple でディレクター、Slack でエグゼクティブを経験した著者が、それぞれの立場のリーダーに必要な振る舞いを書いたもので、IT 企業で必要なマネジメントスキルを、基本的でかつ具体的な振る舞いの繰り返しで高めることを狙っています。

3 幕 30 章の構成、マネージャーからエグゼクティブまで

構成は著者の経歴に沿った 3 幕 30 章です。第 I 幕 Netscape:マネージャーは 1 章から 9 章で、誰からでも学ぶことがあると考える、会議ボケ、難題、様子を見る、場をつかむ、味見をする、虫の知らせ、プロフェッショナルとしての成長をはかる質問表、パフォーマンスに関する質問、ランズおすすめの時間節約術、新任マネージャーのデス・スパイラルと続きます。第 II 幕 Apple:ディレクターは 10 章から 18 章で、青テープリスト、我慢の限界まで任せる、採用するには、陰口 / うわさ話 / 作り話、素敵なほめ言葉、手厳しいことを言う、どんなものだって破綻する、組織図テスト、分散ミーティングの基礎知識を扱います。第 III 幕 Slack:エグゼクティブは 19 章から 30 章で、ゼロから作りたい病、兵士、文化の流れ、アンチフロー、実力主義は後追いの指標、うわさ話の由来、コバヤシマルのマネジメント、情報ネットワーク、貴重な 1 時間、メンターを探せ、ランズ流仕事術、揺るぎない優しさをで締めます。本編の前に本書への推薦の言葉、序文、はじめに、エッセンスが置かれ、後にはエピローグ、訳者あとがき、索引が付きます。幕の区切りがそのままマネージャー、ディレクター、エグゼクティブという役割の段階に対応しているため、自分の立場の幕から読み始めることも、次の段階を先に眺めることもできます。

エンジニアが管理職になると何が変わるのか、その難しさの背景

コードを書く仕事には、コンパイルが通る、テストが通る、レビューが返ってくるという短く明確なフィードバックの回路があります。管理職になるとこの回路が失われ、判断の結果は数週間から数か月遅れて、しかも人の感情や組織の空気という読みにくい形で返ってきます。だからこそ多くの新任マネージャーは、自分が上手くやれているのか分からないまま、目の前の会議と報告に時間を吸い取られていきます。この本の 9 章が新任マネージャーのデス・スパイラルを扱い、管理職に就くことは昇進ではないという節を置いているのは、この移行期の構造をまず認識させるためです。11 章の我慢の限界まで任せるでは託すことと、リーダーを増やすという大切な仕事を語り、26 章の情報ネットワークでは重要度と鮮度、びっくりさせないという観点で、リーダーに情報が届く経路をどう作るかを扱います。27 章の貴重な 1 時間は、忙しさは魅惑的、偽ゾーンという節題が示すとおり、予定で埋まった一週間の中に考える時間を確保する話です。いずれも、抽象的なリーダーシップ論ではなく、来週の自分の予定表と会話の中身を変えるための具体的な振る舞いとして書かれている点が、エンジニア出身の読者に効きます。

エッセイ形式の読みどころと、体系的な教科書を求める人には向かない点

版元が挙げる主題は、1on1 での傾聴、信頼関係の築き方、仕事の任せ方、メンバーのほめ方、チーム内のうわさ話への対応、組織の文化の作り方です。14 章の素敵なほめ言葉と 15 章の手厳しいことを言うが並んでいるように、褒めることと厳しい指摘をすることを一続きのスキルとして扱い、12 章の採用するにはでは採用活動の第一のルールとして 50 % の時間を使うことを掲げます。一方で、形式は 30 のエッセイであり、評価制度の設計手順や組織設計のフレームワークを体系的に並べた教科書ではありません。理論から順に学びたい人、あるいは手順書として使いたい人には物足りなく感じられます。舞台が米国のソフトウェア企業なので、日本の組織にそのまま当てはめにくい場面もあります。書店掲載の書誌 (出版社提供) による刊行当時の著者紹介では、Lopp はシリコンバレーを拠点とするベテランのエンジニアリングリーダーで、Slack、Borland、Netscape、Palantir、Pinterest、Apple などの企業で人材を育てつつ製品開発を行い、ブログ「Rands in Repose」でリーダーシップについて書き、刊行当時は Apple に勤務していたとされています。訳者の和智右桂は、刊行当時は株式会社フルストリームソリューションズ代表取締役社長で、SIer およびエンタテインメント系総合商社で開発プロセスの標準化やアーキテクチャ設計、大規模システム開発のマネジメントに従事してきた人物と紹介されています。

この本が最も効くのは、初めてチームを任されて 1on1 や委任のやり方に手探りの状態にあるエンジニア、複数のマネージャーを束ねる立場に上がって組織図やうわさ話と向き合い始めたディレクター層、そして技術者上がりの経営層として文化と情報の流れを設計しなければならない人です。読んだ翌週の 1on1 で聞く質問が変わり、任せる範囲の線引きが変わるという形で、投じた時間は早く回収できます。チーム開発やマネジメントを扱う本をどの順で読むか迷っているなら、技術リーダー向けの本の選び方 と併せて、自分の立場の幕から手に取ってみてください。

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