Lean と DevOps の科学[Accelerate]
リーン ト デブオプス ノ カガク アクセラレート
テクノロジーの戦略的活用が組織変革を加速する
- 著者:
- ニコール・フォースグレン / ジェズ・ハンブル(フォースグレン, ニコール / ハンブル, ジェズ)
- 出版社:
- インプレス
- 出版日:
- 2018年11月
- ISBN:
- 9784295004905
- シリーズ:
- impress top gear
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
本書は、数年にわたる科学的で厳密な調査研究を基に、開発組織を改善するために必要な仕組みを解説しています。Lean や DevOps といった開発・運用スタイルが、組織文化、リーダーシップ / マネジメントとどう関連しているかを明らかにし、パフォーマンス向上を促すケイパビリティ (組織の様々な機能・能力) を示しました。本書の内容は、パフォーマンス向上の原則を最も信頼のおける形で示しており、IT に関わる方々に限らず、多くの人々にとって意義深い一冊となっています。
技書の森解説
「DevOps への投資は本当に組織の業績に効くのか」。この問いに、逸話や成功譚ではなく統計調査で答えようとしたのが本書です。原題は『Accelerate』。DevOps 研究プログラムを主導した研究者ニコール・フォースグレン、『継続的デリバリー』共著者のジェズ・ハンブル、『The DevOps 逆転だ!』共著者のジーン・キムの 3 人が著し、武舎広幸 / 武舎るみの訳でインプレスから 2018 年 11 月に刊行されました。289 ページで、巻末には参考文献と索引が付いています。
本書の名を広めた 4 つの指標
本書の名を最も広めたのは、ソフトウェアデリバリのパフォーマンスを測る 4 つの指標です。デプロイの頻度、変更のリードタイム (コードのコミットから本番稼働までの所要時間)、変更失敗率、そしてサービス復旧の所要時間 (MTTR とも呼ばれます)。著者らの研究組織 DORA (DevOps Research and Assessment) にちなんで 「DORA の 4 指標」 や「Four Keys」と呼ばれ、開発生産性を語る場面の共通言語として広く参照されており、その事実上の出典が本書です。重要なのは、この 4 つがスピード系 (頻度 / リードタイム) と安定性系 (失敗率 / 復旧時間) の組み合わせだという点で、調査結果は「速さと安定性はトレードオフではなく、パフォーマンスの高い組織は両方を同時に達成している」ことを示しました。
書名の「科学」が指す調査手法
書名の「科学」は誇張ではなく調査手法を指しています。本書は、著者らが State of DevOps Report として実施してきた数年分の大規模アンケート調査を統計的に分析し、どんな技術的 / 組織的ケイパビリティ (組織の機能 / 能力) がソフトウェアデリバリのパフォーマンスを押し上げ、それが組織全体の成果とどう繋がるかを示した研究報告です。版元も「数年にわたる科学的で厳密な調査研究」に基づき、Lean や DevOps という開発 / 運用スタイルが組織文化やリーダーシップ・マネジメントとどう関連しているかを明らかにした本だと紹介しています。継続的デリバリーやテスト自動化といった個々のプラクティスを「良いとされているから」ではなく「成果との統計的な関連が確認されたから」推奨するという立て付けが、経験則ベースの DevOps 本との決定的な違いです。
向いている読者と実務での効用
この本が最も価値を発揮するのは、開発組織の改善を経営層や他部門に説明する立場の人に対してです。エンジニアリングマネージャ、テックリード、開発生産性の計測を任された人、DevOps 推進の予算を確保したい人。読むと、「デプロイの自動化やテストへの投資はビジネス成果に繋がる」という主張を出典付きのエビデンスとして提示できるようになります。Four Keys の計測から始めて、どのケイパビリティに投資するかをデータで議論するという改善の道筋を組織で共有できることが、実務上の一番の効用です。
読む前の注意点と名著群の中の位置づけ
一方で、本書は「何が効くか」のエビデンス集であって「どう作るか」の実装手順書ではありません。CI/CD パイプラインの構築やテスト自動化の具体的な進め方は別の技術書で補う必要があります。調査データは原著刊行 (2018 年) 以前のものなので、それ以降の開発環境の変化は反映されておらず、2018 年時点の研究成果として読む前提も必要です。また、4 指標だけを切り出して目標値のノルマとして課すと指標の改善自体が目的化しがちです。指標はケイパビリティへの投資と組み合わせてこそ機能する、という本書全体の枠組みごと持ち帰るのが正しい使い方です。
DevOps の名著群 の中での位置づけは明確です。物語仕立てで DevOps 変革を追体験するならジーン・キムらの『The DevOps 逆転だ!』、デプロイ自動化の技術実践を学ぶならジェズ・ハンブルらの『継続的デリバリー』、そして施策の効果を裏付けるデータが欲しいなら本書、という分担になります。3 冊のうち統計調査という武器を持つのは本書だけで、組織を動かす説明責任を負う人にとっての費用対効果は群を抜きます。開発チームの「速くて壊れない」を数字で語る必要に迫られたときこそ、この 289 ページが元を取る場面です。
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