デジタルネイチャー生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂

デジタル ネイチャー セイタイケイ オ ナス ハンシンカシタ ケイサンキ ニヨル ワヒ

デジタルネイチャー生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂の表紙
その他
著者:
落合陽一(オチアイ, ヨウイチ)
出版社:
第二次惑星開発委員会
出版日:
2018年06月
ISBN:
9784905325093
在庫:
在庫あり
3.93(41 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
デジタルネイチャー未来技術社会変革パラダイムシフト人文科学哲学ポストヒューマニズムシンギュラリティ経済理論民主主義

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その他
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778位

書籍紹介

デジタルネイチャー、それは落合陽一が提唱する未来像であり彼のマニフェストだ。ポストモダンもシンギュラリティも、この「新しい自然」の一要素にすぎない。否応なく刷新される人間と社会。それは幸福の、経済の、民主政治の再定義をもたらす。新たなるパラダイムはここから始まる。

技書の森解説

『デジタルネイチャー』 (落合陽一 著、PLANETS/第二次惑星開発委員会、2018 年 6 月刊) は、計算機と自然が分かちがたく融け合った世界を「デジタルネイチャー」と名づけ、その到来が人間観や社会の仕組みをどう組み替えるのかを論じた思想書です。副題は「生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂」。書誌の紹介文によると、デジタルネイチャーは著者が提唱する未来像でありマニフェストで、ポストモダンもシンギュラリティもこの「新しい自然」の一要素にすぎないとされ、議論は幸福、経済、民主政治の再定義にまで及びます。プログラミングの手順を学ぶ本ではなく、計算機がもたらす変化を社会と思想の側から考えたい技術者や、情報社会論に関心のある読者に向いた一冊です。

全 6 章と終章の構成、計算機自然の定義から社会像まで

目次は第 1 章から第 6 章と終章で組まれています。第 1 章「デジタルネイチャーとは何か」は、オーディオビジュアルの発明、量子化、デジタル計算機を経て計算機自然へ至る流れを副題に掲げ、第 2 章「人間機械論、ユビキタス、東洋的なもの」で計算機自然と社会の関係へ進みます。第 3 章「オープンソースの倫理と資本主義の精神」は自然化する市場経済を、第 4 章「コンピューテーショナル・ダイバーシティ」はデジタルネイチャー下の市民社会像を扱い、第 5 章「未来価値のアービトラージと二極分化する社会」、第 6 章「全体最適化された世界へ」を経て、終章「思考の立脚点としてのアート、そしてテクノロジー」で締めくくられます。章題の並びからは、技術の定義を出発点に、社会、市場経済、市民社会へと視野を広げていく設計と読めます。CiNii Books の注記によると、本書は PLANETS のメールマガジン Daily PLANETS で 2016 年 8 月から 2017 年 5 月に配信された連載「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」の第 1 回から第 6 回を再構成し、大幅に加筆したもので、巻末には参考文献一覧があります。

計算機が「新しい自然」になるという見方の背景

計算機が机の上の道具から環境そのものへ移っていく、という見方は情報技術の歴史の中で繰り返し語られてきました。センサーと通信網が身の回りに行き渡り、位置や音声が常に計算機へ取り込まれるようになると、人が世界を知覚する経路の多くが計算を経由するようになります。版元が刊行時に公開したまえがきでは、濃霧の山道をカーナビと GPS の情報を頼りに進む体験から、感覚器の不足をテクノロジーで補い、それを身体の一部のように感じる状態が描かれ、人工の ニューラルネットワーク による神経系の構造の外在化という論点も示されています。第 3 章が題に掲げるオープンソースの倫理は、ソースコードを公開して共有する OSS の文化と市場経済の関係を考える手がかりとして、技術者にも身近な入口になるはずです。

思想書として読むための前提と、向かない読者

読むのにプログラミングの知識は要りませんが、計算機科学の語彙と思想史の語彙が同じ文脈で並ぶ文章に付き合う覚悟は要ります。まえがきの公開部分だけでも、ミー散乱やフォトンといった光学の語と、シラーの詩、啓蒙主義以来の自由の概念が続けて語られ、近代に確立された個人や社会、幸福、国家といった概念が問い直されます。自分に合う文体かどうかは、まえがきを先に読んで確かめるのが確実です。また本書は 2018 年刊行時点の技術環境を足場にした未来像であり、特定の技術の使い方や実装の手順を求める人、データに基づく社会分析を求める人には目的が合いません。

一方で、計算機が人間の判断や社会制度に入り込んでいく流れを、技術の側から長い時間軸で考える材料が欲しい人にとって、本書は議論の土台になる語彙をまとめて手に入れられる一冊です。自分が作るサービスやシステムが社会のどの前提を変えつつあるのかを言葉にしたい技術者や企画者なら、全 6 章と終章を通読する時間は十分に回収できます。

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